店子の退去-②退去日をむかえて
(前回からのつづきです)
私が賃貸借している古い戸建て住宅の店子Aさんは交通事故をきっかけに職を失い、家賃支払いも延滞を重ねていました。
私も一応、この事態に至るまでに、店子の退去について法的にどこまで強制的な行動がとれるか調べたりしました。
判例によると家賃支払い延滞が6ヶ月以上続けば、裁判でも強制立ち退きが認められやすくなります。本年5月の時点で家賃延滞は8ヶ月にも及んでいました。
とはいえこちらとしても弁護士に相談し、法的手続きをとってAさんを強制退去させるようなことは、費用面からも精神面からもできれば回避したいと考えていました。Aさんとの面談で、賃貸契約を解除し退去してもらうよう通告しました。
これまで十分な猶予期間をおいてAさんの定職への復帰を待っていたこと、その間でもこちらから他の格安な物件情報を探して提供したりしてきたこと(市営住宅が格安なのですが、これは保証人が必要なところがネックで借りられません←当たり前なんですけどね…)などもお互いで振り返りました。
そしてAさんももはやこれまでと覚悟をきめたことで、退去の合意を取り付けることができました。
せめて退去日はAさんの要望を聞き入れようと思い、当人に聞くと遠慮がちに7月末との返事でした。あと2ヶ月以上もあれば準備が間に合わないということにはならないだろうと了承しました。こちらとしては最後の温情でした。
退去が決まって以降も、水道、電気、郵便などの手続きや所有物の整理を促すよう連絡を何度かいれました。退去に伴い廃棄する物品について、Aさんには処分費用も手段もないので、私が軽トラックを近所の親戚から借りてきて市内の清掃工場にもっていくつもりでした。
7月31日。退去期限日です。朝8時に賃借屋に行ってみるとほとんど片付けは進んでいませんでした。やっぱりな、と思いAさんと共同で所有物の撤去をどんどん進めました。なにせ市の清掃工場は8時半から4時半の間しか営業していません。往復に最低30分かかるためいいとこ5回往復が限度です。チマチマ片付けている余裕はありません。
Aさんが住んでいた家屋内はゴミの山でした。古着屋を開けるほどのたくさんの衣類、車の改造部品や日曜大工道具など趣味品の数々、賞味期限が切れた食品や調味料の山々、以前一緒に住んでいた娘さんの品物などが軽い異臭を放ちながら畳が見えないほどばら撒かれている状態でした。
特に娘さんが愛用していたと思われる薄汚れた人形の数々や使いかけのクレヨンなどの道具類、さらには幼稚園で作ったと思われる「おとうさん、ありがとう」と書かれた絵と飾りなどは、他人の私でも捨てるのにちょっと迷いました。
そうこうしているうちに娘さんのことを思うとだんだんと怒りがこみ上げてきて傍らにいるAさんを心底ブン殴りたくなってきましたが、同時にただただ虚しさばかりも心中に漂ってきました。
結局、以降は無心になって作業に徹しました。
Aさんから聞くに、元奥さんは最近、新しい男ができて一緒に暮らし始めたとのこと。Aさんの娘さんは以前よりも幸せになってほしい...
作業を一日続けて撤去作業は8割方までなんとか終わりました。当初の廃棄予定の品物のうち、清掃工場に搬入する大物はすべて撤去したので、あとは小物を分別して、通常のごみ捨て収集に加えられるようにAさんに作業継続を依頼しました。そういった事情のため、退去日はしかたなく翌日8月1日まで延長することにしました。
(つづく)
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