(続)不動産投資に安直に手を出さないこと
(前回からの続きです)
書店でよくみかける不動産投資本を読んだくらいで安直にアパート経営に乗り出さないようにしましょうと前回述べましたが、今回は広告のケースをとり上げます。
全国紙朝刊の下の方に将来の生活に備えてと称してマンション経営をすすめる広告が不動産業者によってうたれているのを時折見かけます。先週実際にみた広告を具体例にとりあげてみたいと思います。
◆確定・手取り家賃収入 319万円
◆購入価格 1,990万円
◆月々の家賃収入 69,200円
◆月々の支出(提携ローンでご購入の場合) 64,563円
上記は広告内で大文字見出しで書かれている箇所のみです。「駅徒歩6分」など最寄駅へのアクセスなど立地の良さを訴えるコピーもありましたが、そのような部分などに惑わされずに上記の数字、それから公告の隙間と下方に小文字で埋められた但し書きの塊をみて、この物件のオーナーとなることでどれだけの収益が見込めるか考えてみました。
◆確定・手取り家賃収入 319万円
脇に小さく「4年間の総額 総額は4年間変更なし 経過後は更新可」と書かれています。つまり319万円とは実は4年間の合計です。1年間の表面利回りなら319万円÷1,990万円=16%と、大変良好な物件ですが4年間ですから単年でほぼ80万円、表面利回りはわずか4%となります。
さらにはやはり小文字で「公租公課その他必要な費用を控除する前のもの」とも書かれています。つまりはこの80万円からさらに固定資産税(数万円規模)、火災保険料(数万円規模)、所得税(経費控除後の少なくとも10%)、不動産業者に支払う何がしかの事務手数料等が差し引かれるとなれば一体いくら手元に残るのか。
公告では「手取り」と称していますが上述のとおり80万円は全然「手取り」ではありません。
また上記は借り上げシステム利用の場合であり、それゆえに新築当初(ピカピカで物件の価値最大)4年間のみ当初家賃額を保証すると謳われています。「(4年)経過後は更新可」とありますが換言すれば、4年を過ぎれば賃料値下げを契約更新の条件にされるおそれもあります。それにおそらく契約更新の度に手数料をとられるでしょう。
さらには広告の下方にある小文字の注記によると以下のとおりです。
「賃料支払免責期間/1か月」
⇒おそらくこれも契約更新の度と思われます。契約期間を4年とすればオーナーにとっては1か月分未収となれば残り47か月間の賃料を約2%カットしたことになります。
「敷金・礼金・更新料はお支払しません。」
⇒一方で借り上げした不動産業者は入居者からしっかりと徴収し収益の一部にするでしょう。入居者との契約は通常2年ですから礼金1か月+更新料1か月×2回分とすれば、これに上記の免責1か月分を加えて不動産業者には48か月分のうち4か月の分のマージン(8.3%)を得ることになります。これなら家賃保証する資金余力も確保できるというものです。
(つづく)
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