マイカー回顧録その7 シトロエン エグザンティア
自動車テーマとして月一ペースでWATANKO家のマイカーについての思い出を取り上げています。当時の世相やその車から学んだことなどにもふれたいと思います。
故障続きのシトロエンXMから緊急避難的にデミオ(DX)に乗り換えたものの、シトロエンへの慕情は再びつのるばかり。そこへきて資格試験の勉強が終わり解放感の中、ついに再びシトロエンに乗る日がやってきたわけです。
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■あの当時
20世紀も終わる頃、自動車メーカー大手では次世代動力源の開発が進んでいました。欧州勢が冷やかに見る中、トヨタが世界初の量産ハイブリッドカー、プリウスを発売します。当の欧州勢はやれ燃料電池だ、水素だと一足飛びに理想の動力源の実現にむけて熱心でした。(結局出来ませんでしたが。)
日本市場ではミニバンが席巻する一方で、安全規制の強化などによりスポーツカーはほぼ死に絶えます。フォーマルなセダンもどんどん減り、コンパクトカーの流行の萌芽がみられました。
企業としては日産、三菱が苦境に墜ちる中、躍進勢力のひとつが輸入車のプジョーでした。VWのオルタナティブとしてのプジョー306(フェラーリと同じピニンファリーナデザインの最後のプジョーモデル)。さらには当時アウディA4(B5)の向こうを張るデキの良さ、ブレークも光るプジョー406。おっとこれはややフランス車贔屓の解説か。
■プロファイル
上述のプジョーとシャシーを共有する同じくフランス車のシトロエン。ブリキ細工のような2CVで有名な合理性と理想主義のラテンブランドです。
そのシトロエンのモデルで1992年に本国デビューした2L~3LのDセグメント4ドアセダン風5ドアリフトバックがエグザンティアです。
デザインは宇宙船のようなシトロエンXMを少しおとなしくした印象ですが、XM同様ウエッジシェイプが効いたシャープなフォルムです。
全長が4,525mmに対して2,740mmというこれまたXM同様の長いホイールベース(参考:当時のコロナプレミオは全長4,520mmに対してホイールベース2,580mm)
足回りはシトロエンお約束の窒素ガスと油でサスを動かし、客船のように鷹揚でやわやかい乗り足を生み出すハイドラクティブサスペンション。XMよりも電制がすすんだVer.Ⅱ仕様になっていました。
そしてどんな姿勢で座っても体が疲れない、凝らない、椅子の文化が生み出した見かけは地味だが素晴らしいシート。当時の国産車のシートはこれに比べればなべて討死です。ただしエグザンティアのそれは残念ながらXMに比べて座面が薄く、やや底付き感もあったのもまた事実。
結局、XMと同じになってしまいますが、ロングホイールベース、ハイドラクティブサスペンション、出来の良いシートの3つの神器によって疲れ知らずの快適移動空間が実現されたモデルでした。
参照サイトはこちらです。
■インプレッション
フランス車はエンジンやトランスミッションについてはあまり語るべきところはありません。ただ黙々と仕事をするだけ。そこにスムーズネスや官能性はありません。
でもそのかわりにエンジンや駆動系のことなど忘れてしまうくらいシャシーとパッケージが優れていました。シャシーについては上述のとおりですが、パッケージ、特に後部座席について室内寸法の縦横比のバランスが絶妙であり、寸法以上にとても広く感じます。またFFの美点を十分に活かして後部座席の足元もゆったり設計でした。
当時の国産車セダンですとLセグメントを除けば後部座席は窮屈感があり、足元も広くありません。乗車すると前席に比べて後席はまるで穴倉に入り込むような印象です。
また一方でミニバン等であれば後席は確かに広いですが、今度は相対的に運転席が業務用がごとく窮屈であり、さらにはパッケージがドライバーズカーとしての体を成していません。(WATANKOは自身が運転するため、このような非ドライバーズカーにはカネを払う気はありません。)
ところが輸入車、とくにパッケージが秀逸なフランス車は右の4つの座席のうちどこに座っても快適な移動ができるモデルがたくさんあります。エクザンティアもそのひとつでした。
■カーライフ
このエグザンティアは2000年秋、本国でモデルチェンジされC5というモデルになりましたが、WATANKOはそのデザインに落胆し、ウェッジシェイプデザインのシトロエンを手に入れるにはもう日本で売られている在庫車を手に入れるしかないと決め、購入に踏み切りました。
実際に正規ディーラー(当時:西武自動車販売)では全国でセダンの新車在庫がのこり4台という状況で、ブルーモーリシャル(濃紺)の2Lセダンを手に入れることができました。
妻はシトロエンというとトラブル続きのXMを思い出し、購入には当初かなりの抵抗を見せましたが、WATANKOのフランス車好き、シトロエン好きの情熱に負けて購入を許してくれました。
我が家に来たエグザンティアは見事我々の期待にこたえてくれてほとんどトラブルフリーでした。モデル末期でしたのでトラブルに対する対策がしっかりと施されていたのでしょう。
トラブルがないとなればこれ幸いと、再びフランス車を手に入れたWATANKOは妻と幼い長男をつれてあちらこちらドライブにいきまくりました。購入後最初の2年間は週末のみの利用にもかかわらず15,000kn/年のペースで出動です。なにせ長距離ドライブでも疲れ知らずの車でしたので北は岩手県から西は兵庫県まで出向きまくりました。
所有して5年目をすぎたところでWATANKOが海外赴任となったため、エグザンティアはバッテリー上がりを防ぐためケーブルをはずして自宅車庫に保管することにして、業務出張で帰国時の折に久しぶりに乗ってコンディションを確認していました。
■あとがきにかえて
結局、エグザンティアは海外赴任から帰ってきたあと手放すことになりました。保有期間6年と5カ月、走行距離65,000kmはWATANKOが購入したマイカーとしては現時点で最長記録です。長男が小学生の半ばまで、次男が生まれてから幼児の頃までの時代を過ごした我が家としては後にも先にも最高のファミリーカーでした。
ではなぜ手放してしまったのか。このままエグザンティアをすっと所有しつづけていくことに何の不満もありませんでしたが、車を運転できる年月(せいぜいあとわずか30年)に限りがある以上、車好きのWATANKOとしてはもっといろいろな車の世界をのぞき、体験したいという想いが一方で捨てがたく、次のステージに進みたい気持ちが買い替えを決心させてしまいました。
今思えばエグザンティアはもう少し所有を続け、もっとトンがったドライバーズカーを買い増しするアイデアもあったかと少し後悔しています。
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