良い車の条件は「タイヤがボディのなるべく四隅にあること」
車に詳しい人もそうでない人もマイカーを買うときには、様々な制約がある中でできるだけ良い車選びをしたいと考えることでしょう。なにせ家の次に高く保険、教育費と並んでかなりの出費を必要とする買い物ですからね。そういった中、良い車の条件とは何か?完璧とはいかないまでもいくつかの指針を持ってみることは有用です。
車の構成要件としてデザインについては機能・設計と主観・感性の部分が入り混じり論議は単純ではありません。一方で物理的側面、移動体的観点からみれば良い車の要件は客観的事実に拠る部分が大半なので、比較的明確にあげることができます。
今回WATANKOが物理的側面、移動体的観点から掲げる良い車の条件は、「タイヤがボディのなるべく四隅にあること」です。
どんな高性能車であっても路面と接しているのはタイヤ4本。はがき4枚分の接地面積です。車の運動性能を良好に保つためには、その4つのタイヤを四隅とした空間(以下、四隅空間)の中にエンジンや機器類、人が座る空間、荷室を納めるべきなのです。
例えばキャビンの設計が甘く、四隅空間内に人が座るスぺースを冗長にとりすぎると、四隅空間を大幅にはみ出してエンジンや荷物を納めるトランクなどの重量物ないしスペースを配置することになります。
四隅空間内に重量物を収めた車に対して、4つのタイヤの地面の踏ん張り点を結んだ四隅空間を超えてこのような重量物が配置されている車は運動性能の面で劣後します。
このような前輪軸を超えたフロントオーバーハングが長い車、後輪軸を超えたリアオーバーハングが長い車はどうなるか。四隅空間を超えて前後に重い分銅がついているようなものですから以下のとおりとなります。
(1)リアオーバーハングが長いとリアが重くなり加速時に前輪軸が浮いてグリップがかからなくなり加速性能が悪くなる。つまりは燃費の悪化にもつながる。
(2)フロントオーバーハングが長いと前輪軸にかかる重量が増すため、制動時に前輪にかかるブレーキ負担が大きくなり制動距離が長くなる。つまりは衝突回避性能が劣後する。
(3)フロントオーバーハングが長いとフロントヘビーになりアンダーステアが強くなる。曲がりにくい車になる。
(4)フロント・リアのオーバーハングが多いことでピッチングが増えて乗り心地が悪化する。またピッチングをおさえようとサスペンションを固めに設定すれば、それもまた乗り心地が悪化する要因となる。
など等
もしこれらの現象を体感したければマイカーのトランクの後端にバーベルでも沢山積んだり、フロントにゴツイ鋳鉄製のカンガルーバーも取り付ければ可能となります。
さて車選びにおいては四隅空間にエンジン、キャビン、トランクがどのように収められているか、前後のオーバーハングがどれだけ詰められているか。そこに着目する必要があります。
具体的には前後オーバーハングの長さそのものをチェックすること。ホイールベース÷全長によるホイールベース比率や、ホイールベースに占める室内寸法の割合<通称『アンコ比率』©WATANKO>を競合車種と比較してみることです。またオーバーハングの長短はそこに車重が絡んでくるとより重要になります。
そうしてそのモデルの設計パッケージの質の程度をある程度つかむことが必要です。
ちなみに「タイヤがボディのなるべく四隅にある車」の究極はレーシングカーであります。運動性能を極限まで突き詰めて速く走るためだけに開発された類の車ですが、物理的側面、移動体的観点からみれば日常の乗用車にとってもレーシングカー同様にタイヤがボディの四隅にあることは大変重要です。
(おまけ)
車通の方からみれば「FFなら前車軸をこえてエンジンをしっかりとオーバーハング搭載することはトラクションのかかりや走行安定性の観点からみて是であろう」というご指摘もあるかもしれません。ごもっともです。が、ここでは初心者向けとしてごく基本的な話を述べており、記事の尺の関係からかような専門的なレベルにはあえて踏み込んでいませんのでご了承願います。
うーん、でもここまで書くと今度はホイールベースの話を書きたくなってくるなあ。次回(何時?)はホイールベースを取り上げたいと思います。
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