ある若手の退職
寒い冬の朝、出勤途上に勤務先近くの人混みの中で、前の部署で部下だったK君にとても良く似た後ろ姿の若者を見かけて条件反射で思わず声を掛けそうになってしまいました。
しかしながらその若者はK君ではありませんでした。なぜなら彼は昨秋に退職したのだからです。
WATANKOがかつて前の部署に異動してきて半年後、K君が同じ部署にやってきました。それ以降、部署の主業務である業績予想や経営計画の策定とりまとめなどの仕事を二人で担当してきました。
朝令暮改がごとき上長からの変更・追加指示、現場を混乱させる土壇場でのマネジメントからの依頼、時には説教をくらうことしばしばの関係部との調整など等。過去のリストラの影響で人員構成がワイングラス型になってしまった職場で中堅・若手にしわ寄せがきている中、WATANKOとK君はともにその都度、役割を分担しながら仕事を乗り切ってきました。
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数年経てWATANKOが現在の部署に異動してしまい、我々の仕事は私より年上の新しい部長級の先輩とK君の2人で担当することになりました。
私としてはK君の次のキャリアを考えれば、もう管理部門での計数を扱う仕事は十分であり、次の部署へ異動させて本人が志向する分野へのキャリアを積ませたかったです。
しかし我々が所属していた部署では中堅・若手の人手が足りないことを主因にK君の異動はなかなか実現しませんでした。職場の幹部職達は自部署の目先のアウトプットのパフォーマンスを優先して、部下のマンパワーをそのまま使い倒し続けました。
やがてK君は、勤務先でのキャリア形成に疑義を抱くようになり、ひいては働きがいをだんだんと見出せなくなり、ストレスと体調の悪化を訴えるようになりました。
WATANKOは自分が異動した後も彼の相談に乗っており、彼の上司である部長級の先輩にK君の異動を何度も直訴しました。
しかしK君の異動はかなわず、彼は所属先の部署に不信感を強めたあげく、とうとう昨秋退職してしまいました。
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WATANKOの勤務先はかつて倒産寸前の経営危機に直面し、社員の大半は辞めるという事態になりました。WATANKOも月額給与10%カット、やがては子会社に出向となり、もはやこれまでかと覚悟したこともあります。
そのような時期に一緒に仕事をしてきた多くの仲間達が辞めていきました。特に辛かったのは当時、営業に所属していたWATANKOにとっての同僚や面倒をみてきた若手後輩が勤務先に見切りをつけてどんどん辞めていったことです。
以上の経験を経て、勤務先が無事復活してまずまずの業績をあげている今、WATANKOは少なくとも自分の周りでは若手をもうこれ以上一人も辞めさせまいと心がけてきました。
そのようなメンタリティでいたWATANKOにとってK君の退職は少なからずのショックであり、なんだか私と彼でこなしてきたかつての仕事まで否定されたようにすら感じました。
K君の退職後、彼からの連絡はぱったり途絶えました。無理もないかもしれません。冒頭のとおり、なんとも言えない寂寥感が漂う作秋から冬の日々でした。
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やがて数カ月がたち、年が明けてWATANKOの失望感も癒えかけたころ、なんとK君からのメールを受けとりました。
そのメールでK君は我々の勤務先がシンガポールにもつ現地法人に現地採用されて働き始めることになったことを知らせてくれました。それは退職した場合の次のステップとしてWATANKOが彼と事前に話し会っていたプランのひとつでした。シンガポールの現地法人は日本の勤務先と同じ業種ですので仕事に対する理解は十分ですし、日本で働いていた時にやり取りもありますので知り合いもいます。K君であればきっと定着し、活躍できるでしょう。
ただしその現地法人にてK君がどれだけ長くキャリアを積んでいくかは今のところ未知数です。おそらく彼が力をつけたなら廻りのシンガポーリアンがそうしているように、もっと良い勤務先を探してジョブ・ホッピングするでしょう。
それでも良いかもしれません。ともかく先ずはK君が新しい仕事のフィールドに再び立ち始めたこと、それも従前の勤務先と同じグループでまた一緒に仕事をする機会がもてそうであることにちょっと嬉しさを感じつつ、WATANKOは日本の勤務先から彼にメールの返信を出しました。
「今年中にそちらに出張にいく用事をこさえるから待っていてくれ。」
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