(続)土地のかたち、境界のかたち
【6月21日終値ベース運用状況速報】
■投資元本+待機資金総額
55,315千円
■評価損益
(分配金・確定損益・税還付込み)
13,901千円
■損益率
25.1%
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(前回からの続きです)
前回、土地の境界線の根拠となる資料として明治時代から作成された公図が依然として一定の効力を発揮しており、しかしながらその公図は現代の土地境界の確認のために用いるにはあまりにラフであることを指摘しました。
土地の境界確認とはその土地を売買するとか、何がしかの土木・建築工事を施すなどという機会のときにおこりうるものです。大抵は現況に従った境界確認であれば隣接土地所有者との間で波風はあまり立ちません。関係する土地の測量図面にハンコをついてもらうことにもあまり支障はなさそうでしょう。
しかしながら、その際に公図と現況を一致させようとするために関係する(複数の)土地に対して地積更生(登記記録に誤って記録されている地積を、正しい地積に直す登記)など法的な変更手続きを行うとすると、時には難しい局面になることもあります。例えば次のようなケースです。
1.公図上の境界が現況よりも有利な場合、これを主張してくる。
例えば隣接土地の公図上の記録面積の方が現況の測量面積よりも広い場合、隣接土地所有者は境界確認の時には現況であれば構わないという空気でしたが、登記記録を直すとなれば現況と違って今度は公図上の記録に根拠ありとこだわりをはじめ、法的な手続きに応じることに難色をしめすケースがあります。登記記録を公図上の記録から現況ベースに訂正すると、隣接土地の登記上の面積を減らすことになるためです。
2.公図と現況を一致させるために周辺地域一帯の変更手続きが必要になる。
公図と現況が合致しない状況下で自分の土地についてこれを一致させようとすると、隣接するFさん、さらにはFさんに隣接するGさんの土地まで一致させることが必要になり、やがては地域一帯の公図と現況の一致が必要という個人レベルではどうしようもない展開に陥ってしまいます。これは公図と現況を一致させる境界ポイントがほとんどみられない場合などにおこりえます。公図上の各土地が現況ではどこにあたるのか確定的な境界証拠がないため、すべての土地の所在が曖昧になってしまっているわけです。
さて、こういった件で隣地土地所有者との間で一度ギクシャクすると、相手は不信感を持ち、こちらの協力依頼に対して途端に慎重になるおそれがあります。そもそも彼らには積極的に協力するインセンティブがほとんどありません。これがエスカレートしてくれば、「協力しないと困るのはそちらであろう。ならば今回の法的手続きの結果、こちらに有利な結果が伴うよう便宜してほしい」となります。これではこちらが法的手続きの結果、家を建てることができる、不動産事業に活用できる、土地売買できるといった便益を得るわけなのですが、それを人質にとられた格好です。
このような展開に陥らないようにするためには、不動産業者や土地家屋調査士などの専門家と事前に入念な調査とシナリオ立てをすることです。中には金銭支払いも含めた譲歩案も用意する必要もあるかもしれません。相手の出方や状況によっては時効取得を利用するといったハードランディングも考えておくとことも必要かもしれません。
さてWATANKOに自宅新築についてですが、具体的には現況上ではWATANKO家の敷地内に、公図上では隣地所有者の土地が一部食い込んでいる可能性が大きいことが判明しました。(可能性が大きいとっても土地形状と配列から推察する範囲での判断ですが。)
時効取得をもとに係争すれば勝つ見込みがあり、相手にもそれをちらつかせて協議した結果、最終的には公図上の記録ベースでの土地売買を行って決着をつけました。金額は相手が当初提示した金額の1/5までネゴし、測量も伴なわず諸経費もかけませんでした。実質的には土地の名義変更の謝礼を支払った格好です。
公図と現況。この2つが異なる時に、それを合致させるようとすると大変な苦労が伴う、またはどうしても難しいという現実が立ちはだかる場合があります。
皆さんの中で田舎に土地をお持ちの方、あるいはこれから手に入れようとする方は当該土地ならびに周辺の土地について公図と現況の差異をしっかりと事前確認をしておくことをお勧め致します。
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