通算損益の通知制度、いまからですか
日経新聞の本日の記事によると2014年12月から投信を保有する個人に購入時からの元本の増減と分配金を合わせた損益を通知する制度が始まるそうです。
WATANKOからみれば今更感タップリな印象はあるものの、投信保有者一人一人に対して当人の本当の儲け具合を個別に知らせる通知を送るとはなんとも手厚いサービスを始めるものだと感心しました。(このようなサービスを追加導入することが、投信の信託報酬の高止まり現象についての業界的な言い訳に使われなければよいという懸念もありますが。)
さて毎月分配型投信の分配金の原資には運用益だけでなく、元本が含まれる時もあります。その含まれ具合も特に規制が無く、投信の中には分配金の原資の多くが元本によって占められるものもあることでしょう。
そのような場合、分配金はほとんど元本の取り崩しにしか過ぎず、その元本分は課税はされませんが、運用期間中に信託報酬はとられていますから実質目減りしているわけです。
また毎月分配型投信には利確効果があります、換言すればリスクコントロールだと唱えてこれを支持する個人投資家もいます。それを信仰するのは各人次第ですが、リスクコントロールは金融商品の購入金額の多寡で行うのがシンプルかつ確実です。リスクコントロールにまでいちいち手数料を払っていては手元のリターンは悪くなるばかりです。事実、毎月分配型投信のコストは高いのですが。
話題はこの記事に戻りますが、よく読むと何だか通算損益を通知すれば、毎月分配型投信についての誤解が減るかのように思えますが実態はどうなるでしょうか。わかっている人には今更不要でしょう。一方で果たして分配金の多い・少ないに着目して毎月分配型投信を購入した個人が毎月通帳に記帳された分配金の明細よりも、(実ははるかに重要な)損益通算の通知に注目してくれるのか未知数です。
そういえば毎月分配型投信に関連するトピックスですが、投資信託の定期売却サービスがスタートしてから1年以上経ちました。しかしこれが毎月分配型投信を駆逐したというニュースはいまだ聞いていません。まだまだ利用できる金融機関や商品が限定されているのでしょうが、それにしても話題にあがってきませんね。利用者数の推移など実態が知りたいところです。
関連記事 投資信託定期売却サービスは毎月分配型投信を駆逐するか
さて損益通算の通知について現段階では未知数と述べましたが、通算損益や現状の分配金の成り立ちを正しく効果的に伝えるためには、買った後におくる通知だけでなく、少なくとも毎月分配型投信の宣伝パンフレットなどで分配金をうたう記載についても是非見直すべきです。例えば「この毎月分配型投信の過去12ヶ月間の分配金実績は1万口あたり月額20円です。ただしこのうち16円は元本払い戻しであり、利益分は4円です。」とこれくらい明確に、ついでに20フォント以上の大文字で記してほしいです。
(あとがきにかえて)
今回の動向が全く無駄とまでは言い切るつもりはありませんが、やはり根本的な解決は分配金の原資を運用資産からの収益に規制することではないでしょうか。そのうえで毎月の元本取り崩しサービスを追加サービスとして設定します。例えば「毎月1万口あたり100円を解約設定します。あとはそれに運用収益を上乗せして払い出してください」とするわけです。どのお金がどこから出てくるのか。それくらいはしっかりと理解した方がよいでしょう。
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コメント
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WATANKOさんこんにちわ。
いつも楽しく拝見しております。
個人的にですが
「分配金は利益の中からのみ支払われる」
「分配金は出さない」
「分配金は元本を取り崩してでも支払う」
という名言を目論見書に記載してもらいたいなぁと思うのですが。
顧客ニーズは様々ですので、その方が親切だと思います。
投稿: アフロ | 2013年6月24日 (月) 12時48分
アフロさん
コメントありがとうございます。
金融機関は法令や当局の指導によって書かねばならないことには必ず明記しますが、そのように規定されていないことに対しては全くスルーではないでしょうか。あるいはリップサービスを行ってあとでドツボにはまならないように、失点回避の意識が徹底しているのではないでしょうか。
投稿: WATANKO | 2013年6月25日 (火) 00時35分