レガシィよ、10年後も日本で販売していますか
スバルの看板モデルであるレガシィがFMCしました。
ここ1~2年くらいのスバルの商品展開はとても好調であり、インプレッサ、XV(とそのハイブリッド)、レヴォーグ、WRXときて、大トリにトップレンジモデルのレガシィがFMCです。
WATANKOは別にスバリストでもレガシィ愛好家でもないのですが、ひとりの日本人ユーザーの立場からみれば、日本市場に今回投入される新型レガシィの内容をみて「ああ、レガシィはもう販売の軸足が完全に北米に移行したのだな。」と感じざるをえませんでした。
世界の自動市場規模を主要な順に言えば中国、北米、欧州といった各々10百万台~20百万台のところであります。これに対して日本は4~5百万台ですから、各主要市場それぞれのおよそ1/3~1/5といった規模です。
とくにこのなかで歴史的にみて日本車メーカーはざっくりいえば国内の生産台数の半分を北米に輸出してきました。したがって日本車メーカーにとって北米は長らく他地域と比べて抜きんでて重要な市場でした。そのためモデル開発において北米市場からの要求にはとても抗しがたいものがあるわけです。
その北米市場からの要求は、わかりやくすえば「もっとボディを大きく、もっとパワフルなエンジンを積んでほしい。でないとデトロイトのビッグ3(今やビッグ2+1?)のモデルに見劣りする。」というものでした。立派にみえてググンと加速する。ステーキやファストフードに代表される誰にでもわかりやすい美味さ(バリュー)を欲したわけです。
日本車メーカーは自社モデルのFMCの度に頭を悩まします。北米市場の声に応え続けることは、ともすると日本市場の嗜好に合わない方向になってしまうことがしばしばあるからです。
▼日本の道路・駐車事情に合わない大き過ぎるボディサイズ。
▼抑揚が効きすぎるベロ~ンとした、またあるいはウエッジが効ききすぎた(一本間違えると単調な)デザイン
▼細部の作り込みにコストを廻さない内外装のあつらえ
▼無用なパワーと燃費の悪化を伴うエンジンの排気量アップとマルチシリンダー(6気筒以上)搭載。
一方で日本市場の規模が1990年をピークに下降の一途をたどる中、日本車メーカーは自社モデルの海外市場との兼ね合いにおいて以下の方向性をさぐりつつ、FMCを繰り返してきました。
①日本市場重視を変えず。
②両方の市場に受け入れられる共通グローバルモデルをつくる。
③日本市場と北米市場をそれぞれの嗜好にあわせて作り分けする。
④北米市場重視にシフトする。
日本市場の将来動向を見据えれば①は取り難く、次に開発と収益面で理想的ともいえる②を目指しますが、そもそも2つの市場の嗜好が乖離してきているからこそ今回のような問題が生じているのであり、限界が見えます。そこで③となりますが開発・収益面では負担が大きいことはいうまでもありません。そうこうしているうちに日本市場の収縮に伴い相対的にその地位は低下し、日本車メーカーといえども④を志向する空気が徐々に強まってきました。とりわけセダンモデルは市場が縮む日本の中にあってさらに販売台数が減少していているため、尚更のこと④にシフトしていったわけです。
これまでの典型例としてはトヨタ・カムリやホンダ・アコードがあるでしょう。日産のスカイラインも同様でしょう。
これらは過去に日本と北米にて同じモデルを販売していましたが、やがてこれに限界をおぼえ今度は各市場での作り分けにチャンレジします。やがて日本市場での販売台数の減少に伴い、今や同市場向けのモデル開発投資は制限され、北米市場のモデルの一部を廻す有様となりました。勿論ながら一部仕様の変更やスキンチェンジくらいは施しているケースが多いですが、搭載エンジンや基本的なグレードの絞り込みが行われます。
主に昔からカムリやアコードを乗り継いできた年配客向けに「一応昔とかわらず同じモデルは取り揃えてございます。」という姿勢です。
こうしてセダンモデルは細々と日本市場でも売られ続けていますが、その存在感は低下の一途です。街中でずんぐりしたBセグハッチバックやミニバンをみて即座にフィットやステップワゴンと判別できますが、貴方は現行アコードを瞬時に見分けることができますでしょうか。
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さて前置きが長くなりました(というか今回は前置き話が内容がメイン?)が新型レガシィをみてみます。
エンジンは2.5リッター1本。グレードも単一です。またレガシィといえばワゴンモデルでしたが既報のとおり新型からはセダンのみです。(どうしてもワゴンボディが欲しい方はアウトバックをどうぞというわけです。)北米にてもっと売るべく全長も全福も先代モデルよりも拡大します。ボディデザインについては先々代から先代にFMCしたときに大分大味なデザインになりましたが、今回の新型も同様の傾向です。
かつて同じクラスの他社モデルが90年代に入り軒並み3ナンバーボディを採用する中、レガシィは11年前まで5ナンバーボディをキープしました。エンジンバリエーションも4種類から5種類と豊富。(初期型は1.8リッターもありました。)内装デザインはオーソドックスすぎて垢抜けないものでしたが、万人に受け入れられやすいものでした。
こうしてレガシィは、新車を開発するリソースが大手よりも限られている中堅の日本車メーカーのスバルが、これ1本で食っていくといわんばかりの気概をもったモデルでした。いたずらにボディを拡大させない日本市場を見据えたサイズと、幅広い予算に応じて購入してもらえるようなバリエーション展開。アウトドアユースもスポーツドライビングも、それ向きなグレードがすべてレガシィには揃っていますというものでした。
それに対して今回の新型は北米で展開するモデル構成の一部を日本にも廻しますといわんばかりの内容です。
日本市場におけるスバルの量販車種のメインの座はワゴンはレヴォーグ、スポーツモデルはWRXにその役割を引き渡しました。もっと安価でプレーンなセダンをお好みの方にはインプレッサがあてがわれるでしょう。こうしてかつてレガシィが幅広く応えてきた顧客層は他のモデルに受け継がれていきます。残るレガシィの役割は車格上、スバルの旗艦モデルとしての役割でしょうか。
かつて若い家族のレジャーやドライブにイキイキと使われてきたモデルが、今やもっぱら年配顧客によってしずしずとドライブされるモデルに変容してしまう。トヨタをはじめとする多くの日本車メーカーのセダンがたどりつつある道を、レガシィもまた同様にたどるのでしょうか。
レガシィについては車種構成を一気に絞り込んでしまったことが顧客層の矮小化、販売台数の減少を引き起こさないか心配されるところです。販売台数が減少すれば将来のFMCにおいて、日本市場向けの開発投資はさらに縮小され、北米モデルをそのままもってくるようになるでしょう。その北米モデルは日本市場にマッチせず、販売台数はさらに減少の一途をたどります。
このような悪循環が起きる一方で、残酷ながら10年もたてばレヴォーグやインプレッサが十分な台数を販売するようになり、メーカー内部でのレガシィの存在価値はますます低下します。そして日本での販売終了がひっそりとアナウンスされます。
そのような日がくるのかどうか、このブログが今後10年間つづくかどうかわかりませんがフォローしてみたいと思います。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
元々、スバルにはアルシオーネSVXというモデルがありました・・。
http://www.carsensor.net/catalog/subaru/alcyone_svx/F001/M001G001/
ところがこの超カッコいい(・・と私は思う)モデルは普及せず、いつの間にかその生涯を閉じました。
もしかしたら、この後追いの可能性もありますが、ビック・セダンにもニーズはあると思われます。
アテンザの大成功(自分は買いませんが・・)、レクサス・クラウン・スカイラインといったモデルよりも遥かに安い価格設定(馬力が低く、ノンハイブリッドのNAモデルですが)。
そして私が最も欲しかったアキュラTLの非日本化は、一部のマニアからはそっぽを向かれた(ホンダの儲け主義も大概にせい・・と)※株主の私には辛い!
このモデルが不評に終われば中古市場でも安く買える(と思う)し、成功して流通が増えてもこれまた良質のモデルが多くなる。
私の相場観から言わせてもらえば、この価格設定は安い(できればアイサイトを省いてさらなるベーシックモデルを希望)。
スバルが嫌い(ダサい?)だった私にもピンと来るモデルなので、黒塗りヤンキーが続出しそうなのは幻想でしょうか?
投稿: 預金王 | 2014年10月26日 (日) 17時22分
預金王さん
コメントありがとうございます。
アルシオーネといったら、コイツでしょう。ほぼトンデモ車みたいですが。
http://www.carsensor.net/catalog/subaru/alcyone/
それは冗談としてさておき、SVX覚えていますよ。すばらしいスタイルに中味が伴わなかったですが、今でもコアなファンがいるのでは?
90年代初頭はこのほかに日産GT-R、ホンダNSX、三菱GTO、マツダ(アンフィニ)RX-7、トヨタはやや遅れて2代目スープラと日本車メーカーがこぞってフラッグシップ・スポーツ/スペシャリティカーを揃えていた極上の時代でした...。懐かしいです。
投稿: WATANKO | 2014年10月26日 (日) 22時48分
日本の自動車メーカーがグローバルモデルばかり開発し往年の日本人向けモデルがほとんど消滅したのは、時代の流れとはいえ寂しいです。
そんな中、トヨタがカローラに注ぐエネルギーには敬服します。
最近カローラハイブリッドを試乗しましたが、地味なモデルながら
作りこみの完璧さに驚きました。
日産サニーも三菱ランサーもマツダファミリアも消滅した今でも、
トヨタカローラはお金をかけて、いいものを作っています。
スポーツカー好きのわたくしでさえ、カローラハイブリッドを
買おうと一瞬思ってしまいました。
投稿: 工員 | 2014年11月 8日 (土) 13時37分
工員さん
コメントありがとうございます。
カローラとて主要なユーザーの平均年齢は上がっていくため今後先細りしないか心配です。(すでに起きているか?)バリエーションとしてフィールダーをもっとスポーティにして売り出して活路を開くか。もっともトヨタもそんなことはわかっていて、キムタクを宣伝に起用していますがなかなか難しいですね。
投稿: WATANKO | 2014年11月 8日 (土) 15時27分
新型レガシィ・・。
やはりかなり大きさが目立ちます。
何気に前の最終モデルの評判がいいみたいで。
http://review.kakaku.com/review/K0000287218/GradeID=22460/#tab
http://www.subaru.jp/legacy/25ieyesightbsport/index2.html
GRX120が壊れなければ、買うことはないでしょうけど(興味あり!)
投稿: 預金王 | 2014年11月24日 (月) 20時29分
預金王さん
コメントありがとうございます。
先代レガシィへの興味アリアリ、了解しました。
X年後、程度の良い中古にGOですね。
しかし適度なサイズのFRセダン(できれば6気筒)がもう少し増えてほしいですね。日産あたりもスカイラインをダウンサイジングしたNEWモデルなんかを出してほしいです。ズバリ!車名はラングレー復活、あるいはスカイライン・スピリット!(ダサッ)
投稿: WATANKO | 2014年11月24日 (月) 22時30分