マイカー保有と代替手段を比べる時には前提条件をすり替えないでほしい
(セダン1台あればたいていのファミリーユースに合います。)
最近、相互リンクさせてもらいましたよよよさんの『新・低収入男「よよよ」が30歳でセミリタイアを目指すブログ』の記事「軽自動車でも生涯2000万円かかる」における引用記事 あるじゃん(All About マネー)車にかかる費用は生涯で約4000万円!をみてツッコミをいれたくなりました。
****以下、引用****
皆さんはどんな車に乗っていますか? 車種や年式、状態、使い方などによって、車を有するのにかかる費用もさまざまですね。共通して必要な項目と年間にかかる金額として、私の妻の車を例に計算してみました(以下、すべて1年当たりの費用に換算)。
●ガソリン代:18万7500円
・車 日産キューブ(2010年式)
・平均燃費 約12キロ/1リットル
・1リットルのガソリン代 約150円(山口県内 2014年11月時点の価格)
・年間走行距離 約1万5000キロ
→1万5000キロ÷12キロ/リットル×150円/リットル=18万7500円
●整備費用など:9万6000円
・車検、点検、オイル交換費用 8万円(車検代は1年分のみ算入)
・タイヤ代 1万6000円(1万6000円/本×4本÷4年ごと)
●税金・保険:8万3890円
・自動車税 3万4500円(1500CC以下)
・任意保険 3万5470円(ネット損保 17等級)
・自賠責保険料 1万3920円 (2年間2万7840円÷2年)
●高速道路通行料:3万円程度
●駐車場代:14万4000円(1万2000円/月×12カ月)
ここまでを合計すると、年間54万1390円、月額で4万5115円がかかっています。その他にも、カー用品や洗車代、出掛けた先でのパーキング代、不具合やぶつけた場合の修理代などの費用も不定期に発生します。
◆年間でトータル80万円超もかかる
また、7年に一度新車250万円(諸費用込み)を乗り換えるという人なら、下取りが40万円としても、7年ごとに210万円を車両購入費用として準備するか、ローン返済(金利がプラス)しないといけません。210万円を乗り換えまでの7年間で割ると、単純計算で年間30万円になります。
車に対する車両購入費用約30万円と維持費約54万円を合計すると、1年間の支出は84万円(月額7万円)ということになります。あらためて金額を計算すると、こんなにお金がかかっていたんだなとビックリしてしまいますね。
◆車と生涯付き合ったらなんと約4000万円!
同じ条件で、仮に20歳~70歳までの50年間、車に乗り続けたらいくらになるでしょうか。
●車の購入代金
210万円(下取りを差し引いた金額)÷7年間×50年間=1500万円
●車の維持費
54万円/年間×50年=2700万円
合計でなんと4200万円! 思わずため息をついてしまう金額ですね。マイホームの購入金額に匹敵します。もちろん、車の種類や使い方でこの金額は大きく変わってきますが、いずれにしても数千万円単位の出費が必要です。
(略)
このように思い切って車を所有せずに、代わりにかかる費用を試算してみましょう。
●交通費
月に1万円ずつタクシーを使ったとして50年間で計算
→1万円/月×12カ月×50年間=600万円
●レンタカー代
月に1回レジャーを楽しむためにレンタカーを24時間借りる場合
→トヨタ プリウスで約1万2000円+高速代・ガソリン代約7000円=約2万円/月
→2万円/月×12カ月×50年間=1200万円
合計すると、50年間で1800万円。生涯キューブクラスに乗り続けた場合の4200万円との差額は、2400万円にもなってしまいます。
****以上、引用おわり****
ツッコミ1>マイカーコストはもっと平均的かつ現実的なケースで考えるべき
引用記事では記事執筆者の家族の事例を取りあげていますが、もっと平均的かつ現実的なケースで考えるべきです。
年間走行距離15,000kmは多い事例です。国土交通省の調査資料(11ページ目)によると年間走行距離の平均10,000km程度でしょう。したがいガソリン代は2/3となり62,500円/年①、減額です。
タイヤ代については単価は少なくとも3割くらいは高く、せいぜい12,000円。かつ1台あたり7年間保有するのであれば、その期間中は1回の交換で十分なため1回のタイヤ交換代を7年で割るべきです。
したがって(単価12,000円×4本)÷7=6,900円/年となり、9,100円/年②も減額です。
駐車場代も地方にいけば月額5,000円なんてざらです。ここで地方での使用を想定して12,000円との差額7,000円は年間で84,000円③減額です。
①②③合計で155,600円となり、引用記事での試算額541,390円から385,790円にまで引き下がります。
また車両代(下取り額控除後)も7年間で2,100千円とありますが、車をコモディティで単なる道具として捉えれば中古車という選択肢もあります。車両代1,000千円でカーセンサーNetででも検索すればいくらでも見つかります。7年間での均等割りなら142,900円。維持費とあわせて528,690円。50年間では26,435千円まで引き下がり、42,000千円の6割強に収まります。
ツッコミ2>タクシー利用が月10,000円ですむはずがない
引用記事ではタクシー利用を月10,000円としていますが、これは「たまにタクシーを乗っている」という程度の出費であり、マイカー利用の代替としては少なすぎます。
タクシー1回の利用料金は地域によってばらつきありますが250~300mごとに80~90円です。以下に都心と地方都市のタクシー料金情報をあげておきます。
参照記事
Taxisite 東京都のタクシー料金
Taxisite 静岡県のタクシー料金
タクシーで移動する1回の距離を5km(徒歩や自転車では時間がかかる距離)とすれば初乗り料金とあわせて2,500円前後かかります。往復で5,000円程度です。つまり10,000円では月に2回しかタクシーに乗ることができません。これがマイカーの代替手段としてのタクシーの現実的な利用頻度でしょうか。
マイカーの代替手段としての利用頻度を想定すれば、例えば1週間で平日2回、土日で各1回利用するとして週4回。年間208回。一往復10kmで2,080km。これを初乗り・迎車・消費税無視で料金計算しても年間643,000円程度になります。
加えて記事にあるレンタカー代の年額240,000円を加算すれば、合計883,000円とツッコミ1でWATANKOが試算した529千円よりも高くなります。また記事におけるマイカー保有のケース840,000円と比べてもまだ高いです。
ツッコミ3>比較する前提がすり替わっている
本来は最初にツッコミするべき視点ですが、タクシーの利用が月10,000円であれば移動距離は約3.2km、年間約38kmです。月1回、レンタカーの24時間利用で移動する距離を片道200km、往復400kmとすれば年間4,800km。タクシーでの移動分とあわせて合計で4,838kmです。
引用記事のケースではマイカーでの移動は年間15,000km。かたや代替手段では年間4,838kmとマイカーの3割強にすぎません。受ける便益のボリュームがこうも異なる対価を並べて高いの安いのと断じるのはおかしくないでしょうか。
もちろん都心部にすむ方であれば代替の大量輸送による安価な交通手段が充実しているためにマイカー保有の必要性は薄まるでしょう。(ただし代わりに地価が高いために家賃や飲食費その他の生活コストは上昇します。)さらには年間数百キロ程度しか車で移動しない人であれば趣味性が無ければもう全くマイカー保有する意義がないかもしれません。
また一方、地方に住んでおり交通手段は車に頼るような場合、年間10,000kmないしそれ以上移動するのが常態であればマイカー保有が現実的です。タクシーで年間10,000km移動したら3,000千円もかかってしまいます。
「マイカーの保有コストが高いので貯蓄のためにはマイカー保有を見直しましょう」という節約系の記事をみかけるたびに、マイカー保有する場合の移動距離が代替手段になったとたんに激減する前提へとすり替わっていないかよく注意が必要です。
このような記事は所詮は最初から「マイカー保有は金がかかるから、やめましょう」という結論ありきの記事として片付けるしかないのでしょう。
関連記事:
カーシェアリングとマイカー保有-へんてこな比較
« 個人投資家は投資のゲームセットを自分で決められる【Refrain 2014】 | トップページ | 2014年11月の積み立て購入商品 »
「自動車」カテゴリの記事
- マツダ3の販売不振と今後(2019.09.15)
- マイカー、かく買い替えり―⑤これまでのまとめと今後(2019.09.07)
- マイカー、かく買い替えり―④芋づる式な候補車のリストアップ(続々)(2019.09.05)
- マイカー、かく買い替えり―③芋づる式な候補車のリストアップ(続)(2019.09.03)
- マイカー、かく買い替えり―②芋づる式な候補車のリストアップ(2019.08.31)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
« 個人投資家は投資のゲームセットを自分で決められる【Refrain 2014】 | トップページ | 2014年11月の積み立て購入商品 »
おー
詳しい御説明ありがとうございます!
2600万円ですか!
ぐぐっと下がりましたね
車を持つ際はその辺の記事参考にするより
WATANKOさんのように車に詳しい方に聞いたほうが良さそうですね( ´ u ` )
投稿: 人生よよよ | 2014年11月28日 (金) 11時43分
●ガソリン代:通勤に使わず会社支給なしでも格安セルフで10~30万/年くらい??(長距離かなりいってMAX値)。2.5L〔215ps〕レギュラーで高速リッター13キロ超(10年前に発売)
●整備費用など
●税金・保険
:会社の経費で落としているので負担なし(自腹だとしてもイエローハットで最新高級アルミ付きの16インチスタッドレスが4本総支払い79800円)
●高速道路通行料:ETC割で30%オフ(愛知県小牧インターまで往復1万くらい)
●駐車場代:月1万もしない(10万ちょいか?)
タクシーやレンタカーだとないトコ(区域)も多いので、電車でどれだけ待つか・・。
時間の無駄も甚だしい(これぞタイム・イズ・クルマ!)
タクシーだと最近事件もあるし(若い女性の夜とか・・)、レンタカーのグレードは大抵格安コンパクトカー(決算セールで新車99万)。
これだから投資を商売にする人間は信用ならん(怒)
クルマに金持ってかれたら、貯め込まなくなるからね・・
5年落ちの高級車とか決算コンパクトカーなら、随分浮くよ(やり方によってはネット保険、格安車検、中古パーツでさらに)
投稿: 預金王 | 2014年11月28日 (金) 22時51分
http://allabout.co.jp/gm/gc/382502/2/
>海外の国債や不動産などを投資対象とするものでは、為替によって影響を受けますが、特に円高・外貨安の時はリーズナブルに購入できるので、お買い得感は高いです。
勝間同様、ファイナンシャル・リテラシーの低さがわかります(苦笑)
http://diamond.jp/articles/-/4290?page=2
>長期投資の誤解はリスク資産を買わせるため、ドルコスト平均法は積立投資のセールスに、頻繁な損切りは売買手数料につながる。素人の誤解の裏にはいずれも玄人の商売の影がある。
投稿: 預金王 | 2014年11月28日 (金) 23時27分
雑誌の記事、車を所有しない場合の職場への通勤費を計上してないのはおかしいですね。 仮に電車通勤が一日往復500円かかるなら、月22日出勤で1万1千円。 タクシー代とレンタカー代を足すと月4万1千円になります。 年間約50万円ですから、車保有の対し浮く金額は税金、車検代、任意保険料ぐらいでしょう。 それでもけっこうな金額ですが。。
原油価格が急落し、ガソリン価格が下がりそうです。 良い事です。
ハイオクが安くなれば、BMW買おうって気にもなるものです。
投稿: 工員 | 2014年11月29日 (土) 10時34分
よよよさん
コメントありがとうございます。
車にかかる費用はやりようによってはいくらでも変動します。硬直的に考えずに如何にコストパフォーマンスよくカーライフを楽しむかを考えると楽しいですよ。
投稿: WATANKO | 2014年11月29日 (土) 12時01分
預金王さん
コメントありがとうございます。
引用記事については預金王さんも黙っていられなくなり?ご自身のブログで記事にされていますね。
なお都心ド真ん中に住むケース以外であればマイカー保有はその便益に見合い、コストパフォーマンスもよいでしょう。
いつもザックリ試算しますが、日本国内の長距離移動であれば大人2人であれば、車とそれ以外の交通手段はだいだい同じ費用(除く車の償却費)になります。3人以上なら車の方が割安です。
投稿: WATANKO | 2014年11月29日 (土) 12時08分
工員さん
コメントありがとうございます。
>雑誌の記事、車を所有しない場合の職場への通勤費を計上してないのはおかしいですね。 仮に電車通勤が一日往復500円かかるなら、月22日出勤で1万1千円。 タクシー代とレンタカー代を足すと月4万1千円になります。
ご指摘のとおりですね。Apple tp Appleな比較をするために想像力が欠かせません。
投稿: WATANKO | 2014年11月29日 (土) 12時10分