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2015年7月12日 (日)

東芝よ、すぐバレる利益操作をやる愚かさに気がつかなかったのか

【7月10日終値ベース運用状況速報】

■投資元本(待機資金含む)

66,000千円

■評価損益(分配金・確定損益・税還付込み)

36,359千円

■損益率

55.1%

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(目先の利益をあげたところで...。)

東芝の不適切な会計処理について前回取り上げましたが、今回はその続きです。いや続きと言うより今回が本論といってもよいかもしれません。

今回明るみになった不適切な会計処理は工事進行基準の会計処理であるということですが、これについてはわかりやすく触れている記事を紹介します。

参照記事
mjdsk(マジですか) 的なニュース。
東芝の不適切会計の内容とは?工事進行基準とは何?

上記の記事では工事進行基準の概要と、東芝が行った不正箇所についてわかりやすくふれています。

報道ならびに上記記事によると東芝が工事進行基準における不適切な会計処理は、受注案件の総コストを過小に見積もっていたことです。

総コストを少なめに見積もることで案件自体の利益が見かけ上、UPします。また総コストを分母、決算日時点での発生コストを分子として案件の進捗率を算定するわけですから、 分母が少なくなれば、分子が同じであっても相対的に進捗率があがります。

つまり東芝は、①総コストを過小にすることで利益額を引きあげ、かつ②それを当期の利益に前倒しで持ってくるという操作をしたわけです。

生ビールがあとから沢山運ばれてくると嘘をつき、かつそれゆえに先にどんどん飲んでも構わないという嘘をついたということです。

しかし①については総コストを過小に見積もったところで案件が進捗すれば、やがて見積もりを超えるコストが実発生することは明白であります。②については総コストの過少/適切にかかわらず一定の利益総額を早く取り込むか、あとにするかというゼロサムな話でしかありません。

つまり東芝はすぐバレる利益操作、それと時間稼ぎをやっていたにすぎないということになります。

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それともうひとつ。

新聞報道によると田中社長は社長就任初年度の2013年度に営業損益にて史上最高益の達成にこだわり、社内に業績目標達成の圧力をかけていたとされています。また損失や費用計上の時期をずらしてくれ(=工夫しろ)と要求していたとも言われています。

これについても短絡的な印象が否めません。損失や費用計上の時期をにずらす(先送りにする)ということは、すなわち今の手持ちの仕事に隠れている損失や費用をいずれは計上しなければならないことを指しています。

田中社長の任期中にどれだけそれらを表面化せざるをえなくなるかはわかりませんが、いずれ損失を計上し、損益計算書を傷めることになるわけです。つまりは史上最高益にこだわった2013年度よりも次年度以降の方が業績が悪くなる可能性が高いわけです。

田中社長は自身の任期中に途中から東芝の業績が悪化するリスクを自ら抱え込んでしまいました。就任初年度が最高益で、あとは右肩下がりという業績を出してしまった社長に対する内外からの評価は決して高いものではないでしょう。

むしろ田中社長がとるべき手段は、就任初年度においては手持ちの案件にて隠れている損失をできる限りあきらかにして、これに手当てすることでした。在庫など保有資産の評価損、稼働資産の減損、投資先に対する損失、遂行中案件の将来の追加コストの引当金などを計上して抱えている膿を出し切るべきでした。

就任初年度にそれらを実行して損益計算書を傷めても、社長を引き継いだ時点でのそれまでの経営にて抱えていた含み損失であり、それは前経営陣の責任に転嫁できるでしょう。むしろ就任初年度に損失計上を断行すれば、堅実な経営者として評価されるかもしれません。

初年度に将来分まで含めた損失を計上すれば、それは次年度以降における業績拡大にプラスになることでしょう。足元の業績悪化は社内に対する危機感を醸成し、引き締めにつなげることもできます。

上記のような事例として有名なのが、カルロス・ゴーン氏による日産自動車の業績回復です。同氏は就任後に策定した再建計画“日産リバイバル・プラン”のなかで2,000億円の再建費用を事前に引当計上しました。その結果、初年度に大きく業績を悪化させましたが、次年度以降は急回復となりました。損失に対して手当て済であれば、あとは稼いで利益をあげるだけです。業績回復は必然でありました。

東芝の田中社長は前社長との確執があったとも報じられてます。自分が社長に就任したら早速、前任者を上回る結果を出したいという欲が、堅実な経営をするという義務を上回ってしまったのでしょう。

しかしわざわざ後で自分の首を絞めるような損失先送りをなぜすすめたのか。先送りした損失は次年度になって考えればいいという、目先の短期的な経営に走ったのか。

このような経営をするトップがいる企業であれば、株主としてはこの企業の業績悪化が明るみになるタイミング(=保有する株を売り逃げるタイミング)をいつも心配せざるをえません。

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さて最後に田中社長の所業だけでなく、もう少し視点をかえてみます。

東芝、いや東芝の株主にとって不幸なことは、今回の不適切な会計処理が取り沙汰されているのは金額にして1,700億円規模でしかないということです。

参照記事
読売新聞 東芝、過大計上1700億円超…追加調査で増大

1,700億円とは、売上高6兆、当期純利益500億、現預金+営業債権1兆6,700億の経営規模を誇る東芝からすれば、経営の屋台骨が揺らぐような金額ではありません。

もしも会社の事業継続に支障を来すようなレベルにまで財務体質が傷んだ場合、金融機関から支援を仰ぐことがあれば、支援先から財務担当役員ないしはお目付け役が送り込まれるか、そこまで厳しくなくとも金融機関による監督が続くことが想定できます。

しかし推測の限りですが、今回程度のダメージであれば、上記のような外部による管理・監督に基づく改革は望み薄であり、もっぱら東芝自身の自浄作用に期待するほかないかもしれません。

もしも今回の不適切な会計処理が経営トップほか限られた財務関係者の処分だけで幕引きがなされるのであれば、一方で東芝の社内にはこれまでと同様の体質が続くおそれがあります。田中社長だけが特異であったとはたして言い切れるでしょうか。

東芝が今回の騒動から何をLessens Learnedとして、今後にどう活かすのか。まだ現時点でこう唱えるのはちょっと早いかもしれませんが、もしもこの会社の株主を今後も続けようとする個人投資家であれば、それをしっかりを見極めておくことを忘れてはならないでしょう。


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