(続)先進国株式インデックスファンドのシェア@2016
前回、先進国株式アセットクラスのインデックスファンドの純資産ならびに資金流出入額におけるシェアを調べてみました。
その続きとして信託報酬と資金流出入額の2軸の中に各商品をプロットした散布図も作成してみました。2つの関連、またそこからグルーピングして見えることはないか。
Notes)
横軸は信託報酬(税抜)、縦軸は資金流出入額の直近6か月(2016年1月~6月)の平均月次額です。
これをみるとニッセイは信託報酬では最も低い水準にあり、かつ資金流出入額がダントツに大きいです。
2位のeMAXIS、4位のSMTとの資金流出入額の差が今後も続くと仮定した場合、単純計算ですが純資産においても、本年末にはeMAXIS、2年後の2018年半ばにはSMTをそれぞれ抜いてトップに至ります。
また資金流出入額でニッセイに続くのがたわらです。現在の資金流出入額がこのまま続けば同様に、2017年末にはステート・ストリート外国株式インデックス・オープンや外国株式インデックスeを抜いて第4位まで到達しそうです。
その一方でSMTやインデックスeの資金流出入額の落ち込みは大きく、どこで下げ止まるのでしょうか。そういえば2つとも運用会社は三井住友トラスト・アセットマネジメントでしたね。
あとは信託報酬の水準はまちまちですが、ETFを除けば資金流出入額が軒並み1億円を割っている商品ばかりです。しかもこれらのうち半数は10百万円にも至りません。皆“墓場行き”...。
それであっても完全放置のままでも年間数百万~数千万円の信託報酬を獲得できるですから、売り手側に整理統合の動機付けが起きないのは仕方がないのかもしれません。
■ニッセイのプライシングが見事でした
インデックス投信は“商品(Product)”自体の差別化が難しい商品です。ならばマーケティングの教科書的に言えば残る“価格(Price)”、“販売チャネル(Place)”、“販促(Promotion)”で差をつけていかねばなりません。
そこで二ッセイ・アセットマネジメント(以下、ニッセイAM)は価格において効果的なマーケティングを行ってきました。
先進国株式アセットクラスのインデックス投資の信託報酬は2010年から4年近くの間、0.5%(税抜)の水準にとどまっていましたが、ニッセイAMは2013年末にこの信託報酬の水準を明確に下回る「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」を新規発売開始しました。
それにとどまらず、2015 年度の夏から冬にかけての投信ローコスト革命において、他社が更に信託報酬の安い商品を投入する機運をみせるや、先手を打って上記商品の信託報酬を更に引き下げました。
この結果、新登場したたわらは確かに信託報酬はニッセイよりも安いですが、その差は決定的ともいえず、ニッセイへのマイナス影響はある程度制限されました。
ニッセイの資金流出入量がダントツなのも、コスト面における上述したブレークスルーと機を見た競合対策が効いているためでありましょう。見事なプライシングであります。
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インデックス投信のコスト競争の観点からこの先を考えると競合他社にとっては厄介です。信託報酬を更に引き下げた新商品を投入しようとしても、先進国株式アセットクラスでは既に0.2%前半の水準ですから、これよりも明確に引き下げる水準を設定するのは容易ではないでしょう。
むしろ他社が狙うべきは他のアセットクラスです。
しかしながら債券は個人投資家の間にて不要論あり、REITはポートフォリオにおけるマイナーシェアでしかない、バランスファンドはバラ買いの個人投資家にとってアセットアロケーションのマッチングが取りづらい等が予想されます。
やはりここは国内取引ゆえにコスト低減の余地がある?日本株式か、先進国株式よりもまだ信託報酬が高い新興国株式を対象に、思い切ったローコスト商品を投入することでしょう。信託報酬の低減の見返りとしての十分な資金流入増が期待できるアセットクラスかもしれません。
というわけで、低廉な新商品をお待ち申し上げております。
〇〇〇アセットマネジメント御中
(〇〇〇には好きな運用会社名をどうぞ)
(あとがきにかえて)
妻ミサト「あなた、いつもブログでコストの引き下げお願いばかり書いているわね。」
WATANKO「だってリスク資産残高80百万円前後を運用している身としてみれば、コストが0.1%下がればノーリスク、手間無しで年間8万円浮きますよ。その分、君がすきな通販化粧品をたくさん買えるでしょう。」
妻ミサト「そうね!是非頑張ってちょうだい!」
WATANKO「頑張っていただくのは、運用会社の皆さんです。」
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