【追記あり】セゾン投信の2ファンドが信託報酬を引き下げましたが、ただのプロモーションどまりではないか
(セゾン投信はずっと保有しています)
ローコストな直販投信の運用会社として、今や老舗とも言えるセゾン投信が、この度、自社商品の「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」(以下、セゾン・バンガード)と「セゾン資産形成の達人ファンド」(以下、資産形成の達人)の2つのファンドの信託報酬を引き下げました。
セゾン投信 2本のファンド 運用管理費(信託報酬)引き下げのお知らせ
2つのファンドのうち、セゾン・バンガードはこれまで投資対象となるバンガードETFの経費率の引き下げ分を反映させて、信託報酬を引き下げてきた過去がありました。
これに対して今回はセゾン投信自身が受け取る信託報酬分について削減してきたわけです。
この引き下げについて、「純資産が拡大すれば信託報酬を引き下げる」と喧伝されてきたことが実現したこと、セゾン投信が先に発表したフィデューシャリー宣言に沿った行動であることなどから個人投資家ブロガーの皆さんの反応は概ね良好です。
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しかし現実を言わせてもらえば、今回の信託報酬の引き下げは率にして0.01%、つまり1bpと小幅です。これは「引き下げ」とうたってはいるも、失笑する個人投資家がいるかもしれない、本当に最低限のレベルです。
どれくらい最低限かというと、例えばWATANKOの場合、保有するセゾン・バンガードの残高は3月10日現在で5,981千円です。これに対して信託報酬の引き下げ1bpは598円です。これは1年間でわずかビール中ジョッキ一杯分の値段にすぎません。
個人投資家にとって今回の信託報酬の引き下げは、あまりに小幅であるため運用成果の面ではメリットがあるとは言い難いです。(全くゼロだとまでは言いませんが。)
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投信のコスト革命が進む中、セゾン投信はこれまで信託報酬の引き下げに対する動きは鈍かったです。
セゾン投信の中野社長は様々な媒体を通じて長期投資や分散投資の意義、コストの重要性など個人投資家の啓蒙に繋がる情報発信を何年にもわたって行ってきました。他の個人投資家と同様、WATANKOMもそれは素晴らしいことだと思います。
その成果もあってかセゾン投信の2ファンドの純資産は順調な伸びを表し、セゾン・バンガードは「投信ブロガーが選ぶ!Funds of the Year」でランキング常連になっています。
WATANKOからみれば、セゾン投信を知る個人投資家にとって、上述の2ファンドのバリューはもう十分に浸透しており、それは純資産の伸びという形で現れています。
したがいセゾン投資は、それでもあえてコスト競争力につきあう必要が果たしてあったのでしょうか。
しかも現実には信託報酬の引き下げ幅は1bpであり、「近年の投信のコスト革命の潮流の中にあって、セゾン投信も信託報酬の引き下げに関心を持っています。」というアピールをした程度にすぎません。そこに見える光景はただの宣伝の域を出ません。
セゾン・バンガード、資産形成の達人の2ファンドをあわせて純資産は1,700億円あまりですから1bpは17百万円です。今回の引き下げは、すなわち17百万円の費用をかけたプロモーションであるわけです。
今回の件は、掛け値なしにいってそのくらいの話ではないかと市井の個人投資家はとらえました。
【2017/3/12追記】
本件の参考として、興味深いツイートを拝見しました。
セゾン投信の信託報酬引き下げが、どれほど大きな決断だったのかは同社の決算公告を見れば分かる。純利益4800万円程度の会社が、真水の1700万円を放棄するというのは凄いことなのだ。ある意味で経営の根幹にかかわるほどの決断だよ。https://t.co/Puy2SGd5hl
— 菟道りんたろう (@udohrintaro) 2017年3月11日
WATANKOは、信託報酬のうち、委託会社(セゾン投信)の取り分0.249%から0.01ポイント差し引くので、営業収益比4%にとどまり、負担はそれほどでもないかと思いましたが、財務諸表をしっかりとチェックしておくべきでした。
菟道りんたろうさんの指摘どおり、今回の信託報酬の引き下げがセゾン投信の財務規模に比して負担が大きいのであれば、WATANKOはやはりその英断を称えるというよりも、引き下げ実施には慎重になるべきであったといわざるを得ません。
ちなみに決算書をみると営業収益が伸びていますが、同時に営業費用・一般管理費もほぼ同率で増えています。この傾向が今後も続くのならば、セゾン投信の手元に残るのは何時まで経っても薄利にとどまります。このあたりもちょっと気になりました。
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