築年数がすすんだアパートが直面する収益力の低下
(築年数がすすんだアパートに、再び満員御礼となる日はやってくるのだろうか)
WATANKOはサラリーマンの傍らで、半ば家業ともいうべき不動産賃貸業を営んでいます。親から受け継いだいくつかの物件に対して十数年かけて自分自身でリストラクチャリングして収益性を確保・維持しています。
さてWATANKOは母親が存命中に同人名義の資産の相続を視野にいれた対策として、2009年にアパートを新築して、以降賃貸に供しています。
WATANKOが住む街は、近隣の市町村に比べて人口の流入が大きく、その受け皿としてこれまでアパートがどんどん建てられてきました。とくに近年は相続税制の改正をうけて実質的な課税対象者が増える中、WATANKO同様にその対策としてアパートを建てる方が増えてきており、アパートの供給戸数の伸びはどんどん加速しています。
どの程度かというと、WATANKOが所有するアパートの近隣だけでも、ここ1~2年で6棟も新築されています。前述のとおり、WATANKOが住む街が人口の流入が多いといってもこれはあきらかに供給過剰な状態であります。
■築年数がすすむと生じる収入減と費用増
新築されたアパートの年数が経過していくと収益力の低下に直面します。その事由としてはWATANKOの事例で述べた「需要に対する供給が過剰であること」以外にも、次のような点があげられます。
<収入面>
▼アパートが所在する地域における間取りの需要が、そのアパートの新築当時から変わってきた場合、古くなったアパートは最新の需要から外れてしまい、とたんに内見率が下がります。
▼アパートのオーナーは入居率をあげようと値下げ競争に走った結果、賃料の相場がどんどん崩れてしまいます。そうなればたとえ満室であっても賃料収入総額が減額となる事態を引き起こします。そして一度引き下げた賃料相場はよほどの需給バランスの変化が生じないかぎり、再度上昇する(させる)ことは困難でありましょう。
▼たとえオーナーが賃料を維持しようとしても、借り主の方から契約更新の際に賃料の値下げを要求してきて、これを飲まざるをえない展開もありえます。借り主は自分が借りている物件と同等の物件の最新の相場を調べて、自分が支払っている賃料が高ければ値下げを求めてくるというわけです。
そもそもアパートの入居は、例えばホテルの部屋の稼働と同様に、一度空いてしまった部屋から得られたはずの収益を、後から手に入れることはできません。(サービス業は“在庫”が持てません。)
したがい賃料相場を意識しつつも、ともかく空き部屋がたったひと月分であっても発生することを避けなければなりません。
その意味からすれば物件としての競争力が一番高い新築の時期に空き室が発生するなど、まったくもってあってはならない事態です。
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<費用面>
▼一方で、アパートの築年数が経過することによって大小様々な補修費がオーナーの負担として発生してきます。とりわけ借り主が退去するときには、原状回復のための補修がかかりますが、全て借り主負担というわけにはいかず、一定のオーナー負担がまずもって発生します。
▼必要な補修とは別に、古くなってきたアパートのバリューアップのために内外装のリフレッシュや付帯設備の追加などを実施するとなれば、それら費用も相当な金額となります。
これらの費用増は毎月の賃料に反映させていきたいところですが、一方で近隣相場を上回る賃料を設定するわけにもいきません。(賃料をあげれば入居率の低下を招きかねません。)
そして更に悩ましいことは、アパートにバリューアップを施しても、それが入居率の向上、賃料水準の維持に必ずつながるという保証はどこにもないということです。
以上の収入減+費用増のダブルパンチによってアパートの収益力は低下し、オーナーの手残りとなるキャッシュは減る一方であります。
■WATANKOのアパートもまた築9年目を迎え、これからが正念場
WATANKOのアパートは築年数でいえば、本年秋でちょうど満8年が過ぎて9年目を迎えます。以前は満室を維持できていましたが、近年はいつも1部屋、多い時には2部屋が空室となっている状態が続いています。
1部屋、2部屋という一見大したことはなさそうに聞こえますが、売上高が8.3%あるいは16.6%も減っているわけであります。個人にとって収入が2割近く減る事態というのは決して安穏とはしていられないでしょう。
築9年目を迎えると、もはや築浅物件とも呼べずどこにでもある中古アパートの一つになります。古くなってきたために前述の収入減+費用増のダブルパンチに見舞われはじめました。
多くのアパートオーナーと同様に、WATANKOもまたアパートの建築に当たっては資金の借入をしています。このまま空室が3部屋、4部屋と進行すると損益はともかく、キャッシュフローが赤字に陥ります。
今迄は管理会社に色々とお任せして、なかばほったらかしにしてきましたが、これからは定期的なモニタリングを忘れずに、かつ空室対策を怠らないようにしなければなりません。
対策と言っても、「それなりの効果が期待できるが、少なくない費用を伴う手段」から「やらないよりはやった方がまだマシという程度の手段」まで様々な内容があげられます。
ホンネを言えば管理会社には手数料を支払っているのだから、こういった対策は全て押し付けてしまいたいところですが、オーナーが負担となる支出が生じることや賃料設定に関する慎重な判断を伴うものもあるため、オーナー自身が出張って「収入の維持」と「費用の抑制」にむけて管理会社と共同で頑張るほかありません。
遊休物件の売却、新規の賃貸契約の締結がそれぞれ事務手続き含めて完了した矢先に、今度はアパートの管理の強化が舞い込んできました。
不動産投資はサラリーマンの副業の中でメジャーなひとつかもしれませんが、この副業においても決してタダ飯はありません。
不動産投資を手掛ける方々におかれましては、その支払った労苦と費用に見合ったリターンがもたらされんことを祈念致します。
(あとがきにかえて)
WATANKO「というわけで、これから管理会社と週末打ち合わせを重ねて、対策を考えていきます。」
妻ミサト「管理会社の担当のBさんだけど、なにかとても頼りなさげなのよね...」
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WATANKO「おっしゃるとおりです。パフォーマンスは大いに不安であります。」
妻ミサト「いっそ長男を不動産管理の継承のためのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)として手伝わせてみてはどうかしら?」
WATANKO「長男よりもOJTが必要な人物がおります。」
妻ミサト「まあ、一体、誰かしら?次男はまだ中学生だし...(ワクワク)」
WATANKO「それは...アナタです!ダ----ン!!(喪黒福造ばりに)」
妻ミサト「!!!」
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