ファンドラップを選んだ個人投資家がやるべきこと(その2)資産運用のすべてを一任することはできない
(ファンドラップのチェックは必要)
(前回からの続きです。)
前回記事ではファンドラップはコストが高く、それはリターンを蝕むために、専門家に一任した割にはお寒いリターンしか望めないという指摘をしました。
今回はコストもさることながら、もっと根源的な話です。
■ファンドラップをどう選ぶのか
ファンドラップを選びたいという御仁に質問です。
▼貴方は一体どこの金融機関が提供するファンドラップを選ぶのでしょうか。
▼各社が用意するファンドラップのうち、どれが自分にとってよい商品だと判断できるのでしょうか。
▼そもそも各社のファンドラップの優劣などを購入前に比較できるための十分な情報が開示されているのでしょうか。
ファンドラップの取り扱い額は大きいです。以前は最低でも10百万円以上から、最近は数百万円という規模からも取り扱いがあるようですが、依然として高い水準です。
それなのに、内容把握も比較もろくにせずに、たまたまお付き合いのある金融機関に紹介されたファンドラップを、唯一の選択として何の疑問ももたないままに選んでいるとしたら、大丈夫でしょうか。
そのようなケースは、信託報酬のゼロコンマ%を気にしているWATANKOからみれば、はるかに博奕的選択に思えます。
■ファンドラップの点検が必要
それでも「大手の金融機関が売っているファンドラップならば、どこの運用力も大差がないのではないか。」という達観をもって、どこかのファンドラップを選んだとしましょう。
次は「ファンドラップの点検」です。
個人投資家がファンドラップを用いて自分の資産運用を金融機関に一任したとしても、本人がやるべきことはまだあります。
それは一任した金融機関が、
★どのようなポートフォリオでもって自分の資産を運用しているのか
★相場や為替の動向に合わせてどのような対応を取っているのか
★結果としてどれくらいのパフォーマンスをあげているのか
について定期的に把握して、その金融機関に運用を任せておくべきかどうか都度判断を下すことです。
ファンドラップの運用報告の内容をよくよく点検して、その運用の巧拙を把握、判断することが必要です。もし一任した金融機関の運用結果が個人投資家の要望を満たさない、下手くそなものであれば金融機関を変えることを考えていかねばなりません。
どの金融機関のファンドラップに一任するのか。さらには選んだところにずっと一任し続けてよいのか。
ここの判断は個人投資家がどうしても自分自身で行う必要があります。
上記をきちんとわかっている個人投資家であればいいのですが、ひょっとしたら以下のような気持ちでファンドラップを購入している個人投資家がいたとしたらどうでしょうか。
「おいおい、俺は面倒くさいことから離れたくてファンドラップを買っているんだ。中身を理解しろだの一任先を変更しろなどと言う手間なんか取りたくないよ。俺のチェックはどうでもいいから、金融機関がちゃんと結果を出してくれればいい。」
上記の意見に代表されるような人達は、そもそも自分自身で資産運用することを完全放棄したスタンスであり(上述のとおり実際には放棄できないのですが)、だからこそ金融機関に一任したのでしょう。
彼らのようなタイプには、ファンドラップの運用内容の点検と継続可否の判断を自ら行うことは難しいかもしれません。
しかし今は相場がよくても、やがて下落あるいは暴落が来た時にはどんな分散投資を行なっていてもそれなりにダメージを受けます。
そんな時には彼らは「せっかく専門家に一任しているのにひどい結果だ!」と憤慨し、第三者に対して被害者意識たっぷりに文句をいうかもしれませんが、そのファンドラップを選んだのはその個人投資家の責任に他ならないことを忘れてはなりません。
そんな人達はファンドラップに何を期待していたのか、よくよく自問してみる必要があります。
■委託者と受託者の関係はどこまでいっても続くもの
ビジネスの世界では、ある者がとある仕事を別の誰かに委託する行動をよくみかけます。
そこには委託者と受託者の関係が成立しますが、そこで委託者は受託者に委託した内容が当初の目的通りになされているか点検する必要が生じます。委託された事柄についての成果物に不備がないか。あれば直させるのか、それとも委託先を変えるのか。
それは委託者が当初の目的を達成するためにやるべきことであり、どこまでいってもこの部分までを誰かに委託することはできません。
ファンドラップで金融機関に一任した個人投資家が、これで何も考えずに安泰というわけにはいきません。
自分が選んだファンドラップの運用報告を読んで、一任継続の可否を決めることが必要です。
資産運用という自分の人生の一部について、これを完全に他者に委託することはどこまでいってもできません。最後には自己判断、自己責任が降りかかってきます。
あなたの人生を100%誰かに委ねることができないことと同じように、ファンドラップに貴方の資産運用の全てを託すことはできません。
<次回予告>
それでは個人投資家がファンドラップの運用内容を理解し、可否を判断できるとしたら、次に行きつくところは何でしょうか。
(つづく)
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