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2018年5月20日 (日)

テスラ・モデルX試乗-古来のスーパーカー好きがEVを買う日がやってくるか

Img_1826

(モデルX、試乗してきました。)

先日、会社の友人と一緒にテスラのモデルXを試乗しました。その試乗記ならびに思いついたことが今日の記事です。

テスラとは米国シリコンバレーを拠点とした新興の電気自動車(EV)メーカーです。日本では現在、大型セダンのモデルSとSUVのモデルXを販売しています。この2つのモデルのシャシーは同じであり、モデルSはオーソドックスなセダン(もっと正確には5ドアリフトバック)、モデルXはファルコンウィング(いわゆるガルウィング)ドアを備えるSUVです。

テスラという新興自動車メーカー、その経営者のイーロン・マスク、はたまたこの会社が今後成長していけるのか(投資の銘柄として魅力的か)というお題については、日経ビジネス、週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済のビジネス雑誌御三家にお任せするとして、ここでは試乗したモデルXのインプレに内容を絞ります。

■洗練されている?そっけない?デザイン

モデルXのエクステリアデザインは、グリルレスのフロントマスクを始め、全般的にツルンとした曲面のモノフォルムなデザインです。セダンであるモデルSと共通しており、例えばメルセデスベンツのSクラス(大型)と同じサイズですが、かの車のような威圧感はありません。

しかし全く新しい印象かというとそうでもなく、英国のジャガーやアストンマーティンに類似するイメージをWATANKOは持ちます。

インテリアも至ってインプルです。デザイントリムのバリエーションも多くはありません。カップホルダーなど収納関連のデザインに関しては日本のミニバン/SUVには遠く及びません。

細かい作りが甘いと言うと、「そのようなインテリアの末節なことにこだわる顧客は相手にしない。圧倒的な動力性能をもつEVを欲しがる顧客だけを相手にする」というメーカーの主張が聞こえてきそうだといったら大げさでしょうか。

はたしてテスラのデザインは洗練されているのか、それともそっけないのか。ここは両論併記という形がよいかもしれません。

なお試乗時に乗ったリアシートは表皮が突っ張る感じが強く、ホールド性がいまひとつでした。これは友人と共通した感想です。特にラージサイズの国産ミニバンをマイカーにしている友人いわくリアシートの出来は落第点とのこと。


■静かで振動がない異次元の加速力

さてテスラの最大の売りであります動力性能ですが、これは噂通りの速さでありました。

モデルXの0-100km(ゼロスタートから100kmに至るまでの時間)は3.4秒であり、まさに激速です。

この0-100kmですが、10秒を切る程度でちょっと速い、ノンターボで速いモデルだと7秒くらい。5秒台ではかなり速い部類で普段の街中や高速ではほぼ無敵。例をあげるとスバルのインプレッサWRXや三菱のランサーエボリューションがこの速さといったらわかりやすいでしょうか、そして4秒を切ると相当にハイパワーなスーパーカーの領域です。

これからすると車両重量2.5tもあるにもかかわらず3.4秒をたたきだすモデルXのハイパワーぶりがよくわかります。しかも内燃サイクルエンジンの爆発からくる音と振動とは無縁であり、その加速力は圧倒的で異次元とも言えました。

国産車でモデルXより早いモデルはホンダNSX(3.0秒)と日産GT-R(2.7秒)しかありません。ちなみにセダンのモデルSの最もパワフルな仕様ですと2.7秒となり、GT-Rと並んで世界のトップ10に入ります。

参照記事

Carnnyマガジン
【国産スポーツカー】0-100km/h加速力ランキング!果たして1位に輝くのは?


さらに言うとこのモデルXの速さは、内燃機関車のそれとは質的に異なる印象です。

どう異なるかというと、一言でいえば車は加速していくプロセスがありません。

アクセルを踏めば即加速で必要な速度に到達し、アクセルを放せばあっという間に減速して止まる。

スイッチをオン/オフする感覚。1か0かというデジタルな感覚です。

内燃機関車のそれのようにエンジンが徐々に高回転となり、音と振動を吐き出しながら加速していくといった情緒感はモデルXには乏しいです。

まるで車が「あなたが必要とする速度は時速80kmですね。ではアクセルをガツンと踏んでください。ハイ即座に到達です。以上」と語っているかのようです。

これに近い感覚を例えるなら、うんと速い電車のようですね。ゼロスタートして目標速度までスパッと達して、スパッと止まる、でしょうか。

タイムラグを感じることなく、必要なスピードを手に入れる。移動手段である自動車に求める魅力の大半がそれであると信じる人であれば、これで十分かもしれません。

WATANKOはマイカーとしてモデルXを考えた場合、このフィーリングを受け入れられるのか。これは極めて正直に述べるとすれば...、少なくとも数か月間、3,000kmくらいは走ってみないと確固たる回答は出せません。

高いパワー、トルクはその車の七難を隠すものであります。モデルXのあまりのパワー、トルクに驚き、刺激を受けますが、これに慣れてしまう時期が来た時に、一方でこのデジタル感覚に違和感が残り続けないでしょうか...。

■強力な回生ブレーキに馴染めるか

それともうひとつ、減速時の振る舞いにもふれておかねばなりません。

モデルXの回生ブレーキはとても効きが強く、アクセルから足を離せばあっという間に減速します。ほとんどブレーキいらずといってもいいくらいです。

回生ブレーキとは、車輪が回り続けるエネルギーをモーターに伝える時に発生するモーターからの抵抗を指しています。詳しくは以下をご参照ください。

参照記事

MOBY 回生ブレーキとは?仕組みと原理、効率を理解する【自動車用語】

内燃機関車に例えれば、MTの2速か3速におけるエンジンブレーキの強さくらいのイメージです。

つまり加速だけでなく、減速もアクセルペダルを戻すだけで大半は終わってしまうため、アクセルペダルひとつ、1ペダルでの走行がかなり可能となるわけです。

これは運転が楽な面がありますが、一方でしっかりとブレーキペダルを踏んで減速と停車を意識したドライビングをやりにくくする点、回生ブレーキで車を減速させる感覚が、内燃機関車に乗り続けてきたドライバー自身の減速の感覚に常にマッチできるかという点が気になります。

「おっと、そんなに早く止まらなくともいいのに。」というようにドライバー自身の制動感覚とマッチしないと、ひょっとしたら強力な回生ブレーキは運転のストレスになるかもしれません。

(つづく。次回はモデルXの動力・制動以外のインプレッションと、今のEVをどうみるかという点について触れます。)

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