ニッセイ、信託報酬最安値の座 2018
投信のローコスト競争は現在、ニッセイアセットマネジメント(以下、ニッセイ)と三菱UFJ国際投信(以下、三菱)のガチバトル、そこに商品ラインナップではやや異なりますが楽天投信投資顧問が絡んだ3社にてチャンピオンの座を争っております。
競争の中核はニッセイの<購入・換金手数料なし>シリーズと三菱のeMAXIS Slimシリーズ、中でも先進国株式インデックス連動の商品を対象として信託報酬引き下げの競争が続いています。ニッセイがクラス最安値へ信託報酬を引き下げれば、三菱がすかさず同率1位となるようにeMAXIS Slimシリーズの信託報酬を引き下げてきます。
ニッセイは先行者、三菱は追随者の立場にありますが、昨年末、ここに第三者が割り込む形にでSBIアセットマネジメントがEXE-i つみたて 先進国株式ファンドをクラス最安値の信託報酬(0.1095%、税抜、以降同じ)で設定すると、三菱はこれに追随してeMAXIS Slimの信託報酬を同率まで引き下げました。
さてこの三菱の動きをみて、ニッセイは<購入・換金手数料なし>シリーズの信託報酬を引き下げるのか。半年余りの沈黙を破ってニッセイは6月末にニッセイ外国株式インデックスファンド(以下、外国株式)の信託報酬を0.109%に引き下げると発表し、またまた単独最安値を更新しました。
そしてほどなく三菱もまたSlimシリーズの設定時の方針に従ってeMAXIS Slim先進国株式インデックス(以下、Slim)の信託報酬を同率まで信託報酬を引き下げて現在に至っております。
■ニッセイは先進国株式アセットでは絶対に負けられない
<購入・換金手数料なし>のうち、外国株式は純資産が957億円(2018年6月現在、以降同じ)に達し、古豪であるSMTグローバル株式インデックス(675億円)をとうに上回って、ローコストなインデックス投信で断トツのチャンピオンであります。毎月30億円もの資金流入があり、個人投資家からいかに厚く支持されているかが窺える純資産の伸びであります。
しかしながら<購入・換金手数料なし>シリーズ全体の純資産は、12商品合計で1.330億円にとどまり、このうち外国株式が957億円と7割強を占めています。このシリーズは商品ラインナップの多くで信託報酬が最安値となっていますが、その純資産は外国株式の次がTOPIXで180億円、先進国債券が93億円となっており、信託報酬が安い割には伸びてはいません。
つまりはニッセイにおいては<購入・換金手数料なし>シリーズのうち、外国株式こそが個人投家の支持と収益の中心であります。外国株式がひとえにシリーズ全体の純資産の伸長の牽引役となっているというエビデンスがあるからこそ、三菱が追随するとわかりつつも信託報酬最安値の座をゆずるわけにはいきません。
■晩秋まで待てなかったニッセイ
ニッセイは毎年11月に<購入・換金手数料なし>シリーズの信託報酬を引き下げてきました。それはあたかも同年のFund of the yearのトップ獲りを狙ったタイミングかのように思えます。
その真否はともかく、今年は例年の傾向に反してはや6月に信託報酬を引き下げてきました。
ニッセイのこの早い決断は、個人投資家にとってはありがたいですが、その背景を推察するに、外国株式とSlimの資金流入の推移が影響しているかもしれません。
直近1年の外国株式とSlimの月次の資金流入を比較してみます。
Notes)金額単位は億円です。
2017年12月までは外国株式には毎月30億円の資金流入がありましたが、2018年に入ってからは、資金流入が2割から3割目減りしてきています。
一方のSlimは12月に前述のとおり、EXE-i つみたて 先進国株式ファンドにあわせて信託報酬を引き下げ、その結果、外国株式を下回ったことによる影響からか、資金流入が2017年の水準から一気に4倍前後にまで急激に伸びています。
外国株式の目減りと同時期におきたSlimの急激な伸び。
WATANKOがもしニッセイの担当であれば、この2つを結び付けて危機感をもったことでしょう。
<購入・換金手数料なし>シリーズの唯一にして大黒柱である外国株式。その背後にはSlimがヒタヒタと迫ってきたわけです。潮目が変わってきたのかもしれないと捉えてもおかしくはありません。
かくしてニッセイは、晩秋の定期引き下げ時期まで待ってはおれず半年近く前倒しで信託報酬の引き下げを実行した・・・。そんな風にWATNKOは読み取れました。
■まとめ
三菱とのローコスト競争に勝つために、ニッセイは今年、例年よりも早く信託報酬を引き下げできました。WATANKOは、ニッセイのこの判断は正しいと考えます。ともかくも薄利で商売を続ける以上、多額の資金流入を維持することが必須の要件だからです。
今回の信託報酬の引き下げにあたって、ニッセイにおける販売会社との交渉はいままで同様に大変であったかと推察しますが、その際の最大の説得材料が「引き下げによって高い資金流入が今後の見込まれる」ことであったでしょう。
ニッセイの外国株式は、純資産がもうすぐ1,000億円にと届こうかという水準です。一方のSlimはまだ100億円半ばの水準です。
信託報酬は同率、純資産の差は800億円もある。三菱は信託報酬で単独最安値を目指すわけではない。
これらを総合すると、今はまだニッセイの天下といっても良いでしょう。
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