低コストなインデックス投信は資金を集める手綱をゆるめてはいけない
証券会社のリテール(個人営業)部門の収益が芳しくないそうです。2018年4~6月期決算では、株式相場の膠着で個別株の売買が細ったうえに、各社が力を入れてきた投信からの収入減が目立ったとのことです。
参照記事
2018/8/1日本経済新聞
証券、柱の個人部門失速 4~6月、販売手数料が急減
(閲覧には会員登録が必要です。)
投信からの収入減については金融庁が訴える「顧客本位の営業」を背景に毎月分配型や新規設定のテーマ型といった、かつてドル箱だったタイプの投信の販売が落ちたことに加えて、商品数を絞った長期保有を顧客に勧めた結果、売買頻度は低下し、販売手数料が減ってきたとのことです。
そして注目すべきは、販売手数料は無料、信託報酬は低い低コストのインデックス運用が個人投資家に広がりつつあると指摘されています。預かり残高は同じでも、投信を買い替えるタイミングで低コスト商品に乗り換える個人が増え、手数料全体を押し下げている模様です。
記事を読むと運用会社がお気の毒に見えてきますが、国内には自動車やPC等が売れないゆえに販売報奨金を積まなければならないメーカーなんてたくさんあります。金融機関も他業種並みの競争環境にようやく近づいてきたというのは言い過ぎでしょうか。
■マージンでみた先進国株式インデックスファンド
さて上記記事からインスパイアされた話題をひとつ。
WATANKOが集計して、先進国株式インデックスファンドの純資産ならびに資金流入の現況を先日ブログでUPしました。
関連記事
先進国株式インデックスファンドのシェア@2018(2018/7/22)
そこでの集計をもとに各商品が実際にはどれくらいのマージン(信託報酬「額」)を得ているのか、純資産×信託報酬率で算出し、それをランキングしてみました。
(金額単位は億円)
これを見ると、<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド(以下、ニッセイ)純資産がダントツトップなるも、信託報酬がとても低いため、マージンではランキング4位に低下しています。
代わりにトップ3をしめたのは、長年の販売で純資産が積み上がる一方、相対的にはそこそこ高い信託報酬率のままでいるSMTグローバル株式インデックス・オープン(以下、SMT)、eMAXIS 先進国株式インデックス、ステート・ストリート外国株式インデックス・オープンです。
さらにニッセイに続いては、インデックスファンド海外株式(ヘッジなし) 、外国株式インデックスe、野村インデックスファンド・外国株式といった商品が並んでいます。
これらニッセイを除く商品のほとんどには、資金流入はニッセイには遠く及ばないものの、数千万円程度から2~3億円といった水準が継続しています。そのためこのままでいってもまずまずのマージンが期待できると読めます。
典型例としては、インデックスファンド海外株式(ヘッジなし)、いわゆる旧年金積立は純資産はニッセイの1割強なのに、信託報酬が相対的に高いので9割近いマージンを得ています。資金流入も1月~6月平均で月あたり29百万円あります。ろくな販促もやっていないとすれば、これはおいしいなあとWATANKOには思えます。
一方でニッセイのマージンは104百万円であり、SMTの約3分の1に過ぎません。SMTを超えるためには、ニッセイは現在の純資産の3倍の残高が必要になります。今のニッセイの資金流入の勢いでいけば5~6年で到達できそうですが、SMTもまた純資産を伸ばしていくので、追いつくのは容易ではないでしょう。
ニッセイが名実ともに先進国株式インデックスファンドのチャンピオンの座につくのはいつになるか。
■低コストなインデックス投信は資金を集める手綱をゆるめてはいけない
ニッセイのマージン104百万円のうち、運用会社の取り分(信託報酬0.109%のうち0.04425%)は42百万円です。こう見ると1,000億円近い残高のわりには少ないとみるか、いやいや手数料の料率だからこんなものだとみるか。
個人ひとりひとりにとっては、それぞれ携わっているビジネスを背景として、その受け止め方は様々でありましょう。
その中にあってWATANKOは、金融商品は労働集約型サービスではなく、システムオペレーションでサービスを提供する性質であるため、現在の低コスト商品の水準は妥当であると考えます。
関連記事
【補稿】あなたのコスト、いまいくら?-信託報酬の引き下げを求めるココロ(2018/3/21)
ともかくも運用会社各社は、インデックス投信については信託報酬が0.2%前後にまで引き下がった現状では、ひたすら資金を集めるしかありません。
そのためには信託報酬は最安値水準とすることを必須として、実質コストを引き下げること、トラッキングエラーを最小限にすること、プロモーションと組み合わせて販路をひろげること、パブリック記事を広めて認知度をあげることetc・・・。
ニッセイほか運用会社各社は、これらに取り組んでいき、総合評価として選ばれるインデックス投信を目指すほかありません。
マージン減を嘆く前にやるべきことをやっていただきたいです。
« 2018年7月末運用状況 | トップページ | 今更ですが、実質コストに注目してみる »
「投資信託」カテゴリの記事
- 古いインデックス投信の目立たない儲かり(2019.09.21)
- まだVT、そして楽天VTを買うのか(2019.09.19)
- ニッセイ、信託報酬最安値の座 2019 しかし(2019.05.23)
- 楽天・全世界債券インデックス(為替ヘッジ)ファンドは債券クラスの人気薄を覆せるか(2019.02.05)
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)-これから買う人、手を上げてください(2018.10.29)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント