真・臆病者のための不動産入門
(記事タイトルには「続」や「補稿」ではなく、より核心に触れる意味から「真」とつけております。。。)
スルガ銀行やTETERUの不正の様をみて、前回、事業計画書のチェックポイントについての記事を書きました。
そこで書いてきたことは今まで当ブログでも触れてきたり、他者の記事でも書かれてきたことでもあります。
今回は、サラリーマンと兼業する不動産投資、とくにアパート経営を検討されている個人投資家向けにもう一歩踏み込んだ内容を取り上げてみます。
■アパート経営では実質利回り5~7%はほしい
アパート経営の収益性をみる指標として、「アパートの満室ベースの年間賃料収入÷アパートの物件価格×100」を表面利回りと称します。
ただしこれはかりそめの利回りであり、企業決算でいえば売上高対総利益率のような中途段階の収益力を表現したにすぎません。この利回りだけで相手に購入判断を強いる業者について、WATANKOに言わせれば「3分の1くらい詐欺」であります。
アパートの本当の収益力は「(年間収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100」で算出される実質利回りでみるべきですし、されにもっといえば分子については70~90%程度の入居率、分母については修繕他予定外費用向けの引当金をそれぞれ加味した「(リスク織り込み)実質利回り」でみるべきでしょう。
さてアパート物件を選定する場合、表面利回り、実質利回りはそれぞれどれくらいを目安にするべきか。
まず表面利回りについて、WATANKOが見てきたいくつかの事例をもとに言えば10%はほしいところです。
なぜなら購入時の諸経費を複数年に渡って回収したり、年間の諸経費を負担していく、さらには空室の発生などを考慮すると、表面利回りに対して実質利回りは3~5ポイントくらいは悪化するためです。
株式投資の平均リターンは諸説あれど5~7%と言われています。株式投資に比べて手間が遥かにかかる不動産投資のリターンが株式投資に比べて大きく劣後するとあっては、投資の妙味がありません。
したがい実質利回りはせめて株式投資と同様の5%~7%くらいは欲しいところです。そこから逆算すると表面利回りは10%が必要となってきます。
■新築アパートでは採算が厳しい
一般的な新築のアパートで最初から上述の実質利回り5~7%を出すとなると、相当に厳しいです。なぜなら車ほかの耐久消費財と同様にアパートもまた新品は割高になっているからです。
その割高なアパート取得価格を回収するためには、家賃が高く設定できたり、高い入居率が期待できる立地の良い物件を選びたいところですが、そのような好立地の物件は土地代が高い傾向にあるため、それがまた取得価格を押し上げてしまいます。
新築物件にこだわるのであれば立地の良し悪しもありますが、坪単価の安い土地を購入し、せめて複数の建築業者をコンペにかけて建屋の費用をできるだけ抑えていく必要があります。
そのためには土地選びや建築見積の査定に関してのある程度の知識、経験が必要となってきます。
それでも入居の需要を読み違えて空室が増えたり、運営中に予想外の出費が続けば実質利回りはどんどん悪化します。
どこまでいってもリスクばかりがつきまといます。
もし新築アパートでは思うような利回りをあげることができるとすれば、親族から土地の相続や譲渡を受けた場合があげられます。つまりは土地の取得費用がかかっていないので、その分採算は良くなります。
しかしそれも立地次第とも言えます。いくら相続で手に入れた所有地があるからそこにアパートを建てたいといっても、入居の需要が乏しい立地では採算確保が厳しいでしょう。
■中古アパートも難しい
それでは中古アパートではどうかというと、これもまた物件選びが難しいです。中古ゆえに物件の価格はこなれていますが、立地の良し悪しや周辺物件との競合を背景として購入後に賃料や入居率はどれくらい見込めるか。
さらにそこに物件の状態が変動要素として関わってきます。いくら割安で取得できても、その後に大幅な修繕維持費・リニューアル費用がかかるようでは、実質利回りを低下させます。
以上から中古アパートの選定は、新築アパート以上に目利きが必要ですし、それを得るためには色々な物件を見てまわったり、保有経験を重ねるなどの時間と労力がかかります。
サラリーマンとの兼業の場合、週末は物件を見て廻って終わりなんて日が続くかも知れません。
そして残念なことを付記しますと、仲介する不動産業者からみれば明らかに優良物件であるならば、業者自身が所有することも想像できます。そんな業者が自らが所有せずに貴方に斡旋してくる物件の魅力ははたしていかほどのものであるか。
■まとめ
以上をまとめますと、新築アパートは土地の購入も建築発注も自分自身でなるべく取り扱って費用を極力抑えるほかありませんし、これにはそれなりの知識と経験が必要となります。
ただし相続・譲渡で土地代がかからないケースでは、立地にもよりますが採算は良いでしょう。
では価格のこなれた中古アパートとなると、物件選びには一定の目利きが必要であり、それを身に着けるために時間と労力がかかります。
また新築、中古問わず満足がいく採算性をもった物件を手に入れるためには、知識、経験、時間、労力に加えてさらに対人ネゴ力なども必要となります。
もしもアパート経営を成功させたいならば、相応の覚悟が必要です。巷には所有物件を拡大させていき億単位の年収を得たなどという成功者が華々しく喧伝されています。
しかしながらその一方では株式投資の場合と同様に、敗残した者たちが沢山いるであろうことをもし貴方が想像できるとすれば、不動産投資を手掛けられる心構えはひとつクリアできているかもしれません。
« 臆病者のための不動産入門 | トップページ | 【追記あり】所有空き地の除草対策、ファイナル・アンサー »
「不動産投資」カテゴリの記事
- 不動産投資家が賃貸駐車場の屋根にあがって修繕した話(2019.09.17)
- 台風のあと、あなたの不動産は大丈夫?(2019.09.10)
- 賃貸派がアパート経営をするときのひとつの矛盾(2019.07.27)
- 不動産投資の実質利回りの速算公式(2019.07.23)
- 新規募集、ただし告知事項あります その3-部屋の清掃・修繕費用にビックリ(2019.07.21)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
賃貸専門ですが、不動産会社を経営しております。
前記事と併せて拝読させていただきましたが、さすがご経験があるだけあって、説得力のある内容でした。
我々不動産会社でさえ、物件購入には相当に慎重になります。一般の方に比べて経費はぐっと抑えられるのが我々のアドバンテージですが、それでもご指摘の通り表面で10%近くは見ないと厳しいですね。
不動産は「投資」ではなく、「事業」だと思っています。かなりのセンスとツテと行動力が伴わないと難しく、ほとんどの人は失敗するでしょうね・・・。
投稿: クリエ | 2018年9月 7日 (金) 09時30分
クリエさん
コメントありがとうございます。
プロの方から過分な言葉をいただき恐縮です。
>不動産は「投資」ではなく、「事業」だと思っています。かなりのセンスとツテと行動力が伴わないと難しく、ほとんどの人は失敗するでしょうね・・・。
巷の成功者と呼ばれている人の物件ごとのリアル収支を拝見してみたいものです。
当初は想定通りの手残り利益をあげることができても、やがて入居率の低下、修繕費の増大、簿価を大きく下回る金額で売却などと長期でのトータル収支をみればほとんど儲かっていない予感がします。
投稿: WATANKO | 2018年9月 7日 (金) 21時50分