eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)-これから買う人、手を上げてください
(うーん、商品の良さは認めるけれど...)
先日、発表と同時に個人投資家の間で話題となったeMAXIS Slim全世界株式(オール・)カントリー)(以下、Slimオール・カントリー)がいよいよ10月31日に設定されます。
周回おくれ感が満載ですが、今回はこの投信についてどう見るかについて取り上げます。
■コスト面からみて
この商品はMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)と連動することを目指します。
これまで「日本抜き」は他にもありましたが、ACWIに連動する商品はステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが全世界株式インデックス・ファンド昨年9月に設定して以来です。
全世界株式インデックスファンドは信託報酬が0.48%(税抜、以降同じ)と、昨今のインデックス投信の信託報酬のレベルと比べれば高めであります。そのせいか設定から1年たった2018年9月末でも純資産は733百万円と低迷しています。
それに対して今回のSlimオール・カントリーは信託報酬0.142%という低コストで設定されます。
これも三菱UFJ国際投信の経営努力と本気度のなせるわざなのか、それともステート・ストリートの旧態依然としたコスト感覚と値付けなのか。…おそらく両方でしょう。
なおSlimオール・カントリーの日本のベンチマークはMSCI・ジャパン・インデックス(配当込み)をベンチマークとするマザーファンドが設定されるため、この部分のコスト高を心配する向きもあります。
しかしながら日本が占める割合は1割にも満たないこと、そしてそれ以外の先進国と新興国を対象としたeMAXIS全世界株式インデックスでは信託報酬と実質コストの乖離が小さいことからして、日本部分が仮にコストが高くても影響は限定的であり、商品トータルとしてみれば信託報酬と実質コストの乖離はそれほど開かないのではないかと予想します。
参照記事
梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
【全世界株式】低コストインデックスファンド徹底比較 2018年9月末
むしろ、このSlimオール・カントリーを本当に評価し、資産形成のビークルとして活用すべきと判断したら、積み立て購入商品をこちらに直ちに切り替えてもおかしくはありません。
■購入・保有商品のモメンタムを変えるのは難しい
このSlimオール・カントリーのターゲットはずばり楽天・全世界株式インデックス・ファンド(以下、楽天VT)であり、こちらからの乗り換えをターゲットにしていると思われます。
しかしながらいまから追撃を開始して、楽天VTにどれだけ追い付くことができるのか。道のりは決して簡単ではありません。
既に楽天VTを積み立て投資している個人投資家ならば、楽天VTこそ長期で積み立て投資をするにベストな商品であると信じて、これまでずっと買い続けてきたわけです。
個人投資家のそのような連続してきた商品購入と保有のモメンタム(勢い)を止めて、切り替えさせるだけの価値が果たしてSlimオール・カントリーにあるのか。
なお不幸なシナリオとしては、eMAXIS Slimの他の個別アセットクラスの商品またはバランスファンドを積み立て購入している個人投資家が、Slimオール・カントリーに乗り換えることです。これではまさにタコ足の商品乗り換えになってしまいます。
■まとめ
三菱UFJ国際投信は、このSlimオール・カントリーでもって、少なくとも他社の商品を購入・保有している個人投資家のアセットアロケーションのうち、株式部分を根こそぎゲットしたいと考えていてもおかしくはありません。もしも個人投資家が株式アセットのみをリスク資産としている場合ならば総取りということになります。
これだけの低コストならば、これから新規にインデックス投資を始める人たちにとっては大いに有力な候補となり得るでしょう。
それでは既存の個人投資家はどうでるか。
現在見える状況下では楽天VTよりも、Slimオール・カントリーの方がおそらく低コストである可能性が高いとWATANKOはふんでいますが、もしその通りになったとしても保有分、積み立て投資分含めてSlimオール・カントリーへの乗り換えがどれだけ進むのか。
今後に要注目であります。
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)をこれから買う人、いたら手を上げてください。
評論だけでなく手金でもって本当に買う人、いたら手を上げて下さい。
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