「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2018」の投票結果と感想 #foy2018
(今回は表彰式&懇親会に出席できず残念でした。)
個人投資家ブロガーにとって毎年恒例のイベント「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2018」。WATANKOは2日前からインフルエンザを発症してしまい、表彰式も懇親会も泣く泣く欠席となりました。その分、今回の結果について例年よりもちょっと長目の感想を綴ります。
まずは昨年のトップ10のおさらいであります。
【第1位】楽天・全世界株式インデックス・ファンド
【第2位】<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
【第3位】楽天・全米株式インデックス・ファンド
【第4位】野村つみたて外国株投信
【第5位】eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)
【第6位】ひふみ投信
【第7位】eMAXIS Slim新興国株式インデックス
【第8位】たわらノーロード先進国株式
【第9位】バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)
【第10位】iFree S&P500インデックス
初登場の楽天・全世界株式インデックス・ファンドが、三連覇の王者 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドを破り、第1位を獲得しました。楽天の新ファンドはある程度得票してくると予想されましたが、第1位、第3位を獲得するとは「バンガードのブランド力おそるべし」と、日本の運用会社は戦慄をおぼえました(かどうかはわかりませんが、インパクトはありました。)
さて今年の結果は如何様であったか。
昨年10月に予想記事を書いておりますが、そこでは楽天、ニッセイ、eMAXIS Slimの三つ巴の競争になると予想していましたが、蓋を開けてみるとそこには「予想通り」と「予想外」の景色が見える結果となりました。
今回2018年の結果です。ドン!
なお名称の後の( )は昨年からの順位変動です。
【第1位】eMAXIS Slim先進国株式インデックス(初登場)【第2位】<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド(±0)
【第3位】eMAXIS Slim 全世界株式オールカントリー(初登場)
【第4位】楽天・全米株式インデックス・ファンド(▼1)
【第5位】eMAXIS Slim バランス8資産均等(±0)
【第6位】セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(△5)
【第7位】バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)(△2)
【第8位】eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(初登場)
【第9位】楽天・全世界株式インデックス・ファンド(▼8)
【第10位】eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)(初登場)
詳しい内容hは専用サイトをご参照ください。
投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2018
毎年ならばここでTOP10入りしたファンドについて、一本ずつ感想を書くのですが、今回はいくつかのトピックスにまとめて記したいと思います。
■悲願の第1位獲得、eMAXISシリーズ
ついにeMAXISシリーズのインデックス投信が第1位を獲得する時がきました。同シリーズは、かつてSMTシリーズと並んで低コストのインデックス投信シリーズの先駆的存在であり、2009年、2010年と2年連続でeMAXIS新興国株式インデックスが第2位を獲得しました。しかしその後2014年あたりから低コスト競争に追随できず、このアワードでもeMAXISシリーズは2015年、2016年とTOP10から外れる有様でした。
そこで三菱UFJ国際投信は満を持してeMAXIS Slimシリーズを新規展開。信託報酬最安値追随型というコバンザメ手法について、当初は冷ややかな目を向ける個人投資家もいました。
しかしながら信託報酬が最安値の他社商品が発売され、それがたとえ異なるインデックスをベンチマークとしていても同じアセットクラスならば言い訳無し、迷うことなく追随して同率まで信託報酬を引き下げるという徹底ぶりを見せ始めた頃からじわりじわりと支持を得始めます。
今回第1位のeMAIXS Slim先進国株式インデックス(以下、Slim先進国株式)は、他社商品に追随する流れからいっとき王者ニッセイよりも信託報酬が下がる時期があったりしたことから着実に資金流入を伸ばしてきました。
それが2017年末頃の状況であり、その後1年かけてさらに支持を継続してきた成果がここに結実したということでしょう。その意味ではSlim先進国株式の動きは、このアワードに向けて絶好のタイミングでありました。
三菱UFJ国際投信は、かつてeMAXISシリーズで獲得できなかった第1位の座を今回得ることができて本当に嬉しいことでしょう。
なにせ金融業界、金融商品とは多くの場面において同質的な競争を強いられる世界であります。商品の差別化を打ち出しても、他社がすぐに追随してくる。御上の規制や指導のおかげで破天荒なマーケティングをするわけにもいかない。現場では他所でも売っている商品を人的努力で懸命に売っている。
そんな世界にあって、スポンサー抜きのユーザー投票、しかも一般の人々に比べて金融リテラシー、商品知識にとんだ見識ある個人投資家たちから最も評価される。他社商品よりも貴社の商品が1番優れていると明確に表彰されるわけですから、これほど嬉しく、そして誇らしいことはないでしょう。
「おんなじモン売っているのに、ウチが一番ですか!?」
今やSlim先進国株式は同アセットクラスにおいては、ニッセイ外国株式と並んで毎月20億円近くの資金流入を得ているSlimシリーズの看板商品であり、ニッセイとはもう1年近く拮抗している状態にあります。我々はここにも大いに注目すべきであります。
なぜならこのトップを争う拮抗状態にあっては、各社はお互い相手に劣後しないために、相手が打ち出してきた新しい策について、常に対抗策を講じていかねばなりません。この動きがお互いの商品の中身・サービスが向上していくことにつながり、ユーザーはそのメリットを享受することになるからであります。ライバル同士の切磋琢磨、大歓迎であります。
それにしても今回TOP10中、eMAXIS Slimシリーズは5本もランクインしており、人気面では圧勝です。ですが中にはWATANKOからみて話題性に押されてランクインしたとみる向きの商品もあり、来年以降はここまでSlimシリーズがランクインするとは思えません。
でも今はこの絶頂の結果を素直に祝福しておきます。
■第1位は逃してもニッセイは王者の風格
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド(以下、ニッセイ)は今回も第1位を逃しました。得票結果だけみれば投票人数、得票はSlim先進国の約3分の2にとどまりましたが、それでも2年連続2位を獲得しています。過去に2年連続で第2位を獲得したファンドは上述のeMAXIS新興国株式に次いで2番目のレア記録です。
ニッセイは第1位を3年連続+第2位を2年連続と合計5年間もこのアワードのほぼ頂上に君臨しているわけですが、このアワードにおいて5年連続でこれほどの支持を獲得し続けているファンドをWATANKOは他に知りません。
前回、楽天・全世界株式インデックス・ファンド(以下、楽天VT)、そして今回、Slim先進国株式よりも得票が伸びなかったのはともに両者の話題性に負けたところがあったからではないかと捉えています。
それとTwitterのタイムラインを通して知ったのですが、ニッセイは更なるコスト引き下げとして信託報酬以外の「その他費用」の一部である監査報酬について引き下げを行っていたとのこと。
個人投資家は、低コストでは個人投資家を決して裏切らないニッセイの姿勢を新たに垣間見ることができて、その支持を更に厚くしたのではないでしょうか。なおWATANKOは前回に続いて、今回もニッセイの受賞のスピーチだけは是非とも聞いてみたかったです。
ニッセイ、第1位を逃しても王者の風格を感じさせる結果でした。
■コスト対策はもう不可避な楽天
さてWATANKOは今回のアワードは楽天、ニッセイ、eMAXIS Slimの三つ巴になると予想していましたが、大きく外したのが楽天・全世界株式インデックス・ファンドのランクダウンです。
考えられる原因は4つです。
①初年度決算における実質コストが高かった
②投資対象のETF(VT)の経費率に比べて楽天のマージン(0.12%)が高い
③分散投資よりも米国集中投資のトレンドにおされた
④類似するeMAXIS Slim 全世界株式オールカントリーに票を奪われた
しかしながら①は一過性と理解している人も少なくないはず。③であれば、本家VTほか複数のアセットクラスに投資するファンドのランキングと符合せず。では②なのでしょうか。
ちなみにWATANKOは楽天のこのシリーズに対してマージンが高いことをずっと指摘してきました。バンガードのブランドに胡坐をかいているだけだと、本気でトップを取りにきているニッセイや三菱UFJ国際に勝ち続けることはできませんし、個人投資家にも見透かされます。
ニッセイが監査報酬まで引き下げたなんて話が伝わる一方で、楽天が2019年もコスト面で動きがなければ、次回はTOP10から落ちることは必至でしょう。
あとはやはり④の影響が大きいかもしれません。しかしだとすれば、楽天が④に対抗する意味からしても、やはりマージンの引き下げは検討すべきであったといえるでしょう。
■低いロイヤリティが露呈したひふみ
ほんの2年前は、姉妹商品のひふみプラス、ひふみ年金とあわせてシリーズとして得票し、特別賞まで獲得したひふみ投信。それが今回はTOP10外におわりました。
このアワードはその年々で成績が良いファンドが高い順位を獲得する性格なのでしょうか。新興国株式の事例をみるとたしかにその傾向も多少はあるかもしれませんが、このアワードは何より投信ブロガーが個人投資家にとってバイ&ホールドを続ける永続的な価値のあるファンドを推奨するものではないかと捉えています。
その意からすればひふみが、長年コケにしてきたTOPIXに最近負け続けている、「守りながら増やす」がここのところできていないからといってすぐさま手のひらをかえすように放逐するのは早計であり、これが今まで得てきた支持者の真実の姿であれば、なんとも薄っぺらいものであります。
所詮、ひふみの支持者は確実に儲かるという“魔法の”投信を選びたいだけだったのかもしれません。そしてひふみがそうでないと判断するやいなや信条も信頼もなく、去っていったのかもしれません。
繰り返しますが、このアワードはその年で成績の良いファンドを称えるイベントなのか。ひふみの栄枯盛衰を見て、そんな疑問が湧き出てきました。そのようなアワードなら、どこかの商業雑誌あるいは業界団体が、成績をもとに年初に機械的に算出した結果をWebなどで開示すれば十分でしょう。
■「話題性」と「ゆるぎない支持」の混在
このアワードを毎年眺めていますと、得票するのは以下の2つの特徴のファンドが混在しています。
A:その年々で話題となったファンド
B:複数年に渡って支持を獲得し続けている定番ファンド
Aの中にはいわゆる一発芸人のヒットに近いものもあれば、その後Bと変化していくファンドもあります。これまで大半は前者であり、それがヒットした時点でWATANKOはブログ記事にこそ書きませんが「来年はないな」と予感してしまいます。なお毎年入れ替わりますので振り返ってみると過去のトレンドがつかめるかもしれません。
一方でBに該当するファンドはいまのところ先進国株式アセットクラスのファンドかまたはバランスファンドに限られています。さらには第1位を獲得するのもこの属性が備わっています。それであってもBとなるのは容易ではなく、現在該当しているのは、セゾン・バンガードとVTのみであり、ここにきてニッセイが加わったところです。
具体的にはセゾン・バンガードは2007年からずっと得票しており、2012年、2017年を除いて毎回TOP10入り、これまで12回の平均順位は6.1位です。VTは2008年以降得票、毎回TOP10入りしており、合計11回の平均順位は3.5位です。
この2つがダントツで長期的に支持されているファンドであり、ここにニッセイが続いていて5年連続で得票し、平均順位は1.4位です。これは驚異的に上位です。
なおこのBに日本株式アセットクラスのファンドがインデックスであれ、アクティブであれ該当してこないのは、日本国民としてはちょっと寂しいですね。日本株式アセットクラスの世界はやはり個別株派が圧倒的なのでしょうか。自国の株式相場が対象だから個別株にも詳しくなれるし、30年前の日経平均株価の最高値をいまだ更新できていない市場平均には投資する気にはなれないのでしょうか。
■まとめ
以上、今回の結果を通して見えたトピックスを上げてみました。見出し風に言えば、
「eMAXIS Slimアゲアゲ、ニッセイは堅い、楽天ヤバイ、ひふみ消えた、セゾンとVTは今年もしぶとかった。」
といったところです。
さて気が早いですが、2019年は一体どうなるでしょうか。eMAXIS Slimの進撃は一旦落ち着く、ニッセイは引き続き盤石、くらいは予想できますが、あとは相場次第です。もしも米国株式が大きく下落するとなれば米国アセット系のファンドはダメージを受け、それが得票にも影響を及ぼすかもしれません。(繰り返し言いますが、この傾向は本アワードの趣旨とは合っていないと思います。)
そして世界全体の株式相場が揺れれば、リスク回避色が強まる=分散志向が強まる=バランス型ファンドの注目が高まるという展開を予想しています。
最後に今年の表彰式イベントの模様について速報記事を紹介します。
毎年表彰式の速報記事を書いておられるインデックス投資業界の“ロイター通信”ことすぱいく(“ひらがな”です。)さんのブログ記事を紹介します。
参照記事
【速報】 投信ブロガーが選ぶ!Funds of the Year 2018速報 [1位から20位までの結果発表] #foy2018
(あとがきにかえて)
例年の感想記事より長めになり、最後までお読みいただきました方には感謝申しあげます。
それにしても今年の表彰式&懇親会を欠席せざるを得なかった喪失感は拭いがたいです。さらには懇親会では裏方手伝いも予定したので、他の手伝いの方にもご迷惑をかけてしまいました。
次回は体調管理を徹底して、是非とも参加したいと思います。
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