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2019年5月 4日 (土)

【クルマ記事Refrain2019】シートは自動車の良否をきめる大事なインターフェイス

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(以前所有していたシトロエンXM。こいつのシートは良かったです。)

自動車にまつわる諸事が趣味のWATANKOはどちらかといえば個性的なモデルが多いことから輸入車党です。常識的な皆さんの中には国産車に比べて車両価格は割高な一方でアクセサリーは貧弱、信頼性もやや不安、維持費もかかる、モデルによっては地味という舶来品(輸入車)のどこがよいのかという方も少なくないでしょう。

しかし以前からWATANKOは輸入車の価値(バリュー・フォー・マネー)を認め、それにくらべたら国産車はまがい物とまではいかなくても明らかに二級品、我慢品ではないかと心の中で考えていました。

現在はその気持ちがかなり薄まりましたが、いまだに続いています。そう思えさせられるエピソードのひとつに輸入車のシートを体験したことがあげられます。

 

今から31年前の時に西暦1988年。

 

WATANKOが免許をとって車を乗り始めた頃、高校時代の友人は祖父から譲り受けたアウディ80(今でいうアウディA4の祖先にあたるモデル)を乗り回していました。アウディ80といっても80年代に女子大生に人気のあった空力モデルではなく、その前のモデルで日産でもサンタナという名称でノックダウン生産していたモデルです。

四角張っていて無骨であり、なんとATは3速!しかありません。当時でも既に古くさいデザインだなあとひそかに思っていました。そのアウディ80に何度か乗せてもらう機会がありましたが乗ってみるとこの車の評価が一変しました。シートが体にフィットして疲労が非常に少ないのです。一定時間乗ったあと車を降りてみると体にコリやや疲れは皆無であり、乗り込む前と変わらない体調です。これなら数時間座りっぱなしでもOKであり、ロングツーリングが楽しくなりそうな予感がしました。

 

一方当時の国産車といえばシートの見た目や表皮の手触りがよいのですが、座って1時間もするとムズムズとお尻を動かしたくなってきます。お尻、腰、背中、肩のそれぞれの形状がシートに与える加重をシート側がそれぞれの違いに応じてしっかりと受け止めておらず、座った際のシートのへこみ方や反発が体とマッチしないのです。だから1時間もすれば半ば無意識にお尻をもぞもぞ動かして位置をかえて加重の受け止め先を模索する行動にでてしまいます。

またソートの中にあるアンコ(ウレタン材)も薄いと感じる車もほとんどでした。いわゆるペラペラ感です。底の抜けた古いオフィスソファのようです。

 

国産車のシートの不出来は小さいクラスの車になるほど酷かったです。それは狭い室内を少しでも広く見せようとシートサイズを小さくしてしまうこと、車両価格を高くできないためシートにかけるコストが削られてしまうことが原因です。まるでマックのシート(長時間居座られてはお客の回転が悪くなるため、プラスチック製の座り心地が悪いシートにしている。)のようです。

 

ところがアウディ80のシートは黒色でステッチもよくみえず一見地味ですが、座ってみると柔らかさと堅さが混然としており、お尻から腰、背中、肩の形状にそれぞれピタリとフィットします。まるで体とシートの境界線が曖昧になり、2つが一体となったかのような心地良さを感じました。

またそれからしばらくして今度はシトロエンBXをディーラー試乗する機会がありました。当時マツダが販売チャネルを拡大する戦略に出たことにより新たに設けられたユーノス店(チャネル)のディーラーが自宅のすぐ近くにできたからです。

 

ユーノス店では当時のタマ不足と補うことと、ブランドイメージ向上?のために自社製品にくわえてシトロエン車を取り扱っていました。よってシトロエンの当時の中核車種であるBXを試乗する機会を得たわけです。(実はWATANKO20代末期~30代にはシトロエンをはじめとするフランス車にかなり傾倒していたのですが、これはまたの機会に)

BXのシート、古い新聞紙をリサイクル用に溶かして圧縮したような粒度の粗いグレー色のファブリックであり、形状もおおざっぱな印象でテキトーに作られた感じでしたがこれがまた座り心地が大変良かったです。

このシートのすごいところは乗員の座り方が異なっても体にフィットしてしまうことです。やや背中を立たせ気味に座っても、お尻を前にずらして寝そべるように座っても体をしっかり受け止めてアウディの時と同様な一体感をもたらしてくれます。

さらにはシートのサイズは決して大きくないにもかかわらず、目をつぶって座ってみるととても大きなシートに体が埋もれてくるような心地良さ、安楽さを感じます。ああ、このシートに座って運転すれば10時間ノンストップでも走れそうだとすら思えてくるくらいです。

 

輸入車のシートの良さにふれた結果、たくさんドライブをしたい車好きのWATANKOとしては国産車のシートに対する不満がふくれあがり1.5~2倍の値段を払っても価値ある方を手に入れたいと思うようになりました。(輸入車にはシートだけでなくその他にも国産車にはない魅力が一杯あったのですが。)国産車はいくら割安であってもバリュー・フォー・マネーにあわないと思うようになりました。

 

時は流れて西暦2010年代。

2010年代の現在はどうかというと、国産車のシートは昔よりもよくなってきたかとは感じますが、多くのモデルは相変わらず掌で触った感触はよいものの、(大げさに言えば)平坦な座布団の上に座った感じがしますし、滑りやすいものもよく見かけます。国産車の中で比較的マニア向けのクルマでもシートはイマイチのものがあります。

ここであとひとつ指摘しておくとすればミニバン、特にLサイズの場合、シート単体としてはかなり快適です。とくに2列目に装着されるキャプテンシートについては、外のシートから独立した形状とゆったりとしたサイズ、肉厚なクッション、そしてここにミニバン室内の広い空間設計と相まってかなり心地よいです。(ただし必要なホールド性を考えるとシートとして100点満点はつけられませんが。)

 

優れた機械であっても人間とのインターフェイスが不味いものは評価が下がります。例えば素晴らしいゲーム機や高性能なビデオレコーダーでコントローラーやリモコンが駄作だと魅力も半減です。

自動車でいえばシートは一番目か二番目に大きなインターフェイスです。インパネ樹脂のシボやセンターコンソールの各スイッチの質感も大事かもしれませんが、国産車メーカーにおかれましてはシートにも十分なコストをかけて、移動体の座席として良いモノに仕上げてほしいです。

 

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