【クルマ記事Refrain2019】重心高は譲れない
(スーパーカーの重心高は当然ながら低いです。)
ポルシェ・カイエンやBMW X5など陸の巡洋艦ともいうべき大型SUV。コマンドポジション(見晴らしのよい視界)、積める荷物の量もタップリ。アウトドアな佇まい、セダンとは異なるアクティブな演出がたっぷり詰まったボディ形式です。
WATANKOも時折カッコええなあ、これもアリかと煩悩が頭をよぎることはあります。そういえばレクサスNXやマツダCX-5もあるゾ...
しかしよくよく考えると最後にはこれらSUVに対して抵抗があります。それはWATANKOがオーナードライブする車としては決定的に受け入れられない条件があるからです。
それは重心高が高いこと。
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良い自動車の条件として最も大事なことはタイヤがボディの四隅にあること、そして自動車の運動性能の質を決める最も重要な項目はホイールベースであるということ、それと車両重量が軽いほど車にとって良いと記事にしてきました。
さらに他にも重要な条件がいくつもあるのですが、あと一つだけ上げておきたい条件があります。
それは自動車の重心高です。
たとえば小学校での父親参加の運動会。10kgの子供を背中にオンブしたお父さんAと、同じく10kgの子供を肩車したお父さんBが400mトラックで徒競走をしました。さてこの場合、直線でも加速しやすく、カーブでも安定していて、ゴールでも止まりやすいのはお父さんAさんです。お父さんBは同じ10kgの子供を抱えているのにスタート加速、カーブでの踏ん張り、ゴール後のストップといずれでもお父さんAよりしんどいでしょう。
重心が高い車は、低い車に比べて運動性能において不安定さが増します。たとえば重心高が高いミニバン、SUVと低いスポーツカーを比べてください。
重心高が高い車は、
▼アクセルを踏めば反り返らんばかりに後ろにのけぞります。
▼カーブを曲がろうとすれば横倒れんばかりにロールが発生します。
▼ブレーキを踏めば前にひっくりかえらんばかりつんのめります。
▼高速道路を走行中は横風にあおられ不安定です。
まだまだあります。
▼加速時には前輪にトラクションがかかりにくくなり、加速力が損なわれます。つまりはアクセルを踏みがちになり燃費にも影響します。
▼ブレーキ時にはフロントブレーキの負担が大きくなり安全性が損なわれます。ブレーキのスペックを上げざるをえなくなり、コスト増に繋がります。
▼のけぞり、ロール、つんのめりが頻発すると同乗者の不快、車酔いを誘発します。
▼往々にして車両重量が重くなる場合が多いです。その弊害はこちらを参照。
▼車高があまり高すぎると乗り降りが大変です。(本格的な4WDモデルの場合)
とまあ不安定で不経済この上なく、おまけに快適面もマイナスです。
これは前回の車両重量の重い車とよく似たデメリットです。SUVは車両重量が重いことに加えて重心高が高い傾向がありますので、軽くて低重心なモデルと比べて走る・曲がる・止まるという車の走行性能の面でいかにしんどいがわかることでしょう。
中でもとくにロールが大きいというのは、ドライバビリティをかなり損ないますし、結果運転がちっとも楽しいものとはならず、ひたすら我慢運転となります。
世の中すべでの道路が直線と90度の直角交差点だけであれば、それでもよいかもしれません。しかし世の中にはRのきつい/緩い、単調あるいは複雑なカーブが無数に存在し、そこを安全で快適に走ることができるかどうかが、ドライビングの重要な要件になります。
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ここまで走る・曲がる・止まるという車の走行性能の良し悪しの点から見た良い車の条件を数回に渡って記事にしてきました。
この点から見れば安全で快適な運転ができるボディ形式、あるいはその逆のボディ形式は何でしょうか。
ここでは下からみていきますと先ずは1BOX。荷物の積載量をMAXにしたユーティリティ最優先のボディ形式なので、その他のほとんど全ての性能を我慢しています。
その上はミニバンです。フロントにエンジンルームが突き出している分、ドライバーは中心寄りに座っていることが1BOXに対する優位性ですが、1BOXとの差は少ないです。
その上はオフローダー4WDです。1BOX/ミニバンよりも車両重量は重い傾向がありますが走破性を考えた設計がなされており、オーバーハング、特にフロントが短いです。重心高の高さも褒められたものでありませんがトレッドが広いケースも多いのでこの点は目をつぶることができます。
その上はSUV/クロスオーバー。車両重量はオフローダー4WDよりも軽く、デザインによってはオーバーハングも詰められています。
その上はステーションワゴンです。荷室がある分、リアのオーバーハングが伸びる点がセダンより劣ります。
その上がセダン/クーペです。ここを走行性能からみた合格の基準点とするとこれまで述べてきた1BOXからステーションワゴンまではセダン/クーペに基準以下となります。ちょっと辛すぎるかな。
さて最後に最良の走行性能の素性をもつボディ形式はというとハッチバックです。概してオーバーハングは詰められており、車両重量は軽いですし、重心高はセダン/クーペに劣るところはあまり見らません。
以上のとおりですが、結局のところマイカーに求める機能が走行性能なのかユーティリティなのかはオーナー次第です。
しかしながら走行性能を左右する要素は何か、ボディ形式ごとにどう異なるのかを理解しておくことは、オーナードライバーとしてカーライフを送る以上は知っておいて損はないでしょう。
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素人離れしてますわ、めちゃ分かりやすいし、リタイア後は趣味で玄人と素人の間を埋めるような解説、例えば試乗感想などぷったりです。
投稿: たんちん | 2019年5月 2日 (木) 07時32分
たんちんさん
コメントありがとうございます。
ありがとうございます。
車は物理の法則で成り立っているので、それを分かりやすく説明するための例をなるべく入れています。
>例えば試乗感想など
業界人ではないので個々の車を詳しく評するほど試乗する機会はないので難しいですが、諸元表からでもかなりのことが語れますね。
投稿: WATANKO | 2019年5月 3日 (金) 04時41分