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2019年9月17日 (火)

不動産投資家が賃貸駐車場の屋根にあがって修繕した話

千葉県では先日の台風15号がもたらした被害からの復旧に時間がかかっている様子が報じられています。停電、断水の被害をうけ、いまだ復旧途上にある方々におかれましてお見舞い申し上げます。

 

さて台風によるWATANKO家の所有不動産の被害はといえば、古くから保有する駐車場に木の枝が飛んできてトタン屋根に刺さり、屋根に穴が開いてしました。これは修繕していかねばなりません。

 

関連記事

台風のあと、あなたの不動産は大丈夫?(2019/9/10

 

■屋根の破損状態

 

さてまず、該当の駐車場の現場写真です。

屋根を上からみた写真が以下。赤丸で囲ったところが破損箇所です。

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拡大するとこのようになります。

2

駐車場には5台分のスペースがありますが、老朽化が進んでいるため古くからの利用者以外には貸し出しておらず、現在の駐車台数は3台にとどまっています。それでも突き刺さった木の枝を除去して、空いた穴を深さがなければ雨水が入り込んでしまいます。

 

現場の状況をみると、わざわざ業者を呼んで修繕するほどの被害でもなさそうです。そこでWATANKO自身が修繕することにしました。

 

まず飛んできて突き刺さった木の枝の除去です。木の枝は突き刺さった先が一番太く、徐々に細い形状になっていますので、屋根の外側から内部へと木の枝を押し込む形で、枝を屋根から除去しました。

これが除去した木の枝です。よくみると枯れており、それゆえにもげやすくなっていたのか。本心ではこの木のオーナーに文句のひとつもいってやりたいところです。

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そして木の枝を除去したあとのトタン屋根の様子です。開した口の周りのトタンをもとに戻すと結構目立たなくなりますが、雨漏りを防ぐほどではありません。やはり何かで塞がないといけません。

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■まずは下から塞いでみる

 

ちょうど以前、実家の軒下のトタン屋根を修繕した際に余ったポリカーボネート波板とシーリング材がありましたので、これを使うことにしました。波板のサイズは偶然にも今回空いた穴をうめるのにちょうど良いサイズです。

 

古い実家の軒下などには波板がそこかしこに使われており、余ったポリカ波板がまた補修に利用できそうだと予想し、とっておいて正解でした。あ、こういう体験があると、つい余ったモノをため込む癖がつくのでほどほどにしておきたいですね。

 

そうこうしていると駐車場の向かいに住むおばあさんや、その隣の家に住んでおりこの駐車場を借りている一人であるおばあさん、その他何人かの見物人がぞろぞろ集まってきました。

皆、WATANKO家を知っている人たちです。ちょっと恥ずかしくもやな予感。

 

▼見物人たちのコメント

「あれ、〇〇ちゃんとこの息子かえ。子どもはふたりいたよね。」

・・・という感じ。

「はい、子どもは大学生と高校生です。」

・・・見世物ではないし、作業に集中したい。

 

さて修繕の方法ですが、本来はトタン屋根の上から周辺を綺麗にして波板をシーリング材で張り付けるのがベストです。しかいながら古いトタン屋根の強度は怪しく、大人が上に乗って大丈夫かどうかわかりません。古くなったトタン屋根なんて荷重に耐えきれなければクラッカーにみたいにあっという間に割れてしまいます。そうなるとトタン屋根の破損が広がるばかりだけでなく、上った人間も屋根を突き抜けて下に落下する危険もあります。

 

そこでまずは屋根の内側から波板を張り付けようと試みました。脚立をつかって内側から屋根に近づきつけてみましたが、これではシーリング材が乾くまでずっと下から支えていなければなりません。屋根の内側にある梁とトタン屋根の間に添え木をいれてみましたが、どうも波板をしっくりと固定できません。さらにトタン屋根の波板は年月が経って歪んできており、ポリカ波板と凹凸波の形状がピッタリとは一致しません。

 

▼見物人たちのコメント

「おおお、さすが〇〇大学は違うねえ。」

・・・出た大学は関係ないでしょ。もう30年も前の話です。

「ああ、やっぱり内側からではつかないよねえ。アハハ」

・・・こっちは結構必死なんですけど・汗。

 

■上からかぶせてみる

 

ついては内側から張り付けることは断念し、やはり屋根の上から張り付ける作戦に切り替えました。とはいえトタン屋根の強度がよくわからないので、屋根の梁に沿ってトタンの上をそろりそろりと移動して、修復箇所までなんとかたどり着き、シーリング材を四隅にタップリとつけたポリカ波板をそっとかぶせるのが精いっぱいです。本当は周辺の葉屑を覗いて綺麗にしてから張り付けたかったのですが、なにせトタン屋根がWATANKOの体重に耐え切れず、今にも破れそうなのであまり屋根の上に長居はできませんでした。

 

こんな仕上がりです。素人作業で画像をUPするのも恥ずかしいです。

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なんとかポリカ波板をかぶせたあたりで気がつくと、見物人の大半が「お昼の準備をしなくちゃ」とあらかた退散していました。

飽きるのが早いおばあさん達です・・・。

 

■老朽化した駐車場の処分

 

この駐車場は山の斜面の一部を切り崩してブロックで囲み、地面はコンクリートを流し込んで固め、ブロック塀の上に丸太を梁としてのせて、さらにトタン屋根を被せた構造になっています。これはWATANKOの父が推定40年くらい前に自分で製作したものです。

 

足元が汚れず、雨風もしのげる造りなので駐車場としてはなかなか良い物件ではありました。近所には賃貸駐車場が少なくて借り手に困ることはほとんどなかった記憶があります。

 

かつて農家であったWATANKO家にとってはこの駐車場からの賃料収入もそれなりにありがたかったかもしれませんが、WATANKOが相続してから以降、年々、老朽化が進んできております。したがい賃料収入よりも、駐車場の何かが破損した際に、とめている車もしくは周辺への被害が発生するリスクの方を今やはるかに重要視しています。

 

よって常々この駐車場は処分してしまいたいと考えていましたが、今回の修繕でその意を一層強くしました。

2019年9月10日 (火)

台風のあと、あなたの不動産は大丈夫?

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(自宅よりも賃貸不動産の方が心配?)

 

昨日の台風15号の関東地方上陸は、各地に大きな被害をもたらしました。まずは何からの損害を被りました方々におかれましてお見舞い申しあげます。

 

WATANKOが住む地域では9日朝7時頃から翌10日の夜中3時頃まで約20時間停電になりました。昨夜は自宅周辺一帯が真っ暗になり、熱帯夜の中で過ごす羽目となりました。

さらに周辺地町村では今もなお停電の状態が続き、中では断水が起きている地域もあります。鉄道や高速道路の不通も続いています。このような状況を聞くと今回の台風のダメージは少なくともまだ数日は続きそうな予感がします。

WATANKO家の近所でも10日夜時点でまだ幹線道路の信号が消えたままで渋滞、ガソリンスタントは給油待ちの長蛇の列、量販スーパーからは弁当・総菜はほとんどなくなり、コンビニや飲食店は閉店しているところをチラホラみかけます。

 

今回の台風については雨はもちろんのことですが、さらにものすごい強風を伴っていました。WATANKOは自宅の庭先で風にあおられて飛んでいきそうな物品は、あらかじめ全て片付けておいたのでトラブルはありませんでした。しかし花壇にある人の背丈ほどの植木は5~6時間もの間、強風にあおられて続けて、しまいには折れ曲がってしまいました。

 

自宅敷地内のダメージはそんなところで済ましたが、ひとつ大事な点を忘れてはなりません。それは所有する不動産に対する被害の有無と対応です。さっそく確認を取ることにしました。

 

■保有する不動産の被害は軽微

 

まずはアパートです。周辺には川や土手、傾斜面や大木、大きな看板などの風にあおられそうな構築物はありませんがものすごい強風でしたので心配です。早速、アパートの管理会社に架電にて確認すると、今のところ入居者や近隣住民から特に連絡は受けていないので喫緊のトラブルはない模様とのこと。WATANKOからは現地に出向いて目視確認はしていないのかと尋ねると、現在台風の被害を受けた物件が沢山あって対応に追われているとのこと。それを聞いて、それでは致し方なしと同情するWATANKOでありました。

 

次に古くから保有する駐車場です。車5台分の小さな物件ですが亡き父が周囲をブロック塀で囲い、トタン屋根をのせている造りになっています。ここについては賃貸している利用者から本日連絡が入り、周辺から木の枝が飛んできてトタン屋根が破損し、穴があいてしまっているとのこと。明日早朝、出勤前に確認して週末には補修等の対応をとらねばなりません。とりあえず駐車している車に破損などの被害はないのことでホット一息であります。

 

その次は遊休土地です。ここは敷地の半分がもと田圃であり、接道部分から奥にいくにしたがって低くなっている状態です。したがって大雨が降ると結構な水たまりが出来てしまいます。今回も案の定、もと田圃の部分は小さな沼のような状態でした。しかしながら貯まった雨水は排水路への流れ込みと地面への浸透が進んて半日もすればかなり減りました。隣接する住民への被害も特に認められませんでした。

 

これ以外の不動産賃貸に供している物件は全て土地のみですので、特に被害は確認できませんでした。

 

結局、今回の台風の被害は古い駐車場のトタン屋根に穴があいたことくらいで済みました。これは周辺の被害状況と比べれば幸運な部類であったでしょう。

 

■天災による不動産の一次被害・二次被害

 

今回の台風による被害はこの程度にとどまりましたが、WATANKOは過去に台風のほか、地震や大雨によって所有する不動産について被害をうけたことがしばしばありました。

 

▼隣接する土地の造成計画の不備により排水経路が不十分なため、大雨時にWATANO家が所有する畑が水浸しになり作物が被害を受けた。

 

▼台風のよる大雨で飲食店舗に雨漏りが発生。ただし賃貸者が勝手に行った排気ダクトの取り付け工事に起因する可能性もあり結局放置。責任問題もうやむやになった。

 

▼東日本大震災の時に、築40年の古い戸建てが基礎から傾いてしまった。建具も歪んでしまいほとんど住めない状態となり、入居者は発生の翌々月に退去。

 

主だった過去の事例は以上ですが、こういった被害は天災から直接受ける一次的なものだけではなく、さらに二次的な被害もまた発生するケースがあります。

 

典型例としては、賃貸者が借りている不動産を用いて事業を行っている場合、その不動産が被害をうけて事業が中断すれば、賃料の延滞や不払いに発展する可能性も否定できません。

天災だろうが人災だろうか賃貸契約は当然のごとく守ってもらわねばなりません。・・・というのは簡単ですが、賃貸者の保有資産や与信の程度によってはない袖はふれず、オーナーとしては賃料収入にダメージを受ける可能性も否定できません。

 

■まとめ-天災リスクと向き合うためには

 

天災によって引き起こされる所有不動産の被害について、今回と過去のケースを紹介しましたが、実際にはもっといろいろなケースが起こりえるでしょう。所有する不動産の数が増えれば増えるほど、被害を受ける回数もまた増えると覚悟しておいた方が良いでしょう。

 

この対策としては先ずは購入する不動産について近隣の状況をよく確認しておくことが重要です。大きな河川、傾斜地、大きな構築物がそばにないかどうか。

しかしそれらがもしあったとしても、その不動産を安くて、表面利回りがとても高いとわかれば購入に走ってしまう個人投資家がいるかもしれませんね。

 

それと購入後は毎年の賃料収入から一部を、天災その他の突発に発生するリスクに対してあらかじめ引き当てておくことも大事です。その金額についての算定はなんとも困難であります。しかしながら全てのリスクについて、費用面でカバーできるほどの金額を引き当てしておく必要が無く、ある程度カバーできていればよいかと考えます。(というかそれが限界です。)

 

(あとがきにかえて)

 

ここまで読んで「不動産投資とはなんとも割に合わないものだ。」と魅力を減じてしまう方がいてもおかしくはありません。その一方でこれくらいのリスクにへこたれず、飲み込んでいこうとする覚悟があることは、不動産投資家の大事な要件のひとつであります。

 

2019年7月27日 (土)

賃貸派がアパート経営をするときのひとつの矛盾

【7月26日終値ベース運用状況速報】

 

■投資元本(待機資金含む)

 

150,000千円

 

■評価損益(分配金・確定損益・税還付込み)

 

63,933千円

 

■損益率

 

42.6%

 

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(賃貸派がアパートオーナーになるとは?)

 

不動産、特にアパート、マンションのオーナーに憧れる個人投資家の方々におかれましては、ひとつよく考えていただきたいことがあります。

 

あなたは自分の住まいについては賃貸派でしょうか。もしも賃貸派の場合、その理由は何でありましょうか。

 

■賃貸のメリット

 

賃貸暮らしのメリットは主なものをあげるとすれば次のとおりでしょうか。

 

★マイホーム購入のために多額のローンを組む必要がないので、将来に渡っての返済の心配がありません。

 

★設備や什器が壊れたらあれこれ煩わしいことはなく、管理会社に連絡一本で直して貰えば良いです。

 

★となりに変な人が引っ越して迷惑を被ったり、地震や水害などの天災で被害にあったらさっさと引っ越せば良いです。

 

★(オーナーが採算性に疎い又はアパートの経営が赤字になっている場合、結果として)賃貸費用は割安となっています。

 

などなどたくさん挙げられることができることでしょう。比較的持ち家派のWATANKOであってもこれら賃貸のメリットを書き上げてみますと羨ましく感じてきたほどです。

 

「やっぱり手間とリスク管理、費用の面からみれば断然、賃貸だよね!」

 

■アパートのオーナーになると逆転する

 

もしもそんな賃貸派の個人がアパートのオーナーになったとしたら何が待ち構えているでしょうか。

 

それは、いままで受けてきた上述の賃貸のメリットはその個人のアパートの賃貸人が享受することになります。そして一方で、そのメリットがデメリットにひっくり返ってアパートオーナーである個人に降りかかってくることになります。

 

▼多額のローンを組んで、変動金利におびえながら長期間にわたって返済義務を負い続けることになります。

 

▼賃貸人から設備や什器が壊れたら都度対応しなければなりません。手間だけでなく賃貸人には多くの場合、かかった費用を直接請求は出来ずに賃料からの持ち出しになります。

 

▼アパートのとなりに変な人が引っ越してきてトラブルを引き起こしたり、また賃貸人自身が問題を抱えて周囲やオーナーに迷惑をかけることがあります。また災害から逃げることは出来ずにダメージを受けて損失を被ります。

 

▼競合が激しい場合、採算が悪化します。空き部屋をうめるために賃料を下げたりする必要が生じます。

 

つまり今度は逆にオーナーとしての債務、苦労、リスク、コスト負担に個人が直面することになります。

 

賃貸こそ自分のライフスタイルにふさわしいと考える人が、その素晴らしいライフスタイルを裏から支えている奉仕者がごとき立場のアパートのオーナーに自らすすんでなっていくことについて、WATANKOは矛盾を感じます。

 

■人生の全てを不動産投資で埋めてはいけない

 

人生は有限です。その限られた時間の中にあってWATANKOは思いっきり仕事をしたいと思った時がこれまで何度かありました。いまも割とそんな毎日を送っています。

 

でも一方で思いっきり不動産投資をしたいとはこれまで一度も思ったことがありませんでした。おそらくこれからも無いと思います。

 

不動産投資がトータルで見るとそれほど素晴らしい投資手法とは思っていませんので、世の中で不動産投資を推奨する意見がある一方で、自分の経験や伝聞から得た実態情報をどんどん駄ブログに挙げてきました。「不動産投資ブラボー」という価値観に対して冷徹なるカウンターをかましています。

 

あとはこの駄ブログをご高覧いただいている個人投資家の皆さんがどう受け止めるかですが、ここまでネガティブな話を聞いてそれでも不動産投資にチャンレンジする紳士淑女がいるとすれば、あとは彼らに対してトラブルが最小限ですむよう唯々祈念するだけであります。

 

そしてこのブログにお越しになった御礼として最後にひとつだけアドバイス。

 

ひとつ不動産投資で成功したからといって、人生の全てを不動産投資で埋めてはいけません。不動産投資とは他人の住まいや商売のお世話をすることです。他人のために借金して物件を建てる。時には廉価で貸すこともあるでしょう。他人のために自分の人生を費やすのです。ですから不動産投資はご自身の人生のなかである程度にとどめておき、それ以外のことにもたくさんの人生を費やした方がバランスがとれた生き方であり、総和として充実した人生を送ることができるのではないでしょうか。

 

(あとがきにかえて)

 

妻ミサト「あなた事故物件のことで相当トサカにきて、またぞろ不動産投資の否定記事を連投しているわね・・・。以前も言ったけど投資を否定する荻原博子さんばりに不動産投資を否定しているわ。」

 

WATANKO「ちょっと違います。不動産投資はえてして多額の借金を背負うわけですから、個人投資家には投資のリターンとリスクの実態をよく理解してもらい、慎重な決断をしてもらいたいだけです。」

 

妻ミサト「不動産投資イケイケ派からみれば、その言い回しだけでも十分にネガティブに聞こえるわ。」

 

WATANKO「では君は不動産投資を他人にすすめるかい?」

 

妻ミサト「もちろん!・・・すすめません。貴方が十数年苦労しているさまをみているから。」

 

WATANKO「まあ、終わってみれば、みな楽しい思い出のひとつだよ。不動産投資について自分が本当に心底から後悔と怨嗟にまみれ続けていたとしたら、ブログ記事としてとりあげることすらもないでしょう。」

 

妻ミサト「(最後はうまくまとめているじゃん・・・)」

 

2019年7月23日 (火)

不動産投資の実質利回りの速算公式

個人の不動産投資ブームがここ数年続いてきています。2年前に金融機関が一斉に融資の引き締めを始めた頃から沈静化する向きもあったのですが、引き続き旺盛な一面もまだまだ見られるのかもしれません。

先日もツイッターで個人がマンション投資の契約条件を見る機会がありましたが、そのあまりの低収益性、というか採算性のなさにただただ驚くばかりです。

WATANKOは通常の住居用の不動産投資であれば、表面利回りについて二桁は欲しいと駄ブログ記事で何度か書いてきました。そのくらいの水準でないと、実質利回りの段階でまともな採算性を確保した投資とは言えないからです。

 

具体的に見てみましょう。

 

よくある中古ワンルームの投資では表面利回りが5〜6%と謳われております。

例えば以下。都内にある同一の建物で区分売りと賃貸募集の両方がでている事例をみつけました。

都内のとある区分売り物件は16㎡のワンルームで13,800千円。

201907231  

一方で同じ建物で募集されている賃料は管理費込みで60千円です。

201907232

賃料は年間720千円ですから表面利回りは5.2%。他にもいくつか事例をあたってみましたが同じくらいの水準です。

 

■実質利回りを速算

 

さて表面利回りから諸々の費用等が差し引かれた後が実質利回りとなります。どのような項目があるでしょうか。中古ワンルーム投資の場合、表面利回りを5%とすると、各項目が利回りをそれぞれ何ポイントくらい削るインパクトがあるでしょうか。ザックリと表してみます。

 

(1)諸経費込み換算による利回り減

まずもって不動産を取得するためには物件自体の価格に加えて諸費用がかかります。

具体的には仲介手数料、印紙税、司法書士による登記費用、アパートローンの手数料、不動産取得税等々です。(なお左記はすべての項目を網羅したものではありません。為念。)

中古物件では本体価格の10%かかるとみると、つまり表面利回りの約1割、利回り5%なら0.5ポイント引き下げるインパクトがあります。

 

(2)空室、入居者入替の発生に伴う収益減

ワンルームを自分で手に入れたその日から売却する日までの間、入居率が100%をキープすると考えるのんびり屋さんはほとんどいないでしょう。ましてはこの場合、中古物件ですから物件自体の競争力は新築よりも劣後します。また退去が発生したあと次の入居がすぐに決まったとしても通常は最低1カ月程度の入居の空白期間が生じるものです。

この空室室を仮に10%とみた場合、利回り5%なら1.0ポイント引き下げるインパクトがあります。

なおこれがアパート1棟を所有する場合であれば空室率について20%は見ておいた方が無難でありましょう。

 

(3)固定資産税

利回り引き下げインパクトはザックリ0.5ポイントとみました。これは地価が高い場所であれば大きくなることは言うまでもありません。またもし地価が上昇したとしても賃料にはなかなか反映しづらいところではあります。

 

(4)損害保険料

これも利回り引き下げインパクトはザックリ0.5ポイントとみました。付保する場合には合い見積もりをとって少しでも安いところにきめたいです。

 

(5)借入金利

借入金利は金融機関からどれだけ好条件を引き出すか次第ですが、ここでは現在の高すぎず安すぎずの水準として1.5%とおいてみました。

 

(6)修繕ほかリスク引当金      

利用期間が長引くと設備等が老朽化するなどして修繕や更新の費用が発生します。またそれ以外にも賃貸人の使いっぷりによっては様々な劣化リスクが発生する可能性もあります。

それらに備えて資金をある程度積み立てしておく必要があります。その水準は何とも試算しがたいですが、WATANKOの過去にかかった修繕費用の記憶をもとに0.5ポイントとしてみます。

 

以上をまとめますと以下のとおりです。

表面利回り

 5.0% 

(1)諸経費込み換算による利回り減

▲0.5%   

(2)空室、入居者入替の発生に伴う収益減

▲0.5%

(3)固定資産税

▲0.5%

(4)損害保険料

▲0.5%

(5)借入金利

▲0.5%

(6)修繕ほかリスク引当金       

▲0.5%

実質利回り(上記合計)           

  1.0%

 

各項目のポイントは実際にはそれぞれ多少の変動はあるにしても、これらを合計すれば利回りを4%前後押し下げる状況に変わりはありません。

つまり表面利回り5.0%でも、実質利回りはわずか1.0%と低い水準に着地することになります・・・。

 

ダメ押ししますと、ここから所得税がかかる場合があります。もっともここまで利回りが低いと減価償却費を控除すれば赤字になる可能性が高いですが。

もひとつダメ押ししますと、ひとたび入居者関連のトラブルにかかる費用、人災・天災による予想外の出費などがおきることを考えればこの実質利回り1.0%は実に心もとないです。

上述の中古ワンルームの事例であれば1.0%とは年間たった138千円にすぎません。あらゆるリスクに対処する費用をここから工面するなど一体現実的といえるでしょうか。

 

■利回り二桁はほしい

 

これが表面利回り10%ではどうでしょうか。この場合、(1)諸経費込み換算による利回り減、(2)空室、入居者入替の発生に伴う収益減は計算上それぞれ0.5ポイント増えて1.0%、(3)~(6)は据え置きで合計3%。(1)~(6)の合計で5%の控除となり、差し引きの実質利回りはこれで5%となります。

つまり表面利回り10%にてようやく株式投資と同等の利回り水準になるわけであります。ここまでの水準にひとまず到達できるのであれば、不動産投資は株式投資よりも手間がかかりますが、一方で入居が続く間は収益の安定性が見込まれるので、これを手掛ける価値はでてくるでしょう。

しかし本記事で事例として説明した通り、表面利回りが一桁半ば以下の場合では、オーナーの手元には実質的な利益がほとんど残らない格好となります。

表面利回り一桁の不動産投資を検討中の紳士淑女の皆様におかれましてはこの実質利回りの速算公式を頭の隅に入れて物件探しをされんことを強くお勧めいたします。

(あとがきにかえて)

不動産業者が語る利回りはいつもたいてい表面利回りです。ここでとりあげた色々な費用等は物件ごとの違い、個人の裁量、将来変動があるのでカチッと定めにくいことを理由に実質利回りについてはあまり触れたがりません。

不動産業者ならば物件を売り込むのに都合の悪い話をするはずはありませんから当然の行動原理ですね。ブラボー!!

 

なお末尾に不動産投資の利回りについて取り上げた記事を紹介して本稿の〆とさせていただきます。

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2019年7月21日 (日)

新規募集、ただし告知事項あります  その3-部屋の清掃・修繕費用にビックリ

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(この事故物件の清掃・修繕費用はいかに?)

 

WATANKOが所有するアパートの募集・管理をお願いしているアパート管理会社から連絡が入るのはきまっていつも週末です。それだけで楽しい余暇の時間が瞬時にビジネスタイムへと振り替わると言ったら言い過ぎでしょうか。

聞けば、管理会社の側もサラリーマン兼業のアパートオーナーを捕まえるには週末の方がやりやすいとのこと。どうりでよほど急ぎの案件でない限り週末にばかり連絡が集中しているわけです。

 

先週の三連休にも不動産業者から連絡が入りました。用件は先日の入居者が室内で病死した部屋について、退去が完了した連絡と室内の清掃と修繕の費用についての相談とのことです。

 

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上記の部屋はいわゆる事故物件となった部屋です。これからしっかりと綺麗に仕上げて、かつ他の部屋よりも賃料を下げて募集を開始しなければなりません。費用はかかるわ、収益は落ちるわで踏んだり蹴ったりです。

ということで連絡があった翌日の午前中に現地で管理会社と打ち合わせることにしました。

 

さて打ち合わせ当日。まずは退去について、当初の予定より時間がかかった件については亡くなった人の身内をあたり、部屋の中の私物を撤去してもらう段取りに時間がかかったと管理会社から説明がありました。

これについては退去日までの賃料を日割りで負担してもらうため、直接的なダメージはありませんでした。

 

■清掃・修繕にかかる費用

 

次に清掃・修繕にかかる費用についてです。当人はこの部屋に9年間入居していたのですが、まずバス・トイレが相当汚くなっていました。世の中にはかなり掃除をサボって汚くなった水回りであっても平気な人というのはいるものです。そういえば若い女性の入居者でも部屋を汚部屋にしていただきましたことがありました。

 

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不動産投資によってアパート賃貸を夢見る個人投資家におかれましては貸している部屋のバス・トイレが真っ黒に汚されること、そしてその清掃費用についても入居者には大した金額を請求できないことはちょっと覚えていた方が良いかもしれません。

そのほかにも部屋の汚れ具合、痛み具合は9年間入居していたレベルをやや上回る程度とのこと。加えてトイレや廊下に血痕が付着していると聞きました。

WATANKOは、血痕の付着はそれまで聞いていなかったので驚き、現場を見せて欲しいとお願いしましたが、管理会社の担当者曰く「結構な量の血痕が付着しているので直に見ることは絶対お勧めしません。記録用に写真を撮ってありますが、これも見ることを極力お勧めしません。」とのこと。

 

えええーっ、一体どれだけの血痕が残っているのか。WATANKOは追求してみたかったですが、担当者の真顔な表情の前にはそれ以上の言葉は、出ませんでした。

 

こりゃ、やっぱり完璧に事故物件ですよ。トホホのホ。

 

さらに清掃・修繕の見積を見て驚きです。その総額507千円。この部屋の9ヶ月分余りの賃料にまでおよぶ水準です。主なものはビニールクロス張替え126千円、クッションフロア張替え80千円、浴室塗装工事194千円等々。

管理会社によると、まずは総額のうち57%288千円を賃貸人(入居者が勤めていた会社)に請求するとのこと。しかしそれでもオーナーであるWATANKOの自己負担は差し引き賃料の4ヶ月弱程度にまでかかります。通常はこれほどまではかかりません。

 

WATANKOはその明細を見ながら、もっと相手への請求額を増やせないか話し合いました。しかし管理会社いわくこれでも今回は事情が事情だけにいつもよりは相手に多く請求しているとのこと。すでに東京都が定めた退去時精算のガイドラインを超えている部分があり、先方がガイドラインをたてに支払いに難色を示してくることも考えられると説明あり。

それならばと最低でもこの見積レベルの金額を確実に勝ち取るためには、最初の提示額はもっとネゴ代を入れて高く出すことにしました。

 

■まとめ

 

住居について保有と賃貸で大きく異なる点のひとつに住居の所有者があげられます。賃貸人は他人の住居に間借りしているわけですが、それゆえに自身で保有する住居とは異なり、様々な制約があることをよく理解する必要があります。

もちろんながら賃貸人は契約上では賃借人と対等な立場にあります。しかしだからといって自分の所有物ではないものを好きなだけ汚したり壊したりしても構わないというわけではありません。

今回は突然死のケースですが、契約上は経年劣化を超えて部屋を傷めたことに変わりはありません。WATANKOは人情としては心の中でいくらでも鎮魂歌を唱えることはあっても、ビジネスマンとしては相手に対して相応の経済的な負担を冷徹に求めていく所存です。

 

2019年5月30日 (木)

(続)新規募集、ただし告知事項あります-他人の不幸は自分の不幸

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(前回からの続きです)

 

WATANKOが所有するアパートの入居者が室内で亡くなりました。当人がいた室内は故人の所有物が撤去され、クリーニングと内装の張替えを行ったのち、新たに入居者募集にかけられます。

そこでは法定にしたがい告知義務(「前の入居者が室内で病死しました。」という情報を開示すること)が生じるわけですが、そうなると部屋を探す人達にとってそのような物件は避けがちになります。

 

■入居履歴のロンダリング

告知義務においては前の入居者が病死した場合、この事実を次にこの部屋の入居を検討している者に対して事前告知が必要となっています。これはつまり一度誰かが入居してしまえば、その次の入居者に対しては事前の告知義務が無くなると解釈できます。

そこで昔から聞く手法としてオーナーは自分の身内に数カ月だけ入居してもらい(実際に住まなくても契約上だけで賃貸してもらって構いません)、当人の退去後、次の入居者募集にあたって告知義務が無くなるというものです。言ってみれば入居履歴のロンダリング(洗浄)であります。

これは厳しくモラルを問えば、入居者をある意味欺く行為であります。

 

WATANKOは今時の管理会社の姿勢を確認してみたい関心もあって、まずあえてこのロンダリングを提案してみました。

するとWATANKOからのロンダリング提案に対し管理会社は抵抗を示しました。通常であれば事故物件となってからひとりふたりと入居があり、数年経てば告知義務はなくなっていきます。しかしロンダリングを行って法定の要件を満たしたとしてもわずか数ヶ月程度の期間しか経ていないのであれば、その次に入居を検討する者が現れば管理会社としてはやはりその者にも告知をしたいとのことです。

管理会社の主張からは、告知をしていなくて後で判明してトラブルになることをとにかく避けたい気持ちがありありと感じました。

昔ならば法定の要件を満たしてさえいれば良いだろうという姿勢が通じたかもしれませんが、今ではもっと順法精神が徹底しているようです。

「リスクは極力取りたくないわけか。どうせリスクが顕在化しても全てオーナーにパスして来るくせに。」と嫌味な気持ちをもちつつも、これ以上のゴリ押しもできません。

 

■管理会社の見解

WATANKOとしては早いところ事故物件に次の入居者が決まり賃料収入を回復させるとともに再入居後の年月を重ねて告知義務をなくしていきたいです。それにいつまでたっても入居が決まらないと他の部屋の入居者への影響も心配になってきます。変な噂でも建てられると怖いです。

 

これに対しての管理会社の見解は以下の通りでした。

1.WATANKOのアパートがあるこの街は周辺の市町村に比べて賃貸需要が飛び抜けて高い。しかもアパートは歩いて10分のところに大きなショッピングモールがあり利便性が高い。立地条件はそもそも良好である。

2.最近の入居者は入居時の総費用を抑えたい傾向が強まっている。したがい賃料等への感応度は高い。入居時や契約更新時の賃料の減額交渉すらありえる。そういった中では心理的瑕疵よりも賃料等の安さを重視する人も一定数は存在する。

3.心理的瑕疵としての程度をみると、今回は部屋で人が亡くなったとはいえ自殺・他殺ほか怨恨、トラブル絡みでもない。死後の発見も早く部屋に何か痕跡が残ったということもない。影響としては軽い部類であり、入居検討者にとっても心理的瑕疵は比較的小さいと言える。

1.については、WATANKOが10年前にアパート建築に踏み切った根拠でもありますし、2についても最近かねがね実感しています。

ちなみにですが入居者が部屋の外、つまり外出先や入院先等で亡くなっていれば事故物件とはならないとのこと。WATANKOからみれば入居者が例えば室外のどこかで怨恨によって殺害されたとしたら、それも結構な心理的瑕疵になりはしまいかと思いますが。

以上の説明を聞いてWATANKOはアパートの需要が旺盛であることに期待し、賃料等への感応度の高さを根拠として、賃料を引き下げしたうえで募集をかけることにしました。

 

■賃料の引き下げ

入居者に対するコストメリットを提示する方法としては例えば1ヶ月のフリーレントを用いる手もあります。(代わりに一定期間の入居を義務付けます。)

しかしながらここはとにかくなるべく早く次の入居者を確保し、さらに長く入居してもらうためには、一時的でかつ入居期間が長くなるとメリットが薄れるフリーレントよりも契約期間中ずっと適用され、メリットが続く賃料カットを選ぶことにしました。

賃料カットの結果、長く入居してもらえれば、その後であれば告知義務も消えるでしょう。

 

さて次は賃料カットの金額ですが、早く入居してもらいたいためには最低どれくらいのカットが必要か。管理会社によると相場から1割程度、さらにはかなり苦戦する場合には2割くらい下げるケースが見られるとのこと。

該当の部屋はワンルーム型で元の賃料はX,6000円、これが現在の築年数と相場ならX,4000円くらいとのこと。そこで今回はここから5,000円カットしてY,9000円としました。なにやらスーパーの値付けみたいですが、X万円を切る賃料は管理会社いわく十分な割安感が出ているそうです。

そして管理会社には入居を検討する者に告知内容を伝える際には、室内で亡くなったといっても単なる病死でありすぐに見つかったので室内に影響はなかった旨をよく強調してほしいと依頼しました。

管理会社もこれを了解し、部屋のクリーニングと内装クロスの張り替えを行ってピカピカにしてから募集をかけるとのことです。通常ならば入居の空白期間を最小限にするためにクリーニング等を済ませる前に次の検討者に見学させて決めてもらうケースも少なくないとのことですが、今回は亡くなった人の生活の痕跡がわかるような状態をみせるのは良くないとの判断です。

 

あとは募集を開始してから一日でも早く次の入居者が決まることを祈るばかりです。

 

■他人の不幸は自分の不幸

WATANKOは今回亡くなった入居者を責めるつもりはありません。持ち主が他人である住居であるにもかかわらずそこで自ら死を選んだわけでなはく、また自らが原因となったかもしれない怨恨その他で殺されたわけでもありません。むしろ当人にとってはその死は孤独の中で、突然に訪れたものかもしれないと想像すると無念さも浮かび上がってきます。

しかしそれと同等に考えれば、当人の死によって赤の他人であるWATANKOがダメージを受けるいわれとて本来はありません。WATANKOの私的財産が棄損されて当然という道理は立たないでありましょう。更には事前対策としてこのようなダメージに備えていくらかの割増分の賃料をもらっているわけでもありません。

ところが実際には他人(入居者)の不幸は自分(家主)の不幸につながる可能性は非常に高いです。

今回のエピソードについてこうしてブログにUPしてはいますが、これもまだ今回の入居人の死亡によるダメージが比較的軽い部類であったから多少は冷静でいられます。もしもこれが怨恨殺人事件沙汰の場合、死後長期間経ち腐臭がひどく周囲に知れ渡ってしまった場合であったならその物件の収益はガタ減りあるいは賃貸経営をあきらめざるをえなくなっていたかもしれません。

投資の手法は様々ありますが他人の人生、生き死にに翻弄される投資というのもなかなか怖いです。これで実質利回りが軽く2ケタを超えていればまだしも、そのような物件を獲得するには相当の根気と努力と運が必要です。

あなたの中古ワンルームマンションの入居者は健やかにお住まいですか。

 

(あとがきにかえて)

住居の賃貸契約における告知義務とその対処については様々な事例、中には微妙なケース、ディープなケースとあり、とてもこの駄ブログ記事では紹介しきれません。

それであってもここに実際におきた一例としてアパート経営者の皆様の参考となれば幸いであります。

2019年5月28日 (火)

新規募集、ただし告知事項あります-店子の不幸は家主の不幸

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(ご冥福をお祈り申し上げます)

サラリーマンの一日の仕事を終えて、やや高揚した気分と共に家路につくWATANKOにアパートの募集・管理を任せている不動産業者から連絡が入りました。

 もうこの駄ブログやツイッターでも何度も書いていますが、このような連絡のときは決まってバッドニュースであります。

 これまでも、

▼入居者が契約更新で賃料の値下げを要求してきた。

▼入居者が契約の更新料を払ってくれない。

▼入居者がベランダの手入れを怠り隣の部屋からクレームがでている。

▼入居者から室内に虫が発生するとクレームが入った。

▼ボイラーが壊れたのですぐ取り換えてほしい。

▼入居者が退去したあとを見ると部屋が汚部屋になっていた。  等々

 こういった“不幸の電話”にはもうすっかり慣れたWATANKOですが、今回のそれは衝撃を伴うレベルでした。

 

「入居されていた方が亡くなりました」

 

そのフレーズを聞いた途端、WATANKOのまず脳裏に浮かんだのは、

「えええ、その部屋はどれくらい汚れてますか。」

「これからは事故物件扱いですか。」

「次の入居者が決まるまでどれくらいかかるだろう。」

「たとえ入居してもはたして長続きするだろうか。」

「入居者が亡くなっている事実を募集時に告知しなければならないのはいつ迄続くのか。」

と事業者的発想で一杯です。

 

WATANKOはとりいそぎ電話口でアパートの管理業者には「先ずは、同じアパートの住民や周囲に不用意に騒がれないように情報管理には気を付けて下さい。問われても個人情報の管理をタテにむやみに話さないように。」とだけしっかりと伝えて週末を待ちました。

 

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さて週末になってWATANKOはアパートの管理会社に詳しい話を聞くともに、今後の対策について協議しました。

 

まずは今回の状況です。

*入居者は金曜日まで連絡がとれており、週明け後の月曜日の午前中に部屋で亡くなっていることが判明した。つまり亡くなってから2日間前後と推定される。

*当人は59歳。以前から患っていた病気があるも今回は突然死に近い状態。警察による検分の結果、事件性はないと判断され遺体は発見から早々に部屋から搬出された。

*賃貸契約は当人が勤めていた会社と結んでおり、退去にあたっての諸手続きは滞りなく進められそう。

*死亡に伴う部屋へのダメージは特に見当たらず。ただし8年間も入居しており、部屋は経年劣化と汚れが進んでいたのでどのみちかなりのクリーニングと内装貼り換えが必要。

なにぶん故人にかかわる情報なのでこのあたりまでとしておきます。

 

上記を総合すると部屋で亡くなったとはいえ自殺や他殺といったケースではない、死亡による部屋の傷みはない、すぐに発見され搬出されたということで「部屋で亡くなったケース」としてはハード面・ソフト面ともに最小限度の影響で済んだと言えます。

 

とはいえ今回亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申しあげます。

WATANKOのアパートでの人生最後の8年間はどのような暮らしぶりでしたのでしょうか。もし家族がいたとしたら、無事葬送されるとよいですね・・・。

 

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さて状況の把握ができたところで次は今後対策です。

 

今回の第一報を聞いたときにWATANKOの脳裏に浮かんだ心配事に対して、どう対処するか。

まずは管理業者からは今回の物件を対象に今後募集をかける際には、これを特定物件として「告知事項あり」の注記を募集広告に載せる必要ありとのことです。

 

「告知事項あり」とは一言でいえば「具体的に広告には明示しないが、契約前に知らせる情報がある」ということです。一般的にはその部屋で自殺や殺人などが起きた場合に該当し、いわば「事前に知っていたら部屋を借りなかっただろう」と思われる事実を指します。こういった部屋を「事故物件」又は「心理的瑕疵物件」と言います。

これらの事実があれば、契約前に行われる「重要事項説明」で内容が知らされます。隠された状態で契約し、あとから事実を知ったら、賃貸者は契約を取り消すことができます。

 

上記にあげた自殺や殺人以外にも告知事項としては以下のようなケースが「事故物件」又は「心理的瑕疵物件」として挙げられます。

▼過去に事件や事故により人が死亡した。

▼過去に火災や水害などがあった。

▼周辺に嫌悪施設(例:火葬場・ゴミ処理場・清掃工場など)がある。

▼周辺に指定暴力団等の事務所がある。

WATANKOの今回の部屋もまた「事故物件」となってしまったわけです。嗚呼。

 

これに対してアパートの管理会社の担当からは、募集時点では「告知事項あり」の掲示が不可避なので一方で賃料関連にて入居者にメリットを与えることが通常とられる手段ですとの提案を受けました。

 

具体的には、以下を提案してきました。

●賃料の引き下げ、あるいは駐車場代を無料にする。

●入居時にフリーレントを(例えば1カ月)適用する。

 

しかし「告知事項あり」の物件を今後賃貸するためには、もう少しよく考えるべきことがあります。

 

(つづく)

2019年5月18日 (土)

ラーメン店のオーナーは賃料引き下げを考えなかったのか

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(写真のラーメンは記事の店とは関係ありません)

 

WATANKO家の自宅から歩いて5~6分、幹線道路沿いにとあるラーメン店がありました。特に際立った特徴はありませんが、ラーメンの品揃えは結構充実しており、コスパもなかなか良し、そして注文した料理がすぐに出てくるストレスの少ない店でした。

WATANKO家では休日の昼食や夕食の際に、食べたいものにこだわりがなく時間もあまりとれない時はこのラーメン店を時折利用していました。

今日もそんな日であり、WATANKOは家族とこのラーメン店にさしてこだわりのない夕食を済ませに行きました。すると店の入り口ドアに張り紙がありました。それはこのラーメン店が6月10日で閉店するという告知でした。

上述のとおり、このラーメン店はWATANKO家にとってそれなりに利用できる店だったので、閉店は少なからず残念でありました。

 

告知によると閉店の理由は人材確保が困難であることを背景とした人件費の上昇と経費負担が大きいとのこと。ちゃんと真面目に閉店理由を記すあたりはなかなか立派だなと少し関心しました。

 

■人件費の増大

 

飲食店の損益構造は通説では材料費、人件費、その他経費で約3分の1ずつと言われています。このうち材料費を削ればそれは商品の味や品質への悪影響は必至です。味や品質を維持しつつ単位あたり原価を引き下げるためには、例えばかなりの大量仕入れでも実現しないことには難しいでしょう。

 

次の人件費ですが皆さんご承知のとおり近年の景況を受けて、労働者の時給は状況傾向にあります。最低賃金の全国平均をみると10年前の2007年の673円から10年後の2017年では823円、実に2割強も上がっています。

関連URL

地域別最低賃金額の推移(厚生労働省の資料)

 

飲食店の損益構造に占める人件費の割合が上記のとおり3分の1=33%であるならば、これが2割、つまり33%×20%=6.6ポイントも上昇したことになります。

これがラーメンの価格に反映できればよいのですが、飲食店の中でも競争が激しいといわれるこの業態ではそうそう単純に売値を上げることができる店は限られるでしょう。

 

■その他とは

 

材料費、人件費とならんで損益構造の3分の1と占めるとされる「その他」ですが、ここには代表的な項目として店舗賃料(自社保有の場合は店舗の減価償却費)、水道光熱費、損害保険料、備品代などの費用が挙げられます。さらにはもし店舗はチェーン店であれば本部経費の一定割合を間接経費として負担する場合もあるでしょう。

そしてこれら純然たる費用を控除した後の利益もまたここに含まれます。(損益計算書でいえば営業利益あたりが妥当か。)

 

この「その他」のうちの費用部分を節減しようとしても各々が店舗運営に必要な費用であるため大きな削減は難しいでしょう。

そのような損益構造のもとで前述の人件費の上昇が起きれば、店の収益はひとたまりもありません。

したがって店が手に入れることができる利益はどんどん減っていくことになります。

 

■店舗オーナーとしてできること

 

さて件のラーメン店は他の店と同様に人件費の上昇に直面し、損益分岐点売上高(利益ゼロとなる売上高。これを下回れば赤字。)が上がってしまったことは想像に難くはありません。この解消方法のひとつは売上数量(=客数)を伸ばすことによる売上増が実現ですが、件のラーメン店では冒頭に書いたとおり特に際立った特徴はないので客数を増やすことは困難と思われます。

 

したがって何らかの状況の好転を図ったかもしれませんが、それもうまくいかずとうとう閉店に追い込まれたと予想します。

 

さてこのラーメン店、実は店舗のオーナーはWATANKO家の近所に住んでいる、とある地主さんです。

このオーナーはラーメン店、正確にはオーナーから店舗を賃借してラーメン店を経営する会社が経営難に陥る状況を見て、何か対策をとったのでしょうか。

 

同じように店舗を所有し、飲食会社に賃貸してきた経験があるWATANKOはそのようなことをつい想像してしまいます。

 

ひょっとしたら賃貸先であるラーメン店の経営会社は、人件費の上昇をうけてオーナーに店舗の賃料値下げをお願いしたかもしれません。

 

もしそのような展開があったのならばオーナーは賃料の値下げに応じるべきでしょうか。

 

■大事なことは資産の回転率

 

事業用の不動産を所有し、これを賃貸に供するオーナーにとっては、わざわざ言うまでもなく所有物件からいかに多額の収益をあげるかがポイントとなります。

 

不動産の収益は事業期間全体でみれば、「賃料単価×賃貸期間」-「取得価格+期間中の維持費用」+「売却価格」の最大化を図るわけです。

 

このうち売却価格を除けば収入は「賃料単価×賃貸期間」ですが、賃料単価についてはあまり高い価格にこだわると賃貸主が付かない期間が長くなる可能性があります。むしろ賃料単価が想定よりも1、2割低いことよりも、賃貸主が付かない期間が長引くことの方が賃料収入全体に与える影響が大きいです。例えば半年間、賃貸先が付かなかったら収入は年間あたり50%減であり、これは賃料の1、2割の減よりもはるかに多額です。

 

つまりオーナーは所有する不動産を賃貸に供する期間をできるだけ長く確保する。資産の回転率(稼働率といっても良い)をできるだけ上げることに注力すべきです。

勿論ながら賃料単価が近隣の類似物件よりも著しく低いようでは問題ですが、回転率との組み合わせでもって収益をあげる感覚を忘れてはなりません。

もし賃貸先からの賃料の引き下げに全く応えず、その結果賃貸先が契約解除して撤退してしまい、その後何年も新しい賃貸先が見つからない場合、オーナーにとって収益面のダメージは賃料引き下げに応じた場合よりもはるかに大きいでしょう。

 

さらにはようやく新しい賃貸先候補が現れてきた場合でも、オーナーが希望するよりも低い賃料を条件として提示する可能性だって十分にあります。

さんざん待ったあげく、結局賃料が安いところしか見つからなかった。

 

こいつは「賃料単価」も「賃貸期間」も少ない最低のシナリオです。

 

以上、不動産オーナーは賃料単価も大事だけれども、賃料期間はもっと大事だということを述べました。ですから賃貸先は賃料の値下げをお願いしてきたときは賃料期間(資産の回転率)とのミックスでもって目標とする事業収益にどれだけ近づけることができるかという視点でもって考えたいものです。

 

■それでも現実は厳しい

 

ですがそれでも現実には厳しい面があります。通常、売上高にしめる不動産賃貸料は7~8%程度です。仮に8%とした場合、オーナーが賃料を1割引き下げたとしても売上高に占める割合は8%×10%=0.8ポイントです。2割下げても1.6ポイント。人件費の上昇をカバーにするにはかなり足りません。

 

つまり人件費の上昇をカバーして店の収益を維持するためには、賃料の引き下げだけではなく、賃貸する経営会社が収益拡大と費用逓減の様々な施策を講じる必要があります。オーナーから見ても賃貸先がそのように汗をかくのならば賃料引き下げに応じるハードルが多少なりとも下がるというものでしょう。

 

さて件のラーメン店のオーナーである地主さんは、賃貸先の苦境について何か相談をうけたのでしょうか。そしてそれにどう応えたのでしょうか。部外者からは内部事情を知るよしもありませんが、事業は結果が全てです。次の賃貸先がどれだけ早く見つかるのか。それ次第で今回の閉店がオーナーにとってどれだけのダメージになるのかを振り返ることができるというものです。

 

(あとがきにかえて)

 

しかし常々思うことは、不動産オーナーが事業用不動産を賃貸する場合、その収益面の浮沈はひとえに賃借先の事業の良し悪しにかかっています。もしうまくいかなければその影響は賃貸解除という形でオーナーに降りかかってきます。

 

値上がりする株を事前に選ぶことが難しいことと同じくらいか、それ以上に賃貸先が長きに渡って繁盛するかどうか見極めることは本当に難しいものです。

2019年2月12日 (火)

引き渡す不動産の整理整頓は必要

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(前回からの続きです。)

個人の不動産賃貸業のリタイアメントの方法として、自身で完全に廃業するか、子ども達に引き継いでもらうかの2つを取り上げました。今回は後者に対しての続きです。

ここでは不動産賃貸業の有無に拘らず、ひろく「不動産の引き渡し」を取り上げます。

子ども達に不動産を引き渡す際、保有する不動産の中にはトラブルを抱えた物件、将来の経済的な重荷となる物件を含んでいる場合、そのような物件はトラブル等を解消するか、あるいは引き渡すことを避けて処分すべきであります。

例えば、

▼土地の立地がよくない
人里離れているなど。路線価が周辺に比べてとても低いです。

▼接道が乏しい
車の出入りがしにくい。旗竿地等。

▼形状がいびつで利用しにくい
店舗、住居に利用できないデットスペースが多い。

▼境界線が曖昧なまま
土地の確定に関する法的な手続きが勧められない。

▼排水経路にしっかりできていない
大雨時に水だまりができる。水だまりから異臭が発生する。

▼隣接地に問題がある
隣地の土地利用から騒音、景観などのマイナス影響を受ける。

▼法的な規制が強い
土地の利用形態や建築できる上物が制限される。

などなどです。

処分については自分が元気で時間が十分にとれる間に、できるかぎり実行しておきたいものですが中には、

「せっかく先祖から引き継いだ不動産があるのだから、そのまま子ども達に引き渡していけばいいのでは?」

こういった保守的な考え方を持たれる方もいるかと思います。

OK。その信念が強ければ、Webの片隅にある赤の他人のブログ記事に書かれていることなど無視して構わないでしょう。

しかしそのような保守的な考えをお持ちの方に質問させてください。

どんな不動産であったとしても、それを持っているだけでステータスとなったのは今や昔の話です。

貴方が持てあまして活用できず、ただただ固定資産税を支払い続けてきた不動産が、果たして子ども達に引き渡したからといって、彼らが果たしてどれだけ収益化を実現できるものでしょうか。

子ども達の才覚と行動力、そして将来、幸運が降りかかることを楽観的に期待して、現状では「負債」とも言いかねない不動産を引き渡すことが親の責任なのでしょうか。

親であれば、子ども達にとって足枷になるような不動産を引き渡すべきではありません。

子ども達に引き渡すには、上述のような物件をできる限り処分したあとに残った「賃貸によって収益を生む不動産」であるか、あるいは賃貸業に供していなくても「資産価値がそこそこあって、いざとなれば売却が行いやすい不動産」であることが重要です。

子どもを持つシニアの方々におかれましては、資産形成も大事ですがそれだけでなく資産継承についても少しずつ考え始めてもよいお年頃でありましょう。

(あとがきにかえて)

以下の記事は、不動産を継承する子どもの立場にて書いた記事です。

相続だ、土地活用だ、どうしよう(2018/12/8)

(続)相続だ、土地活用だ、どうしよう(2018/12/9)

これに対して今回は上記とは反対に親の立場にて記事を書いてみました。

幸せな老後をおくるためのひとつの条件は、子ども達への資産継承で悩んだり苦労したりすることがないことです。

皆さんはいかがですか?

2019年2月11日 (月)

不動産賃貸業のリタイアメントに向けて

【2月8日終値ベース運用状況速報】

■投資元本(待機資金含む)

150,000千円

■評価損益(分配金・確定損益・税還付込み)

50,454千円

■損益率

33.6%

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(この不動産賃貸業、どうする?)

WATANKOは不動産賃貸業を亡き父から引き継いで実質約20年になります。これは自営業に等しい家業でありますが、さてこの家業を一体いつまで続けるのか。不動産賃貸業のリタイアメントについてどう進めていくべきか。

■このままでは完全リタイアできない

不動産賃貸業は物件の入手・運営に手間がかかる仕事です。特に個人においては不動産に関する知識が十分に備わっているケースばかりとは限りませんので、何かとしくじりもあるでしょう。またたとえ知識があったからといってすべからく不動産の投資と賃貸がうまくいくとは限りません。トラブルがおきればその内容によっては心身に大きな負担をもたらすことがあります。

このような不動産賃貸業を一体いつまで続けなければならないのでしょうか。

妻ミサト「そんなこと誰も何も答えてくれないし、何もしてくれないわよ。」

そうです。このままではWATANKOは不動産賃貸業を自分が亡くなるまで続けることになってしまいます。耳が遠くなり、腰が曲がり、病気を患ってしまい、認知症が進んだとしても、今のままでは自分がいつまでたっても当事者であります。

サラリーマンをリタイアすることは勤務先を退職することによってあまり手間を取らずに実行することができます。やることといえばせいぜい退職時の職場への挨拶を考えることぐらいでしょうか。

しかし不動産賃貸業の含めた自営業を営む個人の場合は自分で辞める時を決めねばなりません。

これが例えば商売が不振となり、続けることが困難になるのだとしたら、自分の意志とは別の事業によって半ば強制的にリタイアする(させられる)ことになるのですが、ある程度順調に進んでいる場合はどうでしょうか。

WATANKOの場合ですとサラリーマンをリタイアすることはできたとしても、不動産賃貸業の方はなかなか辞められず、「仕事」を完全にリタイアすることができません。

■リタイアメントの2つの方法

家業ともいうべき不動産賃貸業のリタイアメントは2つの方法があります。

1つは文字通り完全に廃業してしまうことです。所有する物件はすべて売却してお金に換えてしまいます。その一部は老後の生活資金に充てることになるでしょう。当事者夫婦が亡くなったあとの相続を考えると、シンプルでとても良い方法です。

その場合に注意点は以下のとおりであります。

(1) 相続税の負担は大きい

被相続人が亡くなり相続が発生した際には当人の資産価値が時価評価されます。このとき土地・建物など不動産であれば色々な控除や減免措置があって相続税の課税対象となる金額が抑えられます。一方で生前に不動産を売却して得た資金がそのままにしておくと相続発生時点の金額がそっくりそのまま課税対象の資産価値となります。この場合、税負担が重くなります。

例えば50百万円で購入した不動産よりも50百万円の預金の方が相続税の負担が大きいというイメージです。

(2) 売却は性急ではないか

大きな資金需要もないのに、リタイアしたい気持ちから所有不動産を売却することは性急ではないでしょうか。賃貸業の収益源とはならない(できない)不要地、遊休地であればまだしも、賃貸業に供して収益をあげている物件を売却することは、卵を産み続ける牝鶏をいささか早く〆てしまうようなものです。

売却してしまったら毎月の卵はもう手に入りません。またその分のプレミアムを売却価格に適正に見積もること、見積もった売却価格で取引が成立するかも不透明であります。なお売却を成立させたい、売り急ぎたいという気持ちは、相手に足元を見透かされて安値すぎる売りにつながるおそれもあります。

(3) 売却資金の運用はどうするか

売却したあとの資金はいわば資産が姿を変えたようなもの。固定資産から流動資産への変貌を遂げた後、どう活用して賃貸料に代わる新たなインカムゲインを得ていくのか。

これについては、WATANKOは遊休地の売却資金をETFに一括投資を行い、そこから分配金収入を得る形態に変えました。

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もうひとつは親族、代表例としては子ども達に引き継いでもらい、自分は一切手を引くことです。

ここでの心配な点は以下のとおりです。

(1) 不動産賃貸業をやっていけるのか

子ども達には十分な引き継ぎ期間をとって習熟してもらったうえで、物件の管理を引き渡していきますが、はたして将来に渡って賃貸業をやっていけるでしょうか。

できれば引き継ぎ期間中にトラブルの1つや2つを経験して少しはタフになってほしいものです。もちろんこの時は親から安直に救いの手を差し伸べてはいけません。自分たちで解決させないと当人たちの経験と自信には繋がりませんから。

しかしながら子ども達が就いた仕事がとても忙しかったり、所有不動産から遠く離れた地域にて仕事や生活を送ることになった場合、不動産賃貸業を副業としてやっていけるのか。

(2) 子ども達の人生を縛るのか

上記(1)と関連がありますが、特定の場所に事業用あるいは居住用の不動産を持ち賃貸業を続けていくことは、自由なところに住んで、好きな職業に就きたいという子ども達の人生に大なり小なり制約をもたらすことになりはしませんでしょうか。

これは将来、例えば親から継いだ不動産物件に対して親類縁者から色々な干渉を受けることも含めています。

子ども達がトラブルをはねのけて不動産賃貸業を無事引き継ぎ、かつ所有不動産に縛られない人生を送っていけるようになってほしいです。

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もしも不動産賃貸業を営む当事者が、上記に「廃業」か「継承」のどちらかに舵をきることもなく、何の対策もとっておらず齢を重ねてきた結果、老齢ゆえの病気・怪我にかかり意思決定能力を欠く状態に陥ってしまったら家族にとって大きなダメージになります。

WATANKOであれば、ちょっとそこまで無責任なことはできません。

いっそそのような状態になれば、さっさと亡くなってしまった方が相続手続きだけは進めることが出来て、まだマシというものです。

(つづく)

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