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2018年11月13日 (火)

投資先の分析-企業業績は連結当期純利益でみるにかぎる【Refrain2018】

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(企業の経理部の方にとっては釈迦に説法なので、スキップしてください。)

3月決算会社の第2四半期決算が出揃ったところで、株式投資をされる方々は特定の企業について、株を買うべきか、あるいは保有している株を継続するか売るべきかという検討・判断のために業績の分析をされることでしょう。

そこで大変僭越ではこざいますが企業の業績分析のポイントについてほんの少しだけとりあげたいと思います。

業績の分析における重要な指標のひとつは利益額でありますが、損益計算書ではいくつかの段階の利益が記載されています。

各利益の意味するところは数多ある解説資料をご参照いただくとして、ここではシンプルに各利益段階のうち、最もあるいは唯一重要といってよい利益は「連結当期純利益」であることを強調しておきます。

■連結当期純利益でなければならない理由

決算書の分析ガイド的な記事をみると「本業の収益結果を表す営業利益を重視しましょう。」とか「企業の恒常活動の成果をみる経常利益で判断しましょう。」といった指摘が挙げられていることをしばしばみかけます。

その企業が日本国内のみでビジネスを行い、M&Aもせず新規事業も展開しない、資産評価は簿価で許される部分が多い伝統的産業であれば、営業利益や経常利益で収益力を分析・判断してもよいでしょう。

しかし皆さんが投資先候補にあげるような企業とは、グローバリゼーションを積極的に展開し、新規事業やM&Aに臆することなくこれに挑みつつ、一方で収益を押し上げるためには法制度や国内外の税制を高度に活用するなどの経営を行う。

このように様々な経営の技法を用いて企業価値を向上させようとする企業でありましょう。

そうであるならば企業の利益もまたグローバリゼーションや新規事業、M&A等のアクティビティを反映したもので見なければなりませんし、それは時価会計、減損会計、税効果会計等を十分に反映した利益ということになります。

となれば見るべき利益は「連結当期純利益」1本でよく、かつこれが必須といえます。

■具体的な考慮点

売上高から売上原価を差し引いた利益を売上総利益と呼びます。これは業種や企業によっては「粗利」「限界利益」「付加価値」を指しているケースがあります。(厳密にはそれぞれ異なりますが・・・。)

この売上総利益から販売費及び一般管理費(販売、管理、研究などの部門の総費用)を差し引いた利益が営業利益となるわけですが、次に営業利益から最終利益である当期純利益に至るまでには以下の事象(⇒損益項目)があり、現代の企業経営においては無視できないものばかりであります。

●連結対象となる子会社以外であっても事業投資のためにM&Aや出資を行う相手先は存在しえます。こういった連結子会社のみならず事業投資先企業からの収益(あるいは損失)も正しく取り込む必要があります。

⇒営業外損益(持ち分法投資損益、受取配当金など)で発生

●一方で収益だけでなくリスクも捉えねばなりません。事業の先行きが怪しくなればそれにかかわる資産の価値を引き下げて、損失として認定しなければなりません。

⇒特別損益(減損損失、投資事業損失、固定資産除却損など)で発生

●複数年度にわたる事業の収益の算定が大きく見直される(損失が発生する)場合、過年度にかかわる損失分まで当該年度にて一気に影響することがあります。

⇒特別損益(前期あるいは過年度損益修正損)で発生

●海外の税制の影響、さらにはこれに対するタックスプランニングの成果、さらには事業収益の見通しが悪くなれば、繰延税金資産の取り崩しを余儀なくされ、当該年度の税金(試算)額が増えることになります。

⇒法人税や法人税等調整額で発生

営業利益段階ではこれら事象のインパクトは反映されませんし、経常利益段階でも不十分です。そこですべての要素を反映した連結当期純利益を用いるべきであります。

■まとめ

昔であれば営業外損益はせいぜい受取利息・支払利息、所有不動産の賃貸収入・支出くらいだけでほとんど発生無し、資産はもっぱら簿価評価だったので評価損の発生はごく稀、税金はかかってしまうから仕方ないのよねという形で営業利益×本邦の実効税率イコールほぼ当期純利益というシンプルな図式が当てはまるケースが多かったかもしれません。

しかしながら現在は国際的な事業展開を背景として、上述した時価会計、減損会計、税効果会計等を十分に反映した連結当期純利益でないと、企業の成績を正しく測れません。

今やかりそめの利益といっても過言ではない営業利益や経常利益だけで投資判断を下されることのないようご留意願います。

(あとがきにかえて)

わざわざ触れませんでしたが当然ながら業績は単体ではなく連結でみるべきであります。また連結当期純利益は配当金額の算定根拠としてもよく用いられるという視点からみても大事な利益指標であります。

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時折、新聞に書かれた企業決算を知らせる記事を読むと、間違って書かれているケースに出くわすことがあります。〇経新聞ですらも見かけます。企業の決算発表内容をよく理解していないまま記事を書いている記者がいるわけです。

困ったことですが、このような誤った記事を鵜呑みにしないためにも企業の損益計算書の仕組みを十分に理解しておきたいものですね。

これにて今年のRefrainは終わり、駄ブログは次回から平常営業運転に戻ります。

2015年8月 4日 (火)

衰退する中心市街地の再生

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(中心市街地は再生できるか。)


先日の休日に越谷レイクタウンに初めて出かけました。よくあるイオンのショッピングモールを中心とした商業施設群なのですが、余所のそれと比べて越谷レイクタウンの規模はとても大きく全国No.1です。あまりに広くて歩きまわるに疲れてしまい、途中から妻と別れてスタバで携帯ワープロのPOMERAを取り出して駄ブログ記事を作成するWATANKO...。

参照記事
NEVERまとめ
日本の巨大ショッピングセンター ベスト10


レイクタウンに限らずその他のイオン系のショッピングモールや三井系アウトレットなど郊外に展開する大規模な商業施設はその周辺の街並み、人の流れと物流を大きく変えていきます。

しかしながら日本の人口が10年前の2005年頃から減少ステージに入り、消費需要の総量が増えない現実のもとに一方で衰退していくものもあります。そのひとつが中心市街地であります。

著名なブログ記事でその様子を拝見しました。

参照記事
ももねいろ
家を買うなら都市部ではなく郊外である理由。現地を見て驚愕!地方の中心部で起きている悲しい現象


古くからある中心市街地の商店街は狭い街路、駐車場不足など交通の不便さ、個店の競争力の劣後などによって、だんだんと買い物には不便なエリアと変容しています。

一方で整地されアクセスしやすい郊外のロードサイドには大型商業施設や専門店が出店し、顧客にワンストップショッピングサービスを提供していきます。地方は公共交通機関の整備な不十分なところが多く、車社会となっている実態もこれにマッチしています。

中心市街地の商店街はやがて核となる商業施設が撤退して集客力を失っていきます。地元では商店街の振興を図るため色々な手段を試みますが、それぞれ事情を抱えた各商業者たちの足並みはなかなか揃いません。

また道路の拡幅や駐車場の確保などハードウェアの整備についても、多くの地権者が絡む中、なかなか進みません。

さらに商店街を構成する個店の中には資金力や後継者が不足するところもでてきて事業継続が困難になり廃業となり、ますます商店街は廃れていきます。

このような中心市街地の衰退はなにもここ数年に始まった話ではなく、もう20年以上前から起きていることでした。

そこで15年以上前の1998年に中心市街地活性化法をはじめとするまちづくり三法が制定され、中心市街地の衰退に抗う動きもみられました。

しかしながらここ数年内に立ちあがった冒頭の越谷レイクタウンのほか、幕張新都心のイオンモールなど、そのあまりの大規模で顧客の需要をすべて満たして過ごしてしまうような大型商業施設を目の当たりにすると、古くからある中心市街地の衰退はもう決定的ではないかと思えてきます。

(いや、2015年の今になってこんなことを言っているようでは、認識が大分遅れていると言われるかもしれませんね。)

WATANKOはかつて15年前に中小企業診断士の資格を取得し、著名な先輩診断士のもとで個店、ひいては商店街の再生事業に関わったことがあります。

しかしながら個店・商店街が商業のコンサルをうけるほどの資金はなく、所詮自治体の地元振興予算の枠内での動きにすぎませんでした。また個店・商店街の側にもエゴがみられたり、企業経営の才覚に欠けるところもあったり等となかなか地域の活性化が進みませんでした。

結局、WATANKOは数年間活動の後、勤務先での海外赴任を機にこれらの活動からひいてしまったのですが、個店・商店街ひいては中心市街地の未来に明るさを見いだせなかった限界がその背景にはありました。

あれから10年あまりが過ぎて、中心市街地の衰退のトレンドは変わっていません。

国や自治体は相変わらず中心市街地の商業者に対して資金、人材、ノウハウなど色々な助成策を講じていますが焼け石に水です。国からの支援をうけたとはいえ地元の衣料店が果たしてユニクロに勝てるでしょうか。

中心市街地が再生するためには、大規模な区画整理による街の再編が必要でしょう。よくあるケースとして田畑や山林をもつ複数の地権者が集まって土地の造成と区画整地を行い、商業事業者に用地の一部を譲渡するなどして、その造成費用を回収するとともに、各地権者は元の所有地の代わりに区画整理された代替地を割り当て取得するというものです。整地された土地を自分で利用しても良いし、賃貸や売却もアリです。

これを中心市街地においても大規模に進めるというやり方です。中心市街地は郊外に比べれば相対的に地価も高く、地権者の合意形成も難しいかもしれませんが、これをガンガン進めないと本当の再生はおぼかないでしょう。

最後に国が提示する土地区画整理事業を紹介しておきます。

参照記事
国土交通省 都市局 市街地整備課
土地区画整理事業とは

2015年7月12日 (日)

東芝よ、すぐバレる利益操作をやる愚かさに気がつかなかったのか

【7月10日終値ベース運用状況速報】

■投資元本(待機資金含む)

66,000千円

■評価損益(分配金・確定損益・税還付込み)

36,359千円

■損益率

55.1%

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(目先の利益をあげたところで...。)

東芝の不適切な会計処理について前回取り上げましたが、今回はその続きです。いや続きと言うより今回が本論といってもよいかもしれません。

今回明るみになった不適切な会計処理は工事進行基準の会計処理であるということですが、これについてはわかりやすく触れている記事を紹介します。

参照記事
mjdsk(マジですか) 的なニュース。
東芝の不適切会計の内容とは?工事進行基準とは何?

上記の記事では工事進行基準の概要と、東芝が行った不正箇所についてわかりやすくふれています。

報道ならびに上記記事によると東芝が工事進行基準における不適切な会計処理は、受注案件の総コストを過小に見積もっていたことです。

総コストを少なめに見積もることで案件自体の利益が見かけ上、UPします。また総コストを分母、決算日時点での発生コストを分子として案件の進捗率を算定するわけですから、 分母が少なくなれば、分子が同じであっても相対的に進捗率があがります。

つまり東芝は、①総コストを過小にすることで利益額を引きあげ、かつ②それを当期の利益に前倒しで持ってくるという操作をしたわけです。

生ビールがあとから沢山運ばれてくると嘘をつき、かつそれゆえに先にどんどん飲んでも構わないという嘘をついたということです。

しかし①については総コストを過小に見積もったところで案件が進捗すれば、やがて見積もりを超えるコストが実発生することは明白であります。②については総コストの過少/適切にかかわらず一定の利益総額を早く取り込むか、あとにするかというゼロサムな話でしかありません。

つまり東芝はすぐバレる利益操作、それと時間稼ぎをやっていたにすぎないということになります。

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それともうひとつ。

新聞報道によると田中社長は社長就任初年度の2013年度に営業損益にて史上最高益の達成にこだわり、社内に業績目標達成の圧力をかけていたとされています。また損失や費用計上の時期をずらしてくれ(=工夫しろ)と要求していたとも言われています。

これについても短絡的な印象が否めません。損失や費用計上の時期をにずらす(先送りにする)ということは、すなわち今の手持ちの仕事に隠れている損失や費用をいずれは計上しなければならないことを指しています。

田中社長の任期中にどれだけそれらを表面化せざるをえなくなるかはわかりませんが、いずれ損失を計上し、損益計算書を傷めることになるわけです。つまりは史上最高益にこだわった2013年度よりも次年度以降の方が業績が悪くなる可能性が高いわけです。

田中社長は自身の任期中に途中から東芝の業績が悪化するリスクを自ら抱え込んでしまいました。就任初年度が最高益で、あとは右肩下がりという業績を出してしまった社長に対する内外からの評価は決して高いものではないでしょう。

むしろ田中社長がとるべき手段は、就任初年度においては手持ちの案件にて隠れている損失をできる限りあきらかにして、これに手当てすることでした。在庫など保有資産の評価損、稼働資産の減損、投資先に対する損失、遂行中案件の将来の追加コストの引当金などを計上して抱えている膿を出し切るべきでした。

就任初年度にそれらを実行して損益計算書を傷めても、社長を引き継いだ時点でのそれまでの経営にて抱えていた含み損失であり、それは前経営陣の責任に転嫁できるでしょう。むしろ就任初年度に損失計上を断行すれば、堅実な経営者として評価されるかもしれません。

初年度に将来分まで含めた損失を計上すれば、それは次年度以降における業績拡大にプラスになることでしょう。足元の業績悪化は社内に対する危機感を醸成し、引き締めにつなげることもできます。

上記のような事例として有名なのが、カルロス・ゴーン氏による日産自動車の業績回復です。同氏は就任後に策定した再建計画“日産リバイバル・プラン”のなかで2,000億円の再建費用を事前に引当計上しました。その結果、初年度に大きく業績を悪化させましたが、次年度以降は急回復となりました。損失に対して手当て済であれば、あとは稼いで利益をあげるだけです。業績回復は必然でありました。

東芝の田中社長は前社長との確執があったとも報じられてます。自分が社長に就任したら早速、前任者を上回る結果を出したいという欲が、堅実な経営をするという義務を上回ってしまったのでしょう。

しかしわざわざ後で自分の首を絞めるような損失先送りをなぜすすめたのか。先送りした損失は次年度になって考えればいいという、目先の短期的な経営に走ったのか。

このような経営をするトップがいる企業であれば、株主としてはこの企業の業績悪化が明るみになるタイミング(=保有する株を売り逃げるタイミング)をいつも心配せざるをえません。

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さて最後に田中社長の所業だけでなく、もう少し視点をかえてみます。

東芝、いや東芝の株主にとって不幸なことは、今回の不適切な会計処理が取り沙汰されているのは金額にして1,700億円規模でしかないということです。

参照記事
読売新聞 東芝、過大計上1700億円超…追加調査で増大

1,700億円とは、売上高6兆、当期純利益500億、現預金+営業債権1兆6,700億の経営規模を誇る東芝からすれば、経営の屋台骨が揺らぐような金額ではありません。

もしも会社の事業継続に支障を来すようなレベルにまで財務体質が傷んだ場合、金融機関から支援を仰ぐことがあれば、支援先から財務担当役員ないしはお目付け役が送り込まれるか、そこまで厳しくなくとも金融機関による監督が続くことが想定できます。

しかし推測の限りですが、今回程度のダメージであれば、上記のような外部による管理・監督に基づく改革は望み薄であり、もっぱら東芝自身の自浄作用に期待するほかないかもしれません。

もしも今回の不適切な会計処理が経営トップほか限られた財務関係者の処分だけで幕引きがなされるのであれば、一方で東芝の社内にはこれまでと同様の体質が続くおそれがあります。田中社長だけが特異であったとはたして言い切れるでしょうか。

東芝が今回の騒動から何をLessens Learnedとして、今後にどう活かすのか。まだ現時点でこう唱えるのはちょっと早いかもしれませんが、もしもこの会社の株主を今後も続けようとする個人投資家であれば、それをしっかりを見極めておくことを忘れてはならないでしょう。


2015年7月10日 (金)

東芝のおかげで多くの企業がまたぞろ迷惑を被るか

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(業績を上げたいばかりに...。)

東芝が インフラ関連案件で生じた損失の計上を意図的に先送りするために不適切な会計処理を行っていたことが問題となっています。またインフラだけでなく半導体、パソコン、テレビの各分野にも同様の疑惑がもたれたり、上司(マネジメント)から部下(部門責任者や担当等)に対する圧力もあったとのこと。金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の処分対象にあたるか、経営陣の責任がどこまで及ぶかが今後注目されることでしょう。

この疑惑についてはまだ全容はわかっていませんが、これまでの一連の報道を聞いてWATANKOは昔話をひとつ思い出しました。

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もう10年以上も経ちますが、2004年に西武鉄道にて証券取引法違法事件がありました。この事件はひとことでいえば同社の有価証券報告書がデタラメであり、かつ会社法務も個人商店のようなアバウトさであったということです。

米国ではこの数年前にエンロンやワールドコムの不正会計事件も明るみになりましたが、日本でも西武鉄道のこの事件が随分と話題になりました。ちょうど経営トップの堤義明氏の強烈なワンマン経営も揶揄されて話題に拍車をかけました。

西武鉄道 証券取引法違反事件

この事件などきっかけとしてJ-SOX法(内部統制報告制度)が制定され、企業は内部統制報告書の提出が義務づけられ、それに伴い役員は報告書の誓約書をかかされるわ、企業の業務監査体制はにわかに強化整備を求められるわで2000年代中盤は企業の管理部門はちょっと大変でありました。

企業の管理部門に在勤するWATANKOの知人はこうしたムーブメントを強いられることに対して西武鉄道に恨み節を抱いていました。

彼いわく、西武鉄道のような一部の甚だしくデタラメをやっている企業のおかげで、ほかのちゃんと運営している多くの企業までが疑われる。そのために規制法が強まり、ちゃんとやっていることを証明させられるはめになり、そのために仕事が増える始末だとのこと。(←ここが一番いいたかったらしい。)

WATANKOからみれば、それまでの法制度がザルすぎたゆえに、当時の西武鉄道のようなトンデモ企業が出てくる始末になったのでしょうといいたいですが。

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東芝の不適切な会計処理は長期プロジェクトの採算を管理する工事進行基準の会計処理が該当したと報じられています。この事件のおかげで同様な会計処理を行う他社がむやみやたらと疑われたりすることがないとよいのですが。

そして疑われずとも、これがきっかけとなり工事進行基準をはじめとする会計処理基準の厳格な適用とそれを担保するために監査法人による企業の締め付けが厳しくなったりはしませんでしょうか。

東芝の不適切な会計処理がトリガーとなって、会計監査や内部統制が強化されるような法整備が進むでしょうか。そして東芝とは何の取引関係もない多くの企業が、東芝のおかげでまたぞろ迷惑を被るのでしょうか。

かつて西武鉄道が引き起こした事件に憤慨していた知人が、これを聞いたらどう思うか。この騒動について、久しぶりに彼の感想を聞いてみたくなってきました。

2015年5月15日 (金)

投資先の分析-企業業績は連結当期純利益でみるにかぎる

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(企業の経理部の方にとっては釈迦に説法なので、スキップしてください。)

3月決算会社の2015年3月期決算発表が出揃ったところで、株式投資をされる方々は特定の企業について、株を買うべきか、あるいは保有している株を継続するか売るべきかという検討・判断のために業績の分析をされることでしょう。大変僭越ではこざいますが企業の業績分析のポイントについてほんの少しだけとりあげたいと思います。

業績の分析における重要な指標のひとつは利益額でありますが、損益計算書ではいくつかの段階の利益が記載されています。

各利益の意味するところは数多ある解説資料をご参照いただくとして、ここではシンプルに各利益段階のうち、最もあるいは唯一重要といってよい利益は「連結当期純利益」であることを強調しておきます。

決算書の分析ガイド的な記事をみると「本業の収益結果を表す営業利益を重視しましょう。」とか「企業の恒常活動の成果をみる経常利益で判断しましょう。」といった指摘が挙げられていることをしばしばみかけます。

その企業が日本国内のみでビジネスを行い、M&Aもせず新規事業も展開しない、資産評価は簿価で許される部分が多い伝統的産業であれば、営業利益や経常利益で収益力を分析・判断してもよいでしょう。

しかし皆さんが投資先候補にあげるような企業とは、グローバリゼーションを積極的に展開し、新規事業やM&Aに臆することなくこれに挑みつつ、一方で収益を押し上げるためには法制度や税制を高度に活用するなどの経営を行い、企業価値を向上させようとする企業でありましょう。

であるならば企業の利益もまたグローバリゼーションや新規事業、M&A等のアクティビティを反映したもので見なければなりませんし、それは時価会計、減損会計、税効果会計等を十分に反映した利益ということになります。

となれば見るべき利益は「連結当期純利益」1本でよく、かつこれが必須といえます。

具体的には営業利益と当期純利益との間には以下の事象(⇒損益項目)があり、無視出来ません。

●連結対象となる子会社以外であっても事業投資のためにM&Aや出資を行う相手先は存在しえます。こういった連結子会社のみならず事業投資先企業からの収益(あるいは損失)も正しく取り込む必要があります。

⇒営業外損益(持ち分法投資損益、受取配当金など)で発生

●一方で収益だけでなくリスクも捉えねばなりません。事業の先行きが怪しくなればそれにかかわる資産の価値を引き下げて、損失として認定しなければなりません。

⇒特別損益(減損損失、固定資産除却損など)で発生

●複数年度にわたる事業の収益の算定が大きく見直される(損失が発生する)場合、過年度にかかわる損失分まで当該年度にて一気に影響することがあります。

⇒特別損益(前期あるいは過年度損益修正損)で発生

●海外の税制の影響、さらにはこれに対するタックスプランニングの成果、さらには事業収益の見通しが悪くなれば、繰延税金資産の取り崩しを余儀なくされ、当該年度の税金(試算)額が増えることになります。

⇒法人税や法人税等調整額で発生

営業利益段階ではこれら事象のインパクトは反映されませんし、経常利益段階でも不十分です。すべての要素を反映した連結当期純利益を用いるべきであります。

以前であれば営業外損益はせいぜい受取利息・支払利息くらいだけでほとんど発生無し、資産は簿価評価がメインだったので評価損の発生はごく稀、税金はかかってしまうから仕方ないのよねという形で営業利益×本邦の実効税率=当期純利益というシンプルな図式が当てはまるケースが多かったかもしれません。

しかしながら現在は国際的な事業展開を背景として、上述した時価会計、減損会計、税効果会計等を十分に反映した連結当期純利益でないと、企業の成績を正しく測れません。

今やかりそめの利益といっても過言ではない営業利益や経常利益だけで投資判断を下されることのないようご留意願います。

(あとがきにかえて)

わざわざ触れませんでしたが当然ながら業績は単体ではなく連結でみるべきであります。また連結当期純利益は配当金額の算定根拠としてもよく用いられるという視点からみても大事な利益指標であります。

2014年8月 9日 (土)

イベントの企画・運営は大変だけど楽しい!と思えるうちにやめておこう

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●学生時代はサークルの合宿にはじまりインカレで開催するシンポジウムや講演会

●企業に勤めるようになってからは社内の横断的な会議体、関係会社を集めたイベント、顧客向けマス・プロモーション等

●さらには社外では異業種交流や資格を活かした自主的なコンサルティング活動の集まり

●ごくプライベートなところでは地元仲間が集まる交流会など

WATANAKOは年食っているだけあってか、これまで各種イベントのとりまとめを沢山やってきました。(そのせいか社内外から割と「仕切り屋」なイメージで見られることが多いです。)

色々なイベントの事務局、仕切り屋としてその裏方、栄枯盛衰を見てきた、やってきた側としては、イベントにもライフサイクルがあることがわかります。

【黎明期】

いままでにないコンセプト、趣旨のイベントを企画、運営する。開催側にとってはクリエイターとしての面白みやワクワク感、ゼロから成し遂げる達成感を体験できる。周囲からは潜在的なニーズに応えたこと、パイオニアとチャレンジ精神に対する称賛が送られる。

【発展期】

黎明期のイベントに対してこれをもっと充実・発展させようといろいろな追加企画やアイデア・工夫が取り込まれる。関わる人も増えて利害と調整ごとも増える。周辺からは口出しをする人もでてくる。その結果、イベントを開催する側の手間も時間も金もどんどんかかるようになる。でもまだイベントの創造性と達成感>手間・時間・お金なので、開催側にとって膨張するイベントをやりきるモチベーションは保たれる。

【成熟期(あるいは衰退期)】

イベントがある程度の回数を経てくると以前から変化も少なくなり、新鮮味が乏しくなる。変化のための変化、開催すること自体が目的化する。常連メンバーだけのムラ社会化する。あげくの果てにイベントはただの惰性、やっつけ、ノルマになる。

最後にはアイデアかマンパワーか予算か、またはそれら全てが尽きたところでそのイベントは寿命を終えていく。

企業等が一定のお金とマンパワーを継続的に投入する基盤が備わっているイベントならばともかく、特に特定個人の自主的な集まりによるイベントはこうしたライフサイクルにさらされることが多いでしょう。

個々人の属人的な行動力の集合体だけでもって毎回、創意工夫にあふれたイベントを安定的に運営していくことは大変です。

そこで大事なのは引き際です。イベントが成熟期に入ってからもヘトヘトになって継続するよりも、発展期のどこかで一度イベントを見直し、将来の新しい企画のための余力を残して一度解散することは、衰退ではなく再出発の種です。

2014年3月24日 (月)

(番外編)文章作成マナー、凡事徹底

先日、自分なりの文章作成マナーについて、原理原則に絞り込んで書き記しました。

ところが一方でこのマナーを理解していても、あえて仕事での文章作成にて次のようなレトリックを使う場面もまた時折あったりします。

1.主語を書かない

とるべき施策やアクションを述べるとき、それを遂行する主体についてふれない(主語をかかない)ことがあります。それは部外者からの遠回しな業務命令となる印象を和らげたり、そもそもやるべき組織・担当について社内のコンセンサスが十分醸成できていない場合の際に使うテクニック(というほどでもありませんが)です。

主語を書かないおかげで皆さん総論賛成

2.数値は曖昧に書く

あえて数値を記載する際には前提をシビアにみてみたり、緩くしてしみたりとケースバイケースで曖昧に書きます。期間や期限についても読み手の主観が入る余地を残します。
数字は頭に残りやすい情報であり、これをつかって文章内容に対する賛同へと巧みに誘導します。一方、曖昧にしておくことで、後でツッコミを受けても「そのような解釈もできますね」と相手の突進をかわすための備えとします。

数値は一人歩きする便利な(あるいは怖い)情報

3.トレードオフは無視する

例として「新規顧客開拓は必要ですが、そのために出張経費がかさむ。」という事態があるとしましょう。その場合、「新規顧客開拓せよ」と「経費節減せよ」というともすればトレードオフの関係になることもある2つの主張を同じ文章に盛り込むことがあります。事例のように露骨でなくともさりげなくマッチポンプな内容を記載します。それは相反する矛盾した要求を並び立たせるテクニックです。そしてそれぞれの主張の賛同者は自分の主張が盛り込まれていることに納得するわけです。

以上、しがないサラリーマンの現実的な文章マナー面を紹介しました。
外資系ではこんな曖昧と矛盾に満ちた報告が社内を飛び交った入りしないでしょうかね。

だとしたら滑稽なり、日系企業。

2014年3月22日 (土)

(続)文章作成マナー、凡事徹底

日本企業にて20年以上、事務系総合職として働くWATANKOが取り上げる(自己流の)ビジネス文章の作成マナー、後半です。

今度は書き方そのものの話ではなく、文書や資料作成のマナーについてふれます。

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5.早く書きましょう

報告書・提案書は依頼されたならばなるべく早く書きましょう。上司など依頼した相手が期待する納期よりも早めに仕上げるべきです。

上司が考えるイメージ締切が1週間であれば3日で仕上げるといった感じです。たとえ7割の出来だとしても一度上司にあげるところが大事です。その上でもらったコメントを反映することで書類作成のイメージ締切1週間に対して早期段階で上司の意向を取り込むことができ、締切土壇場での大幅修正を回避できます。また上司のイメージ締切よりも早く提出すれば、荒削りな内容であっても上司の評価も甘いかもしれません。年配である上役ほどせっかちなものです。早期提出のポイントは高いです。

逆にイメージ締切1週間のところを2週間以上もかけて書類作成し、提出したらどうでしょう。その中身はそれだけ時間をかけたがゆえに、かなりの完成度が期待されてしまいます。途中で上司の意向を確認することなしに進めたら、ひょっとして提出時に大幅な修正を余儀なくされるかもしれません。

「WATANKO君、散々待ってこの内容ですか?」

6.テンプレートを活かしましょう

文章作成の経験を重ねていくと比較的良く書けた文章をストックすることができます。また他人が書いた秀逸な報告書・提案書を目にする機会もあるでしょう。そういった良い事例をテンプレートとしてもっておき新規作成の際には、それらを下敷きにして書くことです。新規作成だからといってまっさらなキャンパスから書き出しする必要はありません。

これは特にExcelで資料を作成するときに役に立ちます。なぜならWordやPower Pointは詰め込める情報量や書式が比較的制限されているのに比べてExcelは1枚1枚の資料の中身について自由度が高いためかえって迷ってしまう場合があるからです。数値と文字量のバランス、フォントサイズや貼り付けるオブジェクト、表に記載する数字の粒度、情報の見せ方の順序立てなどがうまく組み合わされていないと読み手に対してメッセージが上手く伝わない、読んでいて疲れる資料となってしまいます。

そこでテンプレートを活かすことによってメッセージが伝わる効果的な文章、資料を仕上げます。またテンプレート活用は作成作業時間の短縮にもつながります。

作成者が自他問わずとてもよくできた文章や資料は、思わず何度も読み返したりすることがありませんか。良く書かれた文章、資料はその時のみならず、後々までも読まれたり、引用されたりすることがあります。そのようなものを1点でも多く作成したいですね。

7.文章1枚で片付くと思わないこと

文章、資料作成のマナーを紹介しておきながらではありますが、どんなに素晴らしい文章、資料を作成したとしてもそれだけでメッセージの伝達が完全に済むとは思わない方が良いでしょう。

現代であればメッセージの内容によって資料だけでなく電話、メール、直接会話をうまくミックスして伝えることが大事です。前日記事の2項でもふれましたが読み手がもつコンテクストが書き手と異なる場合や資料そのものが専門的な内容であるといくら因果や5W1Hに留意しても限界があるかもしれません。

※まとめ-凡事徹底して、一発で読み手の頭にスーっと入る平易な文章、資料を作成しましょう

自分のことを棚に上げてではありますが、他の個人投資家ブログを拝見しているとブロガー当人やコメント投稿者が書く文章の中には主語や目的語が省かれている、修飾語句が長すぎる、どこに掛かっているのかわからないといった文章を見かけることがあります。また一文が長かったり、文語調の言葉を頻発させたりとあまりに堅苦すぎる文章も見かけます。一応投資関連記事なので共通のコンテクストをもってなんとか理解を試みますが、非常に疲れます。

当人たちはスマートでポイントをついた文章、あるいは格調が高くインテリな文章を書いているつもりかもしれません。しかしこのようなわかりにくい文章を書く方々は普段、仕事で一体どのような文章を書いているのか、覗いてみたくなります。(あるいは普段、まともなビジネス文章を書いたことがないのかとすら思えてきます。)

前回、今回とWATANKOが紹介するマナーについて「そんなことはわかっている。」と言う方も少なくないかもしれません。たしかにWATANKOが取り上げた内容は当たり前で平凡な内容かもしれません。

しかし一方で前述のような文章を書く人をみるにつけ、文章作成においてこのような凡事を徹底している人はひょっとしてWATANKOが想像するよりも限られているのもしれないと思い、今回あえて記事にしました。

必要な内容が、適度な分量で、適切な時期に平易な文章、資料として作成され、一発で読み手の頭にスーっと入るようになった時、ビジネスマンであれば、誰しもがちょっとしたカタルシスを感じることでしょう。

「社長、(ワタクシが作成した)資料は読んでいただけましたでしょうか。」

なお聡明なる皆様方におかれましては、それぞれが文章、資料作成の折に日頃考えている凡事を是非ご披露いただけると幸いです。

【2014/3/23】

記事タイトルを変更しました。投稿後に記事タイトルを変えたくなる衝動にかられることがしばしばあります。良く考えてタイトルつけねばと反省しています。

2014年3月21日 (金)

文章作成マナー、凡事徹底

【3月20日終値ベース運用状況速報】

■投資元本
54,030千円

■評価損益(分配金・確定損益・税還付込み)
20,382千円

■損益率
37.7%

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WATANKOの勤務先は海外向け売上高が数十年前から過半を超え、外国人の採用もそれなりに行っています。しかしながら社内風土としては曖昧なルールが蔓延、以心伝心コミュニケーション、事なかれ主義、上に弱く下に強い、官僚的とコテコテの伝統的日本企業度合い満点です。でも世に言われるブラック企業という印象でもなく、よくある日本企業のひとつではないかと想像します。

さてこのような日本企業にて20年以上も働いていると、事務系総合職としてこれまで報告書や企画書を山のように書いてきました。そこから湧いてきた相手に意図を伝えるためのビジネス文章の(自己流ですが)作成マナーについて取りあげます。

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1. 文章は因果で書きましょう

先ず大原則として、何か提案する際には因果で書きましょう。一文または一段落の中に原因(因)と結果(果)をセットで書くということです。

「○○であるべきだ。」「△△しなければならない」と唱えるだけなら簡単ですが、その理由や、結論に至った動機を書かずして○○や△△の説得力はでてきません。「因」が正しければ、そして因と果の繋がりに蓋然性があれば、「果」に対して異を唱えることは難しくなります。

「果」が相手の腹に落ちない場合は、「因」に疑義を持たれたり、「因」と「果」の繋がりに無理や飛躍がある場合であり、「果」を唱えたければ、そこを見直す必要があるでしょう。

これは昔、中小企業診断士資格の試験勉強をしていた頃に経営アドバイスの記述回答を書く際のアドバイスとして、当時通っていた予備校の先生からの教えがルーツになっています。

2.5W1Hを整えましょう

上記1にて言及したWhyを含めて5W1Hをしっかり書きましょう。

日本語とは便利なものでして能動態であっても主語を省いた文章が書けてしまいます。また一方で修飾句は沢山ついているものの被修飾語が大変わかりにくくなっているケースも見かけます。

これは文章の書き手と読み手との間で、文章内容を円滑に理解するための基礎的な情報が土壌として理解されている(共通のコンテクストを持っている者同士の)場合ならでは通用するケースでしょう。

しかし文章は様々な立場・属性の人(中途入社社員や外国人従業員を思い浮かべてください。)の目にとまることがありえるため、原則として共通のコンテクストをもっていない相手にも通じるように文章はかくべきです。

(実はコレ、文章だけでなく相手との実会話においても省かれがちでことであり、重要です。)


3.数字を必ず入れましょう

文章には客観的なデータを表す数値がちりばめられていると、読み手の関心を引く可能性が高いです。なぜならそこには客観的事実が述べられており、読み手の好奇心をそそりやすいからです。

「へー、こんな数値がでているのか。」⇒「それで理由は?対策は?何が言いたいの?」と読み手の意識が繋がれば提案している内容に目を向けてもらいやすくなります。上記1の因果で書きましょうと同様に説得力も増してくるでしょう。

文章の書き出しから2~3段落目あたりからは数字を散りばめ始めてていきたいところです。読み手に貴方の文章のポエム部分を我慢して読んでもらえるのは冒頭からせいぜい15~20行目くらいまでです。

4.書きすぎはやめましょう

MS Wordの文字数や行数設定をわざわざ変更してギッシリ文字を詰めて書く。Excelの余白を最小にして端から端まで数字表をびっしり貼り付ける。Power Pointで14フォントくらいで箇条書きばかりで書き埋める。見つけたこと、調べたこと、言いたいことを寸分漏らさず、思いの丈を全てぶつける文章はやめましょう。たくさん詰めると、その結果、一番言いたいことがかえって埋没してしまいます。

相手に集中して読んでもらえるのはWordならA4書式で2~3枚、Excelなら本紙の添付分として3枚程度、Power Pointなら16ページ以内(ハードコピーで上下二分割、両面印刷で4枚未満)、そしてそれらはどれもある程度の余白がある資料です。

(つづく)

2012年9月 7日 (金)

CFOからのクレーム「計画からの乖離はすべてダメ」

今時の企業の収益計画/予想については、単なる数値目標の達成だけでなく、どれだけ計画からの乖離が少なくて済んだかということが問われていることを感じます。

収益の目標数値に対して実績が未達であることは当然ながらペケですが、WATANKOの勤務先では実績が目標を上回った、それも大幅に超過した場合であってもマネジメントからクレームが出ます。

銀行出身のCFOはこう言います。

1. 「計画目標値を大幅超過達成=それは計画が甘いのだ」

低いハードル(計画目標値)を設定し、これを安易に達成して「社長やりました!今期は計画比+50%達成です」と喧伝しても、それは遡って期初に目標値を設定したときに何を見ていたんだといわれる始末なのです。

目標管理として設定すべきハードルは、現状から出来る限りストレッチをしてギリギリ到達できるか否かというレベルに設定しなければ成長は望めないということです。

またあざとい言い方をすれば「これだけ儲かったのだからと言って収益超過分の一部を従業員の業績連動賞与や事業トップの報酬に取り込もうとする意図がミエミエである。」ともなります。

2.「計画の精度が低いと今後も心配である」

実績が大幅に乖離するような計画値、それは計画値の精度が低いことを意味します。

その程度の精度の計画値しか作る能力しか持ちえないとすれば、一方で大きな下振れリスクがあったとしても予見、想定に折り込んだ計画の策定には程遠いでしょう。

計画値に対して大幅プラスで終わったということは、すなわち一方で大幅マイナスで陥っていたかもしれないというボラティリティを含んだ計画値でもって事業運営をしていたことになるわけです。

3.「投資を過小に見てしまうおそれがある。」

機会損失の面からの指摘です。例えばとある事業体の将来収益計画を遂行し、収益実績が目標を大きく超過した場合、その事業に投資する側からみれば、そんなに儲かるのであれば最初からその事業にもっと投資するという判断ができたということです。

A事業、B事業のリターンがそれぞれ10%であったので、2事業に経営資源を半分ずつ投入したが実際にはB事業が15%のリターンであった。それならば経営資源は全てB事業に投入した方がその分高い利益額を享受できたというわけです。

これは個人投資家の銘柄選定においても同様の見方ができるのではないでしょうか。

銘柄選定においては業績予想が重要な情報のひとつです。これが下振れして株価下落という事態は避けたいですが、逆に予想を大幅に上回り株価激上げとなった場合、「それならばもっと買っておけばよかった」となりはしませんでしょうか。

(あとがきにかえて)

上記のとおり書きましたがCFOの真意としては、地道に努力を重ねて毎期少しずつであっても増収増益を達成する計画を精緻に作り上げることが重要だと説いていました。各位の努力が積み重なって毎期着実に成長していく。融資であっても出資であっても誰もがそのような会社にカネを投入したいものです。

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